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八話『酷似した首と首無し女』


セルティ・ストゥルルソンは、人間ではない。
北欧に伝わる妖精の一種、『デュラハン』と呼ばれる存在で、死期を告げる者と言われている。


午後7時過ぎ。共に同居している恋人、セルティ・ストゥルルソンの帰りを岸谷新羅は独りで待っていた。
荷物運びを任されていた彼女だが、そんな難関な仕事ではない筈だから、直ぐに帰ってくるだろう。と思っていたが、彼女が家を出てから既に四時間は経過している。

闇医者を業とする新羅だが、ここ最近の大きな手術の依頼を除いてしまうと、閑古鳥が鳴くような状況だ。家計もセルティに頼ってしまう部分もあり、彼氏として本当に頭が上がらない。

セルティ、早く帰ってきてくれよ...。と、餌を待ちわびる飼い犬のように項垂れ、悲しげな声で呟いた。ピンポーンと、インターホンが鳴る音が聞こえ、バッと体を起こす。直ぐ様玄関に駆けて、鍵を開ける。勢いよく扉を開けて、そこに立っているセルティ(多分)に抱きついた。

「セルティーー」

と、その時体は異常なまでに違和感を感じ取った。セルティの体じゃない。抱き心地が全く違う! 自身が抱きついている人物を視線を下にして伺ってみた。そこに居たのは、中学からの同級生の、名字名前だった。

『……何、してんのお前は』
「なんだ、名前か。何の用?」

バッと名前から離れて、平然とした顔で尋ねた。

男女が抱き合うというのは、恋人同士でなくても顔を赤くするくらいには問題である。だが彼らは全くその気配は見せなかった。同級生であり昔馴染である理由からだと思われるが。


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