籠の中で鳥が囀ずる ログスティ



「うひゃぁ!!!!」

脇腹を指先でなぞられてスティングは甲高い叫び声を上げた。
その勢いで椅子から転げ落ち、左脇腹を抱えて縮こまる。
耳まで赤く染めて涙目で見上げた先には無表情のまま右手を構えたローグ。
大丈夫か?と心のこもっていない言葉を投げかけられてスティングは吠えた。

「何すんだよ!!」
「いや、脇腹が見えていると思ってな」
「はぃい!!?」

叫ぶなうるさい…
スティングが座っていた椅子を直し、さも当然の様に座ったローグは、ため息まじりにレモンイエローの髪を見下ろす。
そして、自分の膝をポンポンと叩いた。

「なに」
「ほぉ、俺に楯突く気か。優しくされるのは嫌いか?ならば犬の様に地面を這いつくばっていろ」
「ごめんなさい…」

無表情な瞳にブルリと震え、鼻を啜って立ち上がる。
早くしろ、と言っているような眼差しを受けながら、ローグの片膝にちょこんと座った。
近くを通ったギルドメンバーはいつもの光景に何を思う事無く去って行く。
これで満足だろうか、と思うスティングとは対照的に、ローグは微かに眉を顰める。
つい、と白い指先が再び脇腹を滑った。

「ひゃぅあ!!!!」
「誰がそんな座り方をしろと言った…」
「だ、だって、膝叩いてたから俺はちゃんと…!ま、触んな!!」
「膝に座ると言ったらこうだろう」

スティングが着るファーが頬をかすめつつ、強引に座り方を変える。
へ、と間抜けな声が聴こえる。
それもそうだ、向かい合わせでローグの膝の上に座っているのだから。
少し見上げれば、顔を真っ赤に染めたスティングが、瞳に涙を滲ませながら口をぱくぱくと動かしていた。

「わかったか、普通はこうだ」
「違うし!!絶対違うし!!真顔でこんなおかしな事すんな!!」
「何を慌てている。この前の夜だってこうやって…」
「ろぉぉぉおおおぐぅぅぅぅぅうううう!!」

いらない事まで口走りそうなローグの口を両手で塞いだ。
あぁ、これは本当に泣き出しそうだ。
バカ野郎、と呟いて俯いたレモンイエローを撫で、唇を寄せる。
見た目に反して髪質は柔らかい。
小鳥のような柔らかさだ。

「お前はずっとここで餌を貰っていればいいんだ」
「は?」
「返事はどうした」
「は、はい!!」

レモンイエローの小鳥は、俺の肩で俺だけの為にさえずっていれば良い。
ナツさんでもなく、俺の肩で、羽を休めれば良い。
これ恥ずかしい、と呟くスティングの頭を撫でてローグは口角を上げる。

「ローグわけわかんねぇ…」
「何だ?」
「んぅっ」

親鳥が雛に餌を与えるように唇を塞ぐ。
舌を絡めて、食んで、吸い上げて。
自分を刻み付けて唇を離した。
懸命に息を吸う姿に愛しさが込み上げる。

「み、みんなに見られるから、もう…っ」
「だったら場所を移動する」
「俺仕事が…!」
「キャンセルしろ」

羽根は折らない。
だから、俺の目が届く場所にいてくれ。



E N D



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