女兎が啼く | ナノ
ドSで変態
目覚めると、取調べ室らしき場所に名前は居た。
『…あれ、何で私……』
「起きましたかィ?」
『ん?…ギャアアア!貴方は私を爆破させようとした悪魔!』
「どうも。ていうか女なんだから可愛い声出した方がいいですぜ」
『そんなお節介要らないんですよ!いやああ!何で私こんな所にッ…。…ん?』
「どうしやした?」
見覚えのある先刻まで、ある意味の葛藤を繰り返していた相手の男が目を丸くして尋ねる。だが、意味の分かっていない私は体を固まらせながら、自身の固定させられた手首を見つめて言う。
『…えっ?ナニコレ。手錠ってやつ?』
「そうです」
『えっ何で?取調べの最中って手錠するモンなの?』
「俺流の取調べでさァ。興奮するでしょう?」
『……するか馬鹿ぁ!! 取りなさいコレ!お願いします!取ってください!』
しょうがないですねィ、と男は淡々と言うと、しっかりと施錠された手錠を取った。だが、あろう事かそのまま男は私の両手を後ろに回し、椅子の後ろで手錠を嵌めた。私はいきなりの事に数秒停止すると、取調べ室に響く程の声でツッコミをした。
『何でだァァァァ!? いや何でッ!悪化してんじゃんコレ!マジで動けないじゃんコレ!!』
「興奮するでしょう?」
『だからしねえッつってんでしょうがァァ!!! いやホント、早く帰してください。息子がお腹を空かせて待っているんです』
「嘘だったら帰さねェ」
『嘘です本当にスイマセン!っていうかこの時間何なんですか!ていうか貴女自体一体何なんですか!』
「俺ですかィ?」
男は何故か愉しそうに笑うと、自身の名を名乗った。
「沖田総悟でさァ。アンタは?」
『……名前です』
「上の名前は」
『無いです』
「は?…あぁアレね、両親に会ったことがないとか?」
『いやそういうの一切ないです』
「え…じゃあ何ですかィ。もしかしてその容姿で天人?」
天人…?
私は沖田の言葉に一瞬固まる。
あれ、私って天人だっけ。あ、夜兎入ってるし天人か。あ、でも紀蘭……紀欄ってほぼ地球人と変わらないんだっけ。でもまぁ、天人か。
『天人です!!!』
「何でそんなテンション高く言うんですかィ。何か考える事があったんで?」
『えっ…いやべつに…えっと、まぁ、そうですね。天人というか…ハーフですね』
「何処と何処のハーフなんでィ?」
『夜兎っていう天人と紀欄というほぼ地球人の……。あっ』
サラッと言った直後、私は資料を落とした時のような焦りに見舞われた。
…や、やばい!紀欄って言っちゃったよ!ヤバイ!今回は本当にやばいよ!どうしよう!また汗ダラダラだよ!駄目だヤバイ!!!本当にやばい、ガチでヤバイ!!!
「……紀欄?あの紀欄ですかィ?あの有名な」
『いっいえ…間違いました。紀欄じゃありません、キラリです』
「…はァ?キラリ?」
『キラリ星からやってきたんです。夜兎+宇宙人です。以上です』
「…アンタ冷や汗ダラダラですぜ」
『えっいや別にこれはそのアレなんです』
「…名前さんはホント嘘が下手ですねィ」
沖田はそう言うと微笑むようにして笑った。
エッ何この顔。不覚にもドキッとしちゃった。え、何コレ。今のこの人の顔?誰?ホワッツ?
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