就+親でギャグ→ほのぼの
元親視点
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○月×日 (晴れ)
今日は、朝は日が出ていなかった。
元就もどこか元気が無いように見える。
昼頃になってようやく太陽が出たら、嬉しそうに両手を広げた。
元就は本当におてんとさんが好きなんだな。












「元親、これは何ぞ。」
毛利"元就"が不機嫌そうに帳面から顔をあげた。
「我が納得する説明を要求する。」
俺に刺さる視線が冷たい。





同盟を組んでから、お互いに行き来が増えた。
今日は珍しく元就が四国にやってきた。いつもは俺が行くんだけどな。
突然来たもんだから俺は書いてたもんを隠す暇もなく。
『何ぞ、それは。』
俺が珍しく書き物をしていた(失礼だな。政務くらいやってるぜ?)と興味を持った元就に抵抗空しく奪われ。
『……』
カラクリやら鉢植えやらが転がる部屋の気温がぐっと下がり。
今に至る。





「元親、何度も言わせるでない。」
おお怖。口は笑ってるが目が笑っちゃねぇ。視線に刺殺されそうだ。
「…元就の観察日記だよ。」
言っちまった。
が、これ以上黙っていると俺の身が危ねぇ…気がする。
「貴様、何のつもりで我を観察し記録をつける?何を企んでおる。」
元就が纏う空気が変わって、壁に立て掛けてあった輪刀に手を伸ばす。
「返答次第では…」
輪刀が妖しく光る。
正直に言っても俺の身は危ないようだった。





「ちょ、元就!!待て待て待て待て!!」
愛刀を振り回しながらじりじりと迫ってくる元就に向かって声を張り上げる。
「黙れ元親。今こそ年貢の納め時よ。斬滅してくれるわ!」
「お前それキャラ違う。」
「愚劣!!焼け焦げよ!!」
そうそう、これでこそ元就…じゃなくて。
「聞いてくれ元就、この元就ってのはお前のことじゃねぇんだ!!」
「やはり愚劣!!我でなければどの元就であるか、申してみよ…っ!!」
叫んだが元就は止まらない。得物を持たず逃げ回る俺はそろそろキツい。
「そこの鉢植えの、オクラの名前なんだ!!」





ぴたり、と元就の手が止まった。刀は俺の眼前にある。あっぶねぇ。
「オクラ…だと…?」
「お、おう。部屋の隅の鉢植えの。」
ほら、あるだろ。と俺は部屋の隅に顔を向ける。が、元就は無反応だった。
鎮まったか…?と様子を窺うと、真っ赤な顔で口をぱくぱくさせている。
「…ぜ…」
「ん?悪い、よく聞こえねぇんだが。」
耳を元就に近付ければ、
「何故我と同じ名をオクラに付けたのだ!!オクラに!!」
怒鳴られた。





「いやだってよぉ…似てるだろお前によ。」
「似ておらぬ!!何処が似ていると申すのだ!!」
「見たままだろ。特に兜。」
「貴様…っ」
「あーはいはい、怒鳴るな怒鳴るな。」
ぎゃんぎゃんと噛みついてくる元就を放置して俺はオクラの"元就"に水をやった。
毎日見ていると小さな変化に気付くことができる。変わらないようで少しずつ違う。それを書き留めるのがすごく楽しい。
「お、花咲いたな。」
今日みたいにいつもと大きく違いがある日も、それはそれで楽しいもんだ。
柄じゃねぇと言われりゃ、柄じゃねぇんだけどよ。










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