短編[甘] | ナノ


▼ 操られ人形‐01

今は体育の授業中。
生徒達は体育館へ移動した為、教室内は静まり返っている。

だが、そんな教室内の片隅でコソコソと物音を立てている怪しい人影が一つ…。

可愛らしいマスコットのぶら下がった鞄のファスナーを恐る恐る開き、中をあさる男子生徒。

目が隠れるほどに長々と伸びきった髪型から不気味な印象が漂うこの少年の名は笹原。


笹原は鞄の中から一本のクシを取り出し、それに絡まっている髪の毛を一本つまむと、ニタリと口角を吊り上げた。

そしてクシと鞄を元通りに戻すと一番後ろの自分の席へ向かい、今度は自身の鞄をあさり始めた。

飾り気のないシンプルな鞄から出てきたのは現代では滅多に目にかかることのない古風でまがまがしいワラ人形。

笹原はその人型に作られたワラ人形の胴体に先ほど採取した髪の毛を押し込んだ。

(…これで、美園さんは僕のものだ…)

髪の毛の奥の細い目を歪ませて笹原はワラ人形を掲げてクスクスと陰気な笑いを響かせた。


・ ・ ・ ・ ・


次の授業は社会。
教師の抑揚のない解説と体育の疲れもあってか生徒達は皆、泥のような気だるい雰囲気をまとっている。

机に突っ伏しいびきをかく者、隠れて漫画を読む者、各々好きなことをして退屈な時間を潰している。

笹原が荒らしていた鞄の持ち主である美園も皆と同じように机の下で携帯をいじり暇を持て余していた。

美園の2つ斜め後ろに座る笹原は美園の姿を見やり、不気味に微笑む。

そして片手を机の中に入れ、呪文のような文字が刻まれたシルバーリングをはめた人差し指を、忍ばせておいた人形の脚にそっと這わせた。

「……っ!?」

美園の体がピクリと揺れる。

(やだっ、何…っ?)

突然太ももに走った不快な感覚に美園は動揺しながら、虫でも這っているのかと足を確認する。

その様子を後ろから見ていた笹原は満足げに笑い、今度は人形の腹の辺りを撫で上げた。

(いや…っ!?)

ゾワゾワとした感触が腹部に駆け巡り、美園は得体の知れない恐怖にギュッと目を閉じる。

散々お腹をくすぐられ、そしてそのザワつきは腕へと移動していく。
見ても腕には虫も何も這っていない。
けれど確かに何かが触れている感覚が美園を支配していた。

(どうして? なんなのこれ…っ、あ!?)

混乱する美園に見せつけるように“それ”は腕全体を這い回り、そして手首の辺りでグリッと押すような感覚へと変わった。

まるで人間に触られているような圧力に、驚愕して凍りつく美園。

そんな美園を尻目にそれは再び皮膚の上を滑って肩口へと這いあがって行く。

(やっ…やだ…!)

執拗に円を描くように乳房の周りを移動する感触。
明らかに性的な動きに美園は焦りを感じて小さく身を縮こまらせた。

(やだっ、やだ…! そこはダメッ…!)

「…っん…!!」

不快でしかないはずなのに、それが胸の突起を通り過ぎた瞬間不本意にも美園は上擦った吐息を漏らしてしまった。

(違う…っ、ダメ、こんなの…気持ち悪いだけなのに…!)

必死に自分にそう言い聞かせるが、恐怖心と緊張で過敏になった身体は性感帯を触られるたびに抑えようのない疼きを湧き起こしてしまう。

(いやぁっ!)

感覚は徐々に勢いを増して美園の乳房を縦横無尽にこねくり回し始める。

固く張り詰めた突起ごと柔らかな膨らみを押し潰され、グリグリと乱暴に揺さぶられ、美園は逃れようのない刺激にただただ声を押し殺して耐え続けるしかなかった。

(もう、やめて…っ!)

しかしそんな美園をあざ笑うかのように、感覚は胸から反れて今度は背中へと忍び込んで行く。

「っ、ぅう!」

ツゥゥッ…と背筋に走り抜けた甘痒い刺激。

途端にゾクゾクと電流のような快感が弾けて美園は堪らず体を跳ね上がらせた。


(…あれ?)

その反応を見た笹原が驚いて指を止める。

性感帯から外れて少し休ませてあげようと背中に移動したつもりだったが、美園の反応は胸のときよりも背中の方が明らかに大きかった。

(…もしかして美園さんって…背中が弱点?)

そう悟った笹原は意地悪く笑みを歪ませてもう一度人形の背中を撫で上げた。


「〜〜っ…!!」

止んだかと思った刺激が再び湧き起こり、美園は悲鳴を上げそうになった口をとっさに手で抑え込んだ。

(…やだっ、やだぁっ! やめて、声が…っもう我慢できない…!)

何度も何度も背筋をくすぐられ、快感に耐える美園の瞳からは涙が滲み始める。

顔から耳の先まで赤く染まり、汗が噴き出るほどに熱く火照って、下半身の中心からは隠しきれない欲望の蜜が染み出している。

美園はもはや理性を働かせることができないほど淫らな欲情に身体を支配されてしまっていた。

そんな美園に最後のとどめを刺そうと、笹原は人形の背中からじわりじわりと下に向かって指を滑らせていく。

(だっ、だめっ、だめぇっ…!そこは…っ)

「あぁ…っ!!」

今にも張り裂けそうなほどに熱い疼きに震えていた秘部を撫でられ、美園は思わず声を上げてしまった。

その声を聞き周りにいた生徒達が一斉に美園に視線を向ける。

「どうしたの?」

「…んっ、ううん! 何でもない!」

心配そうに声をかけてきた友人に笑顔で答え、美園は顔を真っ赤にさせうつむいた。


(これくらいにしといてあげるか…)

笹原は肩を揺らし呼吸を乱している美園を眺めながらそっと人形を手放した。

(家に帰ってからたっぷり遊ばせてもらうよ)


・ ・ ・ ・ ・


放課後、美園は友人の誘いを断り真っ直ぐ家へ帰った。

高ぶってしまった体を一刻も早くどうにかしたかったのだ。


自分の部屋に入りドアを閉めて深い溜め息をつく。

そして鞄を置くなり制服姿のままベッドの上に座った。

シャツのボタンを手早く外し、ブラのホックも外して手を差し入れ乳房を揉みしだく。

「…っあ、ぁ!」

指先で突起をつまむと一気に理性が弾けた。

壁に背を預け、そこを転がしたりキツくつねったりと煽られた欲情のおもむくままに愛撫する。

敏感になっている体はあっという間に快楽に呑み込まれた。

左手を湿り気のおびた下半身へと伸ばし、下着の上から割れ目を撫でる。

割り入った指先がヒクつく肉芽に圧をかけた瞬間、痺れるような快感が全身に走った。

「あぁ…っ!」

美園は堪らず甘い悲鳴を上げる。

夢中になって自らを追い込んでいく美園。


…とそこで不意に鞄の中の携帯が騒がしく鳴り始めた。

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