やっと出てきた単語をあそこで濁し、精一杯伝えると、鷹臣に見ろと支持をされる。
立っているとはなんだろうか…意味が解らず、言われるがままに指と指の間からそっと下半身を見てみると、桜介の陰茎は見たことのない形状をしていたのだ。

「!?」
「小せぇけど、ほら、ビンビン」

てらてらとローションで濡れているそこは、鷹臣の言う通り、正しく勃っていた。
先端が上を向き、赤くなって少しだけピクリと上下に跳ねている。下を向いてふにゃりと柔らかいはずのそれが、今は皮を突っ張らせ、全体的に膨張してる感じだ。
こんな状態を勃起というのは知っていたが、自分がなっているのを見るのは初めてで、結構ショックが強い。

「や、やだぁ…」
「恵、気持ちくねぇの?」
「わ、わかんな、です…ひっ、うぅ、怖いです…」
「怖くねぇから泣くなよ。大丈夫だって、気持ちイイことしかしねぇし。痛くないだろ?」
「痛くは、ないです…」
「ずっと痛くねぇから安心しろよ」

こんな状況下で何を安心したら良いのだろうか。得体の知れない熱に浮かされる下半身に、見たこともない自分の陰茎…これだけでも充分怖いのに…
それでも拒むことは出来ないし、逃げられるわけがない。
もし逃げたとしても鷹臣の長い手足ならすぐ桜介を捕まえられるし、動けないように押さえつけることなんて簡単だ。桜介には選択肢がないのだ。捕らえられた雛鳥のように、ピイピイ泣きながらこれから訪れる恐ろしい事に耐えなければならない。

「あ、あぁっ、あ…」

先ほどと同じように、指が上下した。緩く陰茎を摘み、ぬちゅぬちゅと音を立ててゆっくり扱く。
それに対し、桜介は膝を曲げてビクビクと震えた。気持ちいいのだ。

『さっきと違う…なにこれ、むずむずする、なに…』

あの時に似ている−−
初めて夢精した朝、桜介はいやらしい夢を見ていた。
それは女性のものか男性のものかは判らなかったが、スラリとした美しい手が暗闇から何本も伸びてきて、裸の桜介の躰を優しく擽るように撫でてきた夢だ。
桜介はやめて助けてお願いと叫んで暗闇の中を走っていたが、沢山の手は簡単に桜介を捕まえて、まるでからかっているかのようにスルスルと内腿や腰や尻、ペニスに触れてきた。
その感触は人の手ではなく、綿みたいに柔らかくて心地良くて、桜介はいつの間にか蹲ってあーあー喘いでいた気がする。
熱くなった下腹部を重点的に撫でられ、何かが腹の底からせり上がってくるような官能に支配された。はしたなく腰を突き出すと、手はちゃんとその部分に触れてくれる。
幼児にいい子いい子と頭を撫でるような優しい愛撫に、桜介は歓喜していた。そして、朝起きると射精していたのだ。

その時の心地良さと気持ち良さ、そしてむずむずして擽ったくて甘くてもっと触ってほしくなる感覚が、今再び訪れている。

「あっ、んっ、あんっ、先輩…これなんですか…ローションって…」
「ローションは滑り良くするやつだぜ?」
「あんっ、ぁぁっ、それだけですか?…すごく、へんで…ふぁっ!あ!」
「んー、催淫効果あるやつだからか?」
「さい、いん?…あっ!待って!いやぁ!」

大きな手が桜介の意思とは反してすっぽりと陰茎全体を包み込んだ。そこだけ包まれているのに、まるで全身をあたたかく柔らかい肉に包まれているような錯覚になるくらい、強い快感に襲われる。
涙と口端から垂れた涎で汚れる顔に構ってられないくらい、下半身は爆発しそうに熱い。

「なにか、なにか出ちゃ、出ちゃ、ますっ…!」
「もうイキそうか?いいぜ、沢山出せよ」
「や!やだぁ…たすけて…っ」

逃げるように鷹臣の服を掴んで突っ撥ねるが、肩を抱かれているせいで全く動けず、抵抗らしい抵抗も出来ない。心の中で何度も助けてと叫ぶが、躰は官能にぐずぐずになってしまっていて、骨が抜けてしまったように力が入っていなかった。

『こわいっ、やだ。お母さんっ、お母さん!』

得体の知れない気持ち良さといやらしさに溺れていく躰は、まるで自分のものではないかのようだ。簡単に心を裏切っていく。
純粋で、充分に幼く、淫らなこととは無縁に過ごしてきた少年のアイデンティティが、まともに話した事もない男にこうも簡単に崩されていってしまう様は、残酷なくらいに甘美で、煽情的なことを桜介はまだ気付いていない。
鷹臣が今までにないほどに、興奮していることにすら、気付く余裕なんてないのだ。

「やだぁっ、いやぁっ!…あっ!あぁっ…!」
「ヒクヒクしてんな。もう少しか。イケよ」
「あんっ!あっ!も、無理っ…ふぁ!あぁ!」

鷹臣の手が少しだけ強くなった。きゅっと握られ、先端部分を押されて、桜介は我慢出来なくなり、目の前で射精してしまう。

「あん!いやぁっ!」

何かが躰の中をぐるぐると回ったかと思うと、それは勢い良く飛び出し、ヨーグルトのような重たい液体となって大きな手に落ちていく。