80万打部屋 | ナノ

今日も過保護です

「マルコさん、俺も手伝います!」
「そうかい、そりゃあ助かるよい。じゃあこの木箱は食糧庫に運んでくれるかい?」
「解りました!」


久しぶりに島についた白ひげ海賊団は、食糧の補給や砲弾の補給やらで大忙しだった。
その指揮をとるのが一番隊隊長のマルコ。
的確かつ素早く指示を出し、今日中にはなんとか終えることができるだろう。
そんなマルコを見て白ひげ海賊団で唯一「手伝います!」と声をかけてきたのは、この船の末っ子名前。
名前が手伝うのを解っていたのか、果物が入った小さな木箱を名前に渡して指示を出す。
名前は元気よく頷き、迷うことなく食糧庫へと持って行く。


「なァマルコー、名前が手伝うんなら俺昼寝してていいか?」
「バカ言ってんじゃねェよい、エース。口より手ェ動かせ」
「名前以外には冷たい奴だよなー…」


口を尖らせているのは今回の補給係り、二番隊隊長・エース。
他の仲間以上に重たい荷物を担ぎ、平気な顔で積み込んでいく。


「文句は多いが頼りにはしてんだから真面目にしろい」
「うわ、マルコに褒められるとか気持ち悪ィんですけど…」
「殴るぞテメェ」
「マルコさーん、荷物運び終わりましたーっ」
「おう、ご苦労さん」
「名前ー、こっち手伝えー」
「はーい!」


荷物を運び終えた名前が駆け足で近寄って来た。
マルコは薄く笑みを浮かべ、頭でも撫でてあげようとしたが、エースに呼ばれ、そちらへと向かって行く。
すぐにエースを睨みつけたが、エースは口角をあげるだけだった。


「っわぁ!」
「「名前!」」


エースの元に急ぐあまり、足がもつれて甲板に頭から突っ込んでしまった。
すぐにマルコとエースが駆け寄り、「大丈夫か!?」と声をかけるも、名前はピクリとも反応を示さない。


「名前!死ぬなッ!」
「転んだだけで死ぬかよ…。おい名前、大丈夫かー?」


エースがマルコの過保護っぷりに呆れながらしゃがみこみ、名前の両脇に手を入れて上半身を起こして座らせる。
額と鼻先が真っ赤になっていて痛々しい。


「血は出てねェみたいだな。大丈夫か?」
「痛くて声もでねェのかい?ナース呼ぶかい?それとも医者がいいかい?よし、この島一番の医者を連れてくるから待ってろい!」
「だから落ちつけってバカマルコ!」


飛び立とうとする保護者を引き止め、赤くなった額に手を伸ばした瞬間、今まで無表情だった名前の表情が歪んだ。


「…っ…う、うううう…っ!」
「名前ッ、どうした?!」
「もー、マルコうるせェ…。打って痛かっただけなんだろ?ほら、名前。冷やしてやっから食堂行こうぜ」
「うああああ!」
「そ、そんなに痛かったのか?確かに勢いはあったけどよ…」
「名前…っ!名前ッ!」
「おいそこ。名前が死んだかのような空気を作り出すな。転んだだけだ」


さて、困った。目の前には転んで泣いている妹と、どうしたらいいかオロオロしている保護者。
もし名前が弟だったのならば、無視をして仕事に戻っている。ルフィのときはそうだった。だけど名前は妹だ。
どう接していいか解らず、エースも困ったように頭をかいた。


「よし!じゃあ俺がおまじないしてやるから。だから泣くな」
「っひ…く。…おまじ…?」
「名前のいたいの、俺のとこに飛んでいけー」


名前の赤い額を擦って真面目な顔でおまじない。
隣のマルコが「何してんだこいつ」的な顔で見ていたが、無視をした。


「おっ、俺子供じゃ、ない…!」
「さあ名前、バカは放って医務室行くよい」
「―――うッ…!」
「え?」
「は?」


マルコが名前の手を取って医務室へ向かおうとした瞬間。
エースが額を抑えて俯いた。
聞き取りにくかったが、「いてェ…」と呟いたのが聞こえて小首を傾げる二人。


「名前の痛いのがマジで俺んとこに飛んできやがった…。このおまじないは本当だったのか…!」
「え…?えッ!?」
「(……あー…なるほどな)」
「で、でも俺もいた「うああああ!マジで痛ェし!」
「本当…ですか、エースさん…」
「やべェ、鼻まで痛くなってきた…!」


本気で痛がるエースを見て、今さっきのおまじないが本当ではないかと疑いだした。
自分の額も鼻先も痛くてジンジンしているが、打ったときほどではない。
その痛みがエースに飛んでいったのだとすると、名前は申し訳ない気持ちに襲われる。


「え、エースさん!それ俺のですよ!俺に返して下さい!」
「このおまじないは一回しかきかないから無理だ…!ってェ…、これマジで痛ェのな!」
「大丈夫ですか!?え、えっとえっと…。マルコさん、どうしよう!」


自分の痛みなどすっかり忘れ、苦しんでいるエースを見て戸惑う名前はマルコに助けを求めた。
マルコは口元で笑って、「ああ」と名前の頭を撫でてあげる。


「名前はもう平気かい?」
「俺はもう平気です!だからエースさんを「だとよい、エース」


マルコの言葉に俯いていたエースは顔をあげ、いつものようにニパッ!と笑顔を名前に見せた。


「名前が痛くねェなら俺も痛くねェや!」
「え…ほっ、本当ですか?」
「だって名前から飛んできた痛みだからな。名前が治ったなら俺も治った!」
「よかったー…」
「つーかあれぐらいで泣くなよ」
「……い、痛かったんです…」
「そうかそうか」


子供だなァ。と思いながら名前の額を撫でてあげると、その腕をパシンと叩かれた。
叩いたのは勿論マルコ。
エースの眉がピクリと動いて、視線をマルコにうつすと同じく不快そうな顔をしたマルコがエースを睨んでいた。


「治ったんなら仕事に戻れよい、エース」
「は?それはマルコもだろ」
「俺は今からこいつを医務室に連れて行くんだい」
「名前はもう治ったって言ってんだろ!」
「もしもってもんがあるだろい!」
「だー!過保護すぎんだよテメェは!あれぐらい平気だっての!」
「テメェと名前を一緒にすんじゃねェよい!」


二人の険悪モードに再び名前がオロオロしていると、仕事を終わらせたイゾウが隣に来て、


「二人は放っておいて遊びに行こうか」
「え、でも…」
「いいのいいの。あいつらはまだ仕事残ってるし、名前ちゃん遊びに行きたいだろ?」
「………はい…」
「うん、じゃあ俺と行こうか。あ、その前に氷でちょっと冷やそうか」
「お願いしますっ」


漁夫の利で名前を連れ去ったのだった。


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