その時、至福につき 「アキちゃん、ちゃんと結んだ？」 「はい、ちゃんと目隠しできました」 「じゃあ俺の前に座って」 「はい。……あのゼンさん、本当に目隠してしても見えるんですか？」 「俺は嘘つかないよ。あ、アキちゃん今髪の毛触っただろ？」 「え！？な、何で解ったんですか…？」 「だから言ったろ。目隠してしても俺には見えるって」 「凄いです！何でですか？何で見えるんですか！？」 「アキちゃん落ちついて。とりあえず座りなよ」 「俺が立ち上がったのも見えるんですか？！ゼンさん凄い…！」 「ふふん、まァね。て言うか俺の通り名知らないの？」 「通り名？えっと、“風来坊”ですよね？」 「ノンノン。本当の通り名は“千里眼”。俺の目に見えないものはない！」 「おおお…！ゼンさん凄いです！」 「（ただ単に目だけ風になってアキちゃんを見てるんだけどね…）」 「俺も修行したら見えるようになりますか！？」 「（キラキラした目でここまで信じられちゃあ…嘘だって言えねェよな…）」 「ゼンさん！俺も千里眼取得したいです！」 「おお、いいぞ。でも取得するには辛い修行があるんだ」 「俺、何でも耐えます！頑張ります！」 「お、言ったな？じゃあまずはザゼンからだ！」 「ざぜん？」 「そ。正座して、精神を統一する大変難しい修行だ」 「精神統一…。が、頑張ります！」 「じゃあ正座して」 「………俺、これ苦手です…」 「文句言うなら千里眼は無理だな」 「嘘です嘘！これからどうするんですか？」 「何も考えず目を瞑るだけ」 「…何も考えないんですか？」 「無でいること。何か考えてたり、邪心が出たらこのハリセンで叩くから」 「頑張ります！……っと、これでいいですか？」 「じゃあ始めー」 「はい」 「おーい、アキー、ゼンー。何遊んでんだ？」 「おうエース。お前も参加するか？」 「参加？」 「千里眼を取得するため、ザゼンをしてるんです」 「はいアキちゃん喋ったー。てい」 「いたっ！」 「何だよそれ！面白そうじゃん！俺も混ぜろよ！」 「じゃあアキちゃんみたいに正座して目ェ瞑れ」 「え、俺そっちがいい。バシバシ叩きてェ」 「お前が持ったら遠慮なく殴ってくるだろうが」 「バレたか」 「バレないと思ったお前がおかしい。ほら、参加するんなら正座しろって」 「まァいいか。これでどうすんだ？寝んのか？」 「バカか。精神統一だ。無になれ」 「おう、解った。……グー」 「ゼンさーん、さっそくエースさんが寝てまーす」 「でしょうとも。おりゃ！」 「グー」 「うわっちィ！燃やしやがった！」 「あーあ…。せっかくの力作だったのに残念ですね…」 「これでスパーン！といい音立ててマルコを殴るつもりだったのに…！仕方ねェ。ハリセンに代わって俺の風をお見舞いするから覚悟しろ」 「え、俺も、ですか？」 「アキちゃんは痛くない程度にね。エースは遠慮なくやる」 「あの…。エースさんずっと寝てますよ？」 「テメェエース！ザゼン舐めんな！」 「うわあああ！頭から真っ二つにしちゃった！」 「―――ってェなァ…！ゼン、テメェ何しやがる！」 「痛いって言葉じゃすまないのに…」 「寝るなっつってんだろ！やる気がねェならどっか行け！」 「インチキしてアキの気ィ引いてんじゃねェよ！」 「え、インチキ？」 「アキ、あっち行って昼寝しようぜ」 「でも俺、まだ修行中で…」 「そうだそうだ！アキちゃんを一人占めはダメだ！楽しいことは皆で平等に！」 「じゃあゼンも昼寝しようぜ。今日はいい天気だし、きっと気持ちいいぜ」 「まー…そうだな」 「それにお前、修行とか嫌いじゃなかったっけ？」 「……確かに！ここに入る前は大嫌いだったのに、いつの間にか好きになってたわ。マジねェよ」 「だろ？ってなわけで昼寝だ！アキ、行くぞ！」 「はーい！」 「アキちゃんは勿論俺の隣だよね？野郎の隣でなんて寝たくねェし」 「は？ゼンは一人で寝てろよ。アキは俺と昼寝するのが好きなんだから」 「誘ったじゃん！エースから俺も昼寝にって誘ったじゃん！」 「肩並べて寝ようとまでは言ってねェ」 「その真面目顔、超ムカつく」 「……あの」 「どうした、アキちゃん」 「どうした、アキ」 「あのね、右にゼンさん、左にエースさん。じゃ、ダメですか？」 「「……」」 「俺が真ん中で」 「「ああ、その手が合ったか」」 「で、これかよい」 「気持ち良さそな顔して寝てんな」 「見てて暑苦しいよい」 「とか言っちゃって二人が羨ましいだけだろ」 「黙れ」 「一言って結構きついよな」 「そろそろ飯だってのに…」 「でも三人とも幸せそうに寝てんだしほっとこうぜ」 「……確かに今のアキを起こすのは気が引けるよい」 「エースとゼンはいいのかよ」 「アキがいなかったら踏みつけてたよい」 「何を。とは敢えて聞かないよ」 「アキが起きたら覚悟しとけ」 「オッサンの嫉妬って超怖い」 ▼ 琴美さんからリクエスト頂きました。 （ ← | × ） ▽ topへ |