25万打部屋 | ナノ

ベタな設定、ベタな展開

「マルコさんを色気で攻めたい…」


別に夜の営みに不満があるわけではない。寧ろ充実しまくっている。
だけど、いつもいつも気持ちよくしてもらうだけでは申し訳ないんですよ。
マルコさんの驚いた顔も見たいなって思うし、ちょっとぐらいマルコさんを虐めてみたいなとも思う。いっつも余裕な顔なんだもん。(勿論そこも格好いいけど!)
そう思って色んなことを考えたが、そういう知識があまりない私には何も思いつかなかった。
そりゃあそうだ。マルコさんが初めての人なわけだし。


「エースくん、サボくん。なんかない?」


昼休憩中。今日はデスクでお弁当を食べていた。
隣に座るエースくんと、エースくんの前に座るサボくんに何かいい考えがないか聞いてみることにした。
ご飯を頬張りながら「そうだな」と一緒に考えてくれるエースくん。サボくんはちょっと笑ってた。


「「エースが喜ぶかと思ってこれ着てみたの。似合う?」って言われると脱がしたくなる」
「うわ、最低。……でもいいな」
「名前は何着ても似合うからやってみなよ」
「サボくんは何かない?」
「うーん、俺はどっちかって言うと、俺の服を選んでくれると嬉しいかな?楽しそうな顔とか見れるし。んで、夜にその服を脱がしてもらいたい」
「エースくんとそんな変わんないじゃん。でもサボくんが言うとなんか色っぽいね!」
「俺はガキってか!?」
「エースくんは発想が高校生なんだよ」
「でも男って大体そんなもんだぞ。お、あれだ、あれしてみろ」
「あれ?」
「彼シャツ!」
「えー、いまどき萌えるの?」
「結構弱いぞ、なっサボ」
「見える見えないのギリギリが最高」
「特におっさん相手だといちころだ!」
「いちころかー…。やってみる!」


二人から応援をしてもらい、今日の夜にチャレンジすることになった。
作戦はこう。
普通にご飯を食べて、先にお風呂に入ってもらう。そのあと自分が入る。
そして脱いだマルコさんのシャツを借りて、彼シャツの完成。
いつもみたいに甘えるのはじゃなく、ちょっと控えめにマルコさんを誘う。
んでもってあとはマルコさんに任せるべし!
……色気で攻めてることになるのかな?
不安だったけど、イチャイチャできるかもだし、楽しみだ!


「よし、着るか!」


お風呂から上がって洗濯カゴに入れられたマルコさんのシャツを広げる。
一回り以上大きいシャツからはマルコさんの匂い。
変態って思われるかもしれないけど、私この匂い大好き!


「……は、恥ずかしいね…」


着る前まではワクワクしてたのに、着てからはドキドキと心臓がうるさい。
ブカブカだから肩は出るわ、手は隠れるわ、下は見えそうで見えないわ。…屈(かが)んだら終わりだね。
鏡でおかしなところがないか確認して、気合いをいれて両頬を軽く叩いた。

もし。もしもだけど、マルコさんがドン引きしたらどうしよう…。そんなの恥ずかしすぎるよ!
……やっぱり止めようかな。
エースくんとサボくんは「大丈夫」って言ってたけど、こんなベタな設定じゃあ大人なマルコさんを誘惑(そもそものなってるのかさえ微妙)できない気がする。

でもマルコさんのシャツを着るのはいいね。
なんか抱きしめてもらってる感じがする。ああ、いい匂い!


「名前、寝てんのかい?」
「あ」


いつもに比べてあがるのが遅かったため、マルコさんが心配しに来てくれた。
嬉しいな、と思って顔がニヤけたあと、すぐに悲鳴をあげた。
あああああ!今の私見ちゃダメだよ!もうちょっと心の準備してからいくつもりだったのに!


「あ、あのねマルコさん…!これにはちょっと事情があって…!」


しかもまだボタン全部とめてないんだよ!
胸隠したい!でも慌てるととめれない!あ、かけ間違えて下が…!


「もうやだっ…!恥ずかしさで死ぬ!出て行って下さい!」


顔がというより、頭が熱い!
ダメだ。私がマルコさんを誘惑しようなんて百年早かったよ!
着替えたいからマルコさんを追い出そうと押し返すが、両手首を掴まれ壁に押し付けられた。い、痛い…。
でもそれ以上に目の前にいるマルコさんが怖い…!おおお怒ってる…?


「人のシャツで何してたんだい?」
「マルコさん、ごめんなさい…!」
「何でこんなことになったかちゃんと説明してもらおうか」


ギリッと力を込めるマルコさん。
泣きそうになりながらもお昼のことを話し、今までの経緯もちゃんと説明した。


「へー…」
「うひゃっ!」
「こりゃあどっからでも入れ放題だな」
「あ、ちょっ…な、何して…!」
「誘惑されたからな、誘われてやろうと思って」
「いやいやいやいや!もう脱ごうと思ってたところなんで!」
「ああ、安心しろい」
「へ?」
「俺が脱がしてやるよい」


何かを含んだ台詞と、偽笑顔。
恐怖を感じた私は力を振り絞ってその場から脱出し、居間へと逃げる。


「おい名前。尻見えてるよい」
「うわああ!―――へぶっ!」


ゆっくり追いかけてくるマルコさんの言葉を聞いて、シャツでお尻を隠したら、バランスを崩してソファにダイブ。
顔打った…。お腹も打った…!


「追いかけっこは終わりかい?」
「っひ!」
「それとも「ソファでしたい」って言いたかったのかい?そうだよな、名前は照れ屋だもんな。じゃあ、楽しもうか」


追い付いたマルコさんが私の上に覆い被さって、私が逃げないようガッチリ拘束。
逃げられない恐怖と、これから起こるであろう行為に涙が止まらなかった。





「サッチ、ここ間違ってるよい。明日までにはちゃんと修正しとけ」
「……どうしたマルコ。やけに機嫌良さそうだな。いつものお前なら「今すぐ直せ」って言うのに…」
「なに、嫁が献身的なもので」
「は?」



「よう名前。どうだった?成功したか?」
「聞いてやるな、エース。見れば解るだろ」
「もう絶対しない…。マルコさん超怖い…!」






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