佐伯虎次郎


「俺って、そんなに無駄かなあ」
 バイト3日目。六角中3年の佐伯虎次郎くんは、それこそ無駄にさわやかに、そう言った。
 あ、いけない。佐伯は『無駄』って言葉に悩んでるのに。そっか、皆が無駄に男前とか言ってるの気にしてたんだ。
「佐伯は本当にカッコイイと思うよ」
「ホントに? 無駄に、じゃなくて?」
 男前なのは事実だもん。僕はコクコクと頷いた。
「ありがとう不二っ、俺もう悩まないよ!」
 湯船の中で姫だっこされ、おでこにキスされた。
「さ、佐伯…っ」
 どうして彼は、こうナチュラルに恥ずかしいこと、するかな。
「さてと、悩みも解消したところで、不二に差し入れがあるんだ」
 彼はザバーッと立ち上がり脱衣所からバケツを持って戻ってきた。……っていうか、悩み。あれで解消したんだ。何だか悩んだだけ無駄──おっと、いけな……!?
「佐伯、これ?」
 バケツを覗くと指先ほどの小魚がうじゃうじゃ泳いでいる。
「そう、ドクターフィッシュだよ。フィッシュセラピーって聞いたことない?」
 確かヒトの古い角質や悪い所を食べてくれるんだよね。丈夫だからお湯の中でも生きられるんだっけ。
「最近あちこちの温泉施設でも流行ってるしさ、不二のバイトにピッタリだろ」
「あ、ありがと」
 何かズレてる気もするけど。
「じゃあ、さっそく♪」
「え、あっ…ま、」
 彼はバケツの中身を湯船にぶちまけてくれた。
 無数の魚が一斉に僕の身体に群がってくる。
「う〜〜〜」
 本当は逃げ出したいぐらいだけど、せっかくの彼の厚意を無駄にする訳にはいかない。魚達が肌という肌をツマツマと刺激してくる。何とも言えない感覚に悶えそうになりながらも、僕は必死で耐えていた。
「…んぁ、やっン」
「どうしたんだい不二、エロい声出しちゃって」
「ぁ、さえ、……ぃ」
 助けを求めようと口を開いても喘ぎ声にしかならなくて。呼吸が上手く出来ない僕に彼はあやすようなキスをしてきた。
「ん、ん…」
 いや、キスして欲しいんじゃなくって。しかも無駄に巧いし。
 どうしよう、魚達に突き回されてるのが、彼に愛撫されてるみたいで変な気分。
「……不二、感じてるの? 魚が不二のエッチな所に集まってるよ」
 先走りの粘液が魚達を呼び寄せてしまい、ついには後ろの秘部にまで迫ってきていた。
「やぁンッ、そこだけはヤメ……ぁ!!」
「おいおい駄目だよ。そこは俺の場所なんだから」
 言うが早いか彼は湯船に入ると、無駄に大きなオチンチンを僕のナカへ一気に押し込んできた。
「はぅぅ…ん」
「これで魚は入ってこれないよね♪」

 結論──佐伯は『無駄に男前』なんじゃなくて、男前だけど色々『無駄』なんだと思う。
 彼に悩み相談は無駄……いや無用なのかもしれない。


 END


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