▼ 秘め事‐06
不安を渦巻かせる一方で、浅ましい雌の貪欲が下半身をドクドクと熱く脈動させていた。
ゴムを付けた切っ先を向けられ、それはますます膨張して全身を高ぶらせる。
「あっ…!」
両膝を立てられ、股を大きく広げられる。
軽く腰を持ち上げられると、こぼれた愛液がお尻の方にまで伝い流れていった。
そんな醜猥に乱れた媚肉を夏見の熱塊がグッ…と押し分ける。
最高潮の期待感に胸が張り詰め、私は呼吸を詰まらせシーツを掻いた。
「あっ…、あ、っは…ぁう…っ!」
性感の坩堝を亀頭が擦りジワジワとめり込んでいくたび、甘美な痺れが腰の内から放たれて蓄積していく。
「んっ、あ…、ッふあぁあああ!!」
半分くらいまで到達したところで、最奥まで一気に打ち付けられ、不意の衝撃に腰に溜まっていた痺れが荒く弾けて下半身全体が極悦の渦に呑み込まれた。
「っあ…、はっ、はぁ…ッ」
…こっ、こんな、たった一突きでイクなんて…!
幾度も味わった浮遊感と自身の卑しさに軽いめまいが湧き起こる。
歪む視界に映る夏見はキョトンとした顔で私を見下ろしていた。
「…今の、イッた?」
「…っ、そっ、んなの聞かないでよ…っ!」
顔の血管が焼けそうなくらい熱くなって、視界が滲み出た涙でさらに揺らめく。
きっと今の私は快楽に崩れただらしない表情をしてるんだろう。
とても夏見とは顔を合わせていられず、私は背けた顔を手の甲で覆い隠した。
「…ふ…っ」
内心で自分の醜態を蔑んでいる最中、上から降ってきた微かな笑い声。
心臓まで焼けてしまいそうなぐらい羞恥が込み上がる。
いたたまれなくなった私は夏見に悪態づくことで気をごまかそうと口を開いた。
「っあ…! あっ、あぁああっ!」
その途端になだらかに抽送が始まり、吐き出そうとした言葉はただの情けない喘ぎ声に変わってしまった。
固く研ぎ澄まされた夏見の欲望は、一突きごとにどんどん加速していく。
イッて間もない伸縮を繰り返す膣壁を荒々しく擦り上げられ重く深く突き込まれて頭の中が一変に真っ白に塗り替えられる。
指の愛撫なんてまだまだ繊細なものだったと思えるようなその猛撃に私は自ら腰を浮かせ反らせて鳴き乱れた。
「あああっ! あッ、んぅぅうっ、奥…っ、突くの、強すぎっ…! またイッちゃ…っ、ぁああっ! やあぁああッ!」
全身に響く強烈な打ち付けが恐ろしいほどの快感をもたらし、泥酔しきった器官は瞬く間に欲熱を破裂寸前まで膨張させる。
「ああぁあっ! ダメッ、あっ、イク! イッ…、あっ ああああぁーッ!!」
体の中枢で煮えたぎった欲望が焦げるほどに熱く弾けた。
脳内で狂悦の火花が散り、目の前がチカチカと点滅する。
「ふぁ…ッ、はぁ…、あぅっ!?」
今にも宙に浮いてしまいそうな感覚に呑まれ、火照った吐息を深く吐き出す。
その刹那、本当に体がブワリと浮き上がって、素っ頓狂な声を上げた内にぼやける視界が一転した。
「なっ…、んぁ! あああぅっ!」
夏見に抱き上げられたんだと状況を把握できた途端に脳天に貫く猛烈な突き上げに襲われ、私はとっさに夏見にしがみついて嬌声を荒げた。
「やああぁっ! 深い…ぃっ! んあぁッ、あぁ! やっ、やらっ、やああぁあっ!」
自分から体重を乗せているせいで夏見の熱が奥深くにまで行き届き、狂おしい快感が腰を砕く。
それだけでも精神がどうにかなってしまいそうなのに、夏見は私の服を捲り上げて上下に揺れる上半身のあちこちに舌を這わせ、甘噛みし始めた。
痛みもくすぐったさも全て快感に変換されて、胸の欲火が激しく燃え盛る。
「やらあぁっ! もっ、もうっ、こあれる! おかひくなうぅぅっ!」
こんなにも呂律が回らなくなるなんて生まれて初めてだった。
夏見のうなじに爪を立て、天井を見上げて塞がらない口からヨダレをこぼして泣き喚く私はとっくに壊されてしまっているのかもしれない。
絶頂の感覚がいつまでも続いて、いつイッてるのかなんてもうわからない。
全身が性感帯になって、夏見の肌が触れているところから快感が流れ込み、胸に降りかかる吐息にさえも反応して膣内をドクンと鼓動させてしまう。
「ああぁあっ、らめっ、もぉっ…無理ぃぃっ! んあッ、やあああぁっ!」
「逃げるな。もう少しでイクから…っ」
切迫した声が鼓膜を震わせる。
そして私の体は再び宙を切り、ベッドの上へと押し倒された。
唇を唇で塞がれ、手を手で拘束され、ろくに身動きできない状態の中で手加減なしに内部を進撃される。
「んふッ、んんんんっ! っあ…! はッ、んぅ! ンんんーっ!」
これだけ長く激しい情事をしているのに、勢いは衰えるどころか今まで以上に威力を増して熱くうねる肉壁を擦り貫く。
頭がドロドロにとろけきって何も考えられない私は五感全てを淫欲に満たし、ただひたすらに夏見から与えられる熱情を貪り続けた。
「…っく…!」
「ンんっ! んぅぅうーーッ!!」
夏見から苦しげな吐息が漏れ、そして子宮口を叩かれると同時に、張り詰めた淫茎が大きく脈打った。
「ん、ぁ…っ、はッ、はあっ…」
収縮する膣の中でビクビクと息づく夏見の性感。
永遠に続くかのように感じた背徳の遊戯が終わりを遂げた。
熱に浮かされた互いの視線が絡まる。
「…ん…っ」
頬を撫でられ、わずかに身を揺らしながら私は夏見の背に両腕を回した。
深くゆったりと重なる唇。
私たちはしばらくの間そのままの体勢で甘美な余韻に酔いしれ続けた。
・ ・ ・ ・ ・
「水」
「んぁ…。ありがと」
ミネラルウォーターの注がれたコップを受け取り、一気に半分まで喉に流し込む。
熱帯化した体に行き渡るみずみずしさと冷たさがため息が出るほど心地いい。
隣りで同じく水を飲む夏見に目を向ける。
あれだけガツガツ運動しまくったのに、顔色はちっとも変わってない。
「…疲れてないの?」
「別に」
「ああ…そうデスか」
「まだヤれる」
「はっ…?! 私はもう無理だからねっ!」
「根性なし」
「夏見が絶倫すぎるんだよ! …ていうか…っ、ヤってるとき性格変わりすぎっ! まさかあんな肉食獣だったなんて…っ」
「…俺も広瀬があんなに感じやすい体質だとは思わなかった」
「何それっ! 別にそんなっ」
「何回イッた?」
「…ぅぐっ」
夏見の鋭いツッコミでさっきまでの半狂乱していた自分を思い出してしまい、顔の血液が沸点に達する。
言葉を詰まらせると夏見は不敵に微笑んで悠々とコップを口に運んだ。
「…っ、今日のこと、同級生には絶対言っちゃ駄目だからねっ!」
「はい」
「絶対だよ! 絶対絶対…っ」
「言わない。広瀬と付き合うことになったって言ったら色々突っ込まれそうで面倒くさい」
「…え!?」
「ん?」
「…付…き合うって…?」
「あぁ。駄目?」
「だっ、駄目じゃないよ! でもっ…、えぇっ? 私でいいのっ?!」
「好きでもない人とヤるほど盛ってない」
…じゃあ、夏見は私が好きってこと…っ?
ええぇっ! そんなっ、いつから?!
「顔、凄い真っ赤」
「ふゎっ!」
コップを持って冷えた手が頬に触れて、その冷たさに私はビクリと肩を強ばらせた。
緩く顎を引かれ、唇を捕らわれる。
伸びてきた舌の温かい感触が心をくすぐって、落ち着いたはずの欲が懲りずにまた疼き始める。
「ん…、ふ…ぅっ」
熱情の中に告白された喜びも混じって、胸が泣きたくなるくらい甘く高鳴った。
いつまでもこの喜悦に浸っていたかったけれど、名残惜しくも夏見の方から唇が離されていった。
その変わりに今度は熱い瞳が私の心を捕らえる。
「二回戦いくか」
「…え。…えっ!? いや、それは…っあ! やっ…ダメ…ッ、…やあぁっ…!」
・
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・
‐END‐
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