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「#エロ」のBL小説を読む
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純情な心の三分の一は求めてる。






「ベッドではエロい女ァ?」
「って、雑誌の表紙に書いてあったんですけど、それって表ではどんな女なんですかィ」
「知るかんなもん。近藤さんなら知ってんだろ」
「そうだな……つまり、お妙さんの事かな!!」
「それ近くにお妙さん居たら死んでんぞアンタ」

午後二時。
予想以上に午前の仕事(桂の出現)が長引き、近藤と土方と沖田の三人は遅い昼食を取ろうとしていた。
元は土方スペシャルを作ってくれる為土方だけの行きつけの店だったが、若い娘も働いているということで、近藤と沖田も来るようになった。三人で食べに来るのも、最近では珍しいことではない。実は土方はこれが案外気に食わなかったりする。

「親父さん。今日は名前ちゃんは居ないのかい?」
「名前か。さっきから帰ェって来ないんだよ。どこで油売ってんだろうねェ」
「あいつもサボる様になったんですねィ」
「おい総悟。一応名字は年上だろ」
「いいんでさァ。許可得てますんで」

絶対許可得てねェ。つーか得てても強制だろそれ。
沖田を睨みながらそう思った土方は、定食屋の主人に注文したものを渡される。土方が頼んだ土方スペシャル丼を見た近藤は慣れずに頬を引きつらせている。その様子に食べたいんだなと察した土方が「食うか?」と尋ねる。

「い、いらねーよ…!」
「そうか? …近藤さんの飯寂しそうだな。ほら、マヨネーズ使うか?」
「い、いらねーって!」

土方と近藤がマヨネーズを交互に渡し合ってると、ガラガラと戸を開けて誰かが入って来た。沖田が豚カツを頬張りながら「あ、名前さん」と彼女の名前を口にする。
その通り、店に入って来たのは名前だった。

「おかえり名前」
『……たっ、た、ただいま…!』
「……おい、お前大丈夫か?」
『…へっ!? な…何がです?』

名前がやけに動揺していることに疑問を感じた土方は、椅子から離れて名前の様子を伺いにいく。土方が近くに来るだけで、名前はぼんっと顔を赤くする。その様子を見た沖田も椅子から離れ、くつくつと笑って名前に手を伸ばし、林檎のようにまっかで熱い肌に触れた。触れると同時に、びくっと小さな名前の肩が揺れる。イケメン二人に囲まれ、名前は緊張と恥ずかしさがマックスになる。

「…熱ィ。何かありやした? 俺で良ければ話聞きやすけど」
『……だっだ、だ、大丈夫です! おっおお叔父さん!私ちょっと休んでくるね!』
「お、おー」

ぺこりと大きく頭を下げた名前は、急いでバタバタと逃げるように奥の部屋に駆け込んでいった。「あらあら、逃げられちまった」と沖田は楽しそうに笑う。土方は心中で沖田に舌打ちを吐く。なんかムシャクシャすんな、とそう思いながら土方は席に座り直す。

「おい総悟、あんまり名前ちゃんをイジメるんじゃない」
「へーへー。すいやせんでした」
「いや良いんですよ! あれくらい積極的に行って貰わねェと、名前のやつ一生男なんか作れんでしょうから」
「そうか? 飯とか作んの上手いんだからすぐ男なんて出来んだろ」
「まぁ確かに名前ちゃんの料理の腕は親父さんに劣らんからなぁ」
「そんなにアイツ料理上手いんですかィ?」
「上手い上手い。親父さんが居ない時、名前ちゃんが飯振舞ってくれてよ。トシがすげェ気に入ってたよ」
「あのマヨネーズスペシャルは美味かった。土方スペシャルもいいが、マヨネーズを練り込んだ唐揚げは絶品だった」

土方は脳裏に名前が以前土方に振舞った、マヨネーズを用いた定食を頭に浮かばせた。よくよく親父から話を聞けば、名前は親父から何も料理の作り方を教わっていないと言う。店主曰く、名前は独学で料理上手になったそうだ。

豚カツを平らげた沖田が「ごっそーさんでした。」と手を合わせて立ち上がった。

「んじゃ、俺ァ暇なんで名前さんとお喋りでもしてきやしょうかねェ」
「おい総悟!」
「良いよ良いよ。何なら名前を孕ませたっていい」
「親父それアウトォォォ!! おい総悟、名字をあんまイジメんじゃねーぞ!」

へいへい。と手を振って、名前が逃げていった部屋へ、勝手に沖田も入っていった。それを見て土方が何か言いた気に舌打ちをして、土方スペシャル丼を勢いよく口に掻き入れた。

「総悟のやつ名前ちゃんにお熱だなぁ。トシ、お前も負けてられねぇな!」
「近藤さんそれ以上言うとマヨネーズ口に押し込むぞ」
「ごめんなさい」


***


「名前さーん、居ますかィ?」

奥には小部屋があった。靴を脱いで上がるタイプらしい。
沖田は靴を脱いで部屋に上がる。そこには名前の後ろ姿があった。彼女の耳から白いイヤホンが垂れているのを見て、音楽か何かを聞いているのだと察する。
ならば驚かそう。

じわりじわりと近付いて、後ろから名前を抱き締める。ひっ、と名前の声が漏れ、沖田は名前の右耳に押し込まれていたイヤホンを手に取って外すと、赤い右耳に口を寄せて囁いた。

「……俺の相手もしてくだせェよ、名前さん」
『〜〜〜っっ!!!???』

勢いよく名前は立ち上がって、『な、な……!』と声にならない声で沖田に怒った後、『おおおお沖田さんの変態っ!!』と名前特有の真っ赤な顔をしてまた逃げていった。がらがらと乱暴に戸が開く音が聞こえたので、次は外に逃げたことが分かる。

「また逃げちまった。」と名前の後を追おうと部屋から出ると、刀を鞘から出そうと鬼の形相をした土方が目の前に居た。

「テメーは名字にちょっかいばっかかけやがって…!今日こそは許さねェェェ!!」
「やべぇ鬼の副長殿がお怒りだァ。つーわけで、近藤さん会計お願いしやーす」
「総悟待てコラァァァ!!」
「え、ちょっとトシ!?総悟!?頼むから街のモンは壊さねェでくれよ!?」

勢いよく店から出て行った二人を見て、近藤は大きくため息を吐いた。

「名前ちゃんとアイツらが絡むとなーんか喧嘩になるんだよなぁ……親父さん、どう思う?」
「まァどっちも格好良い面してるんで孫は可愛いだろうねえ。これで老後も安泰だ!」
「アンタは気楽でいいな……。」

近藤はまた大きくため息を吐いて、残っていた海老フライを口に入れた。


続く。