「貴方が新しい護衛さん?」




「知ってる。パパが良い人間でない事も、貴方がただのボディーガードでない事も」


「パパに大金を積まれて雇われていながら、私を殺そうとしている事もね」
「…………」

ひやり、と背筋を冷たい物が伝った。
どこから情報が漏れたのか、口を割った裏切り者は誰か。そんな事はどうでも良い。
暗く、あまり広くはない部屋。
自分に殺意を向けている男と二人きりだというのに嫌に落ち着いている女の態度を感じずにはいられない。
俺一人くらいどうにか出来る程の切り札があるのだろう、と咄嗟に思った。
そろり、と音も無く指先が背中のホルダーに伸びる。
こっちの胸中を知ってるのか知らないのか、女は酷く緩慢な動きで立ち上がりフラフラと歩き出した。

「貴方が私を殺してくれるなら、きっとこの先不幸になる人が減るわね」
「………」
「そんな怖い顔しなくても良いわ」

女が笑いながら棚の引き出しに手を伸ばすと肩に引っ掛けたブランケットがスルリと床に落ちて白い肩と背中が露わになった。
ゴト、と重い音と共に引き出しから顔を出した黒い拳銃は、その幼さの残る女の細腕には酷く不釣り合いで居心地が悪そうに見える。

「私が貴方とコレで戦って、勝てる訳ないじゃない」
「…お前とは、な」
「…ああ、安心して。周りには誰も居ないし、私の周囲の人間には貴方を売り込んで信頼させてる」


じゃあ、何のために。
考えが読めないまま、不敵な笑みを浮かべた女が俺に銃口を向ける。

「銃を抜かないの?ああ、次元は早撃ちの名手だものね。私が本気で撃つ気になったらそれを見抜いてそれより早く撃ち返すんだわ。本当に凄いわ、貴方」
「…ここに来て随分喋るじゃねえか。狙いは何だか知らねえが少し焦ってるように見えるぜ」


「私は、私を殺してくれる人を探してた」




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