女兎が啼く | ナノ
初めて栗男に会った日
『やっと…やっと着いた…!江戸ォォォォォ!!!!!!!』
早速街のど真ん中での絶叫。
先程タクシーで高い金額を払い(金額が思い出せない)、江戸に着いた。
江戸には、春雨専用の家がある。風情があり、とても綺麗な所だ。地球へ訪れた春雨の者の為に特別に提供していて、生活費用云々は春雨からお金が落ちている。銀行で下ろしてくればもう生活がenjoyできる訳だ。
ワーイとルンルン気分で家に着き、開いていると言われていたドアを開けた。…つもりが、開かない。どうして。何故だ。試しにインターホンを鳴らしてみる。家を間違えたわけではなさそうだけど…。
そして出て来たのは、見覚えのある人物だった。
「誰だ朝っぱらから…あ?」
『あ…!こ、匂狼さん!?』
「おお名前か。こんな所で何やってんだ?」
春雨第八師団団長であり、狼のような風貌をした匂狼が出てきた。優しそうな目で私の頭を撫でながら聞いてきたので、私は困惑した笑みを浮かべながらとりあえず答える。
『元老に言われて地球の偵察に来たんです』
「そうか。俺もアホ提督に言われて一ヶ月前に来たんだぜ」
『そうなんですか。あ、今日帰られるんですか?』
「いや?もう一ヶ月後に帰るつもりだ」
『えっ』
ん?じゃあ私は?
『えっえっと、匂狼さん。私此処に住むよう言われているんですが…』
「そうなのか?でも此処には第八師団の団員しか居ねェぞ」
『えェェ!? じゃあ私どうすればいいんですか!』
「此処で狼ばっかのオス達と一緒に住むか、新しく家を探すか…だな」
ククッと笑いながら匂狼さんは言う。私の顔色がサァッと青くなった。
『そ、そんな…!…念の為に聞きますが、此処で住んだ場合の安全性は…?』
「まぁゼロに近いな」
『な!?』
「此処の連中はメスに飢えてる上にお前みたいな天使が来たら構わずヤるぜ?」
『な…』
「狼だからなァ。襲う所の騒ぎじゃねェぜ」
『…ですよねー』
私は苦笑いで返事をした。
……ここに住んだらマジでやばそう。
自然に体が貞操の危機を察した。
「俺ですら今、名前を押し倒したくて堪らねェんだからよ」
『はッ!?』
匂狼さんの発言に吃驚して私は思わず後退りをする。匂狼さんはくくっと喉を震わせて笑った。
「ハハ、冗談だよ。冗談じゃねェけど」
『どっちですかソレ!?』
「で、此処に住むか?俺は大歓迎だぜ」
『答えはNOです!自分で家探します!』
「おお、そうか。残念だ 」
『地球生活はenjoyしたいですからね!じゃあ、匂狼さんさようなら!また暇な日にお伺いしまーす!』
頭を下げて笑顔で言った。
よし、私は適当に家でも探そう!
「チッ…」
俺は名前の姿を見ながら舌打ちをする。脳内で神威の野郎の顔が浮かんで腹ただしくて仕方ない。
「…あいつが居なけりゃ第七師団も直ぐに潰せれるのに」
第七師団を潰した後の名前の泣きそうな顔がチラついて仕方ねェ。
俺は心の中で言うと、家の中へ身を潜めた。
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