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もう駄目だこの世






目が覚めたら、どこか知らない屋敷に居て。
前を見たら、知り合いのお妙ちゃん、猿飛さん、九ちゃんが居て。
下を向いたら、身体が丈夫な縄で縛られ、動けなくなっていて。
よく考えたら、よく考えなくても、どういう状況だ、と混乱した。


『どういう状況これ!!?? 主催者は誰!?』
「皆よ名前さん。と言いつつ、九ちゃんは付き添いだけど」
『え…ま、まあそうだよね。九ちゃんはまともだもんね…』
「何その言い方。私とお妙さんがまともじゃないって言うの? あんただってまともじゃないでしょこの尻軽女が!」
『はいはい。尻軽女はともかく、なんですかこの状況。何がご不満なんですかあなたたち二人は』

一応みんなの扱いには慣れているので(特に猿飛さん)、率直に尋ねることにする。この二人の考えなどミジンコほどに下らないことなのだろうな、と空で考えていたら、思いもよらない考えを言われた。

「名前さん、あなた銀さんとお付き合い始めたって聞いたけど」
『…んッ!!?』
「私はこの耳で聞いたんだから、言い逃れしようとしたって無駄よ。銀さんで遊びやがって、この……わんぱく処女豚が!」
『なにそのネーミング!?』

わんぱく処女豚というパワーワードで脳内が埋め尽くされるが、今はそれどころではない。昨日の出来事がなぜこの短期間で広まっているのか。いや、それは紫メガネ猿の不法侵入が原因として……え? どうすればいいの? これって、認めていいの? あ、でもお付き合いのフリだから、それをちゃんと説明しないといけないか。

『えっと、あの、本当にお付き合いを始めたわけではないんです。訳あって、お付き合いのフリをすることになったんです。ね、猿飛さん』
「はあ? そんな話聞いてないわよ。あなたが大きい声で”お付き合いをしてるんです!”って言ったんでしょ。覚えてないとは言わせないわよ」
『いやあの、確かに言いましたけど、その後ですよ。沖田さん帰った後、銀時さんが名前の彼氏のフリの依頼代としてどーのこーの、って言ってたでしょ?』
「はああ?? 沖田? 沖田って誰よ。あんた話捏造するつもりね!?」
『沖田さんいたでしょ! どこから聞いてどこで終わったんですか!? いや、ていうかその宣言の前後に沖田さんの発言あったでしょ。絶対聞いてるでしょ。私沖田さんに色々ちょっかいかけられてるので、助けてもらうために銀時さんとお付き合いのフリをすることにしたんです! そうでしょ!? 思い出した!? ピンと来た!?』
「知らない。ワケワカメなんですけど。頭沸いてるんじゃないあんた。処女だからかしら」
『キィィィィ!! こんなに殺意が芽生えたのは沖田さん以来だァァァ!』

人を殺す念力があったのなら、それを実行しているくらい、やれやれと首を振っているメガネ猿を殺したい衝動に駆られた。
鬼の形相の私に対し、まあまあと朗らかな顔でお妙ちゃんが仲介に入った。普段面倒臭い絡みをしてくるお妙ちゃんがとてつもなくまともに見える。その横で心配そうな眼差しを向けてくる九ちゃんは女神ね。

「ねえ名前さん。今の話が本当だとして、二つ質問があるんだけど、いいかしら」
『本当ですのでどんどん質問どうぞ!』
「じゃあ一つ目。あなたが沖田さんにちょっかいをかけられていることが、どうして銀さんと付き合うフリをすることに繋がるの?」
『え……それは、あの……状況が状況で、沖田さんから逃れるために出た考えで……えっと…あれ、確かに、なんのメリットがあるんだろ……』
「メリットしかないわよ処女豚」
「…二つ目の質問ね。なぜ銀さんだったのかしら?」
『え…その場に銀さんしかいなくて…』
「贅沢な話ね」
「なぜ銀さんだったのかしら?」
『…だ、だから……』
「なぜお付き合いをするのが新ちゃんじゃなくて、銀さんなのかしら?」
『いや……』

やばい、この女もやばい。メガネ猿とは違うジャンルでやばいやつだ。
お妙ちゃんが、冷や汗を垂れ流す私の頬を片手でがっと掴んだ。指が皮膚を貫通するくらいえげつない力と痛みだ。やばい痛すぎる死ぬ。マジで皮膚破ける。頬の骨折れる!!

『…ぐあっ、あっへ!! せすめいぐる!!(まっ、待って! 説明する!)』
「ふふふ、何言ってるのかしら。フガフガ言って。本当に豚になってしまったのかしら」
『ひっひが!! っあーから、はあしへくかさい!! (ちっ、ちが!! 痛いから離してください!!)』
「え? 何? 新ちゃんとお付き合い始める!?」
『っがう、おの、ごえふがあああああ!!(違う、このドエスがあああああ!!)』

私の違うを聞き取らなかったこの女は、「新ちゃんとお付き合い始めるのね、ふふ良かった」と、都合の良い解釈を行った。人を殺したい衝動がまた全身を駆け巡ったが、もう良い。とりあえず離せ。
思いが珍しく繋がったのか、ぱっとお妙ちゃんは手を離した。圧倒的開放感がある頬にふううと息を吸いながら感動した。息が吸えるって幸せなことだったんだな。

「この女がチェリーと付き合うのなら問題なしね。はー良かった」
『いや付き合わないですけど!!!!!』
「え?付き合わないの?」
『いや頬をがっと掴もうとするポーズをするな! もう、私怒ってるんだからね!? 君らぶっ飛びすぎ!! 私が怒らないとでも!? 怒るぞ!』
「どうぞ」
『えっ』
「怒りなさいよ」
『え』
「遠慮なくどうぞ」

サラリと言われ、固まった。
怒る?
普段怒ったことがないから分からん。怒り方分からない。怒り方分からないって伝わる??

「まあそんなことはいいのよ、名前さん。新ちゃんのこと、嫌いなの?」
『…嫌い、ではないですけど。むしろ好きな方です。あ、友達としry』
「あらそう! じゃあ新ちゃんで決定! 明後日挙式を行うから、今からウェディングドレスを見に行きましょうか!」
『ええええええ!!! ええええええ!! 唐突すぎない!? 唐突すぎると思いませんか!? ねえ!! 付き合わないよ!! 結婚しないよ!!』
「ギャーギャーうるさいわよ、処女豚。眼鏡掛け器の何が駄目なのよ。銀さんよりはよっぽどお似合いじゃない。それに、あんたの好みに近いでしょ」
『……私の好みに近い? とは?』

私がいつ、こんな野蛮な女子力ゼロの奴らに私の好みを伝えたというのか。言う必要がないし、言いたくないし、言ったところで碌なことがない気がする。
まともな答えが返って来ないんだろうな、と適当に答えを待っていると、とんでもない答えが返ってきた。



「だってあんた、ショタコンでしょ」


ショ―――


『ショ……』


――ショタ、コン??

紫猿の発言は、理解できて、理解できないものだった。この女は、私がショタコンだと言っている。決めつけている。なぜ。なぜそんなことを。なぜ。


なぜ、バレた。


『そ…そんなこと、ないですけど…?』
「目泳いでるわよ名前さん」
『いや、ははは。ショタコンってなんですか? 知らないんですけど……』
「あんたさっきそんなことないって言ったじゃないのよ。矛盾してるわよ拗らせショタコン処女が」
『な……何そのパワーワード……』
「名前さん、私はよくショタコンというのが分からないんだけれど……もし、本当に名前さんがショタ…しょたこん? というものなら、隠さずに観念した方が身の為だと思うの。だってあなたがしょたこんだっていう証拠もあるんだから。pix●vで” おねショタ R-18 ”って調べすぎよ名前さん」
『ぎゃああああああ!!! なんでいきなりショタコンって片言になるのお妙ちゃんしかもショタコンって意味分かってんでしょてかおねショタって調べてる私の写真どこで撮ったのいや見せてくんなぎゃあああい!!!!』


名字名前!
これにて爆死!
プライド全部捨てて爆死したことをここに宣言します!
礼! はい! これにて終わり!
はい! では今から死にまーす!!!


「いやなに勝手に死のうとしてんのあんた。逆に死んだ方が恥ずかしいでしょ」
『……どっちも恥ずかしい』
「私たちの命令聞いておいた方が恥ずかしくないでしょ。だって私たち、あんたの拗らせた性癖をバラすつもりないもの」
『嘘だ……っふ、あんたらがそんな緩い手法で終わらせるわけ…』
「まあ条件付きだけどね」
『でしょうね……』
「目が虚ろな名前さんに、ビッグチャンス〜! では、名前さん! まずあなたは勝手に新ちゃんじゃなく銀さんと付き合ったという裏切り行為をしたため、ショタコンというクソ痛いクソ恥ずかしい性癖を全江戸中にばら撒かれるというクッソ恥ずかしい罰を受けることになりました〜」
『地獄すぎる…死のう…』
「でもでも! 私たち優しい天使ちゃんsはあなたにチャンスをあげることにしました〜! そ、れ、は!」
「銀さんと別れて新ちゃんとくっつくことで〜す」
『  』
「これを見事今日中に達成したら〜! なんと! この罰ゲームは廃止します! なんとなんと! 優しい天使ちゃんもいるもんです!」
『  』
「優しいわねえ〜〜ねえ〜〜猿飛さん」
「全く〜本当よ〜〜お妙さん!!」


うふふふ、うふふふと二人が奇妙な声を上げている。
気絶しそうな私は、繋ぎとめている意識の中、ひとつ彼女達に提案してみることにした。
なんとか、声に出して伝えてみる。



一分後。期限を明日にずらしてくれと提案してみるも、今すぐバラすぞと言われたので、今から罰ゲーム回避のために頑張ろうと思いま〜す! あれ? 涙が? あふれて? 前が見えないよ!? あれれれれ〜あはははは〜……うわああああああああん!!!!



もちろん続く!