熱の条件 | ナノ






早く、一つになりたい。

「アキラくん…」
「桜、先に進んでいい?」
「はい…」

目の前の恋人も思っていることは同じで、言葉と同時に指が下半身へと伸びていた。
頷くと、すぐさま指が後孔付近に触れ、ゆっくりと揉んでくる。

「あっ、ぁ、んあぁ」

確信には触れずに周辺の媚肉を揉まれもどかしさに腰が揺れてしまう。

「情けないけど、俺、加減が判らないんだ。だからしてほしい事があったら遠慮なく言ってほしい。俺は桜の言う通りに動くよ」
「は、はい……ぇ」

ゆっくりと触れられ、そのソフト感が気持ち良く、頭がふわふわする。
このスローな感じが堪らず、官能のままにゆらゆらと腰を揺すったが、ざざざ、とほの暗いどこか怪しい予感が胸の中を走った。
一縷の不安に、桜介の表情が曇る。
アキラは、今なんと言ったのだろうか…?
桜の言う通りに動く…?

傷つけまいとしているのだろう、指の動きは恐る恐ると言った感じで、まるで焦らしているような動きのままだ。
同性を相手にするのが初めてだから、その動きも彼が言うことも解る。解るのだが、それって…

『僕が、全部言わなきゃいけないってこと?』

−カァァァァッ

言わされる…
そんな恥ずかしいことをされてしまう。
恥部の名前を言い、触ってとか舐めてとか自ら伝えるのだ…
無理だ、出来ない。言えない。
そう首を振って嫌がりたいのに、今の桜介にはそれが出来ない。
何か、怪しくぞわぞわとする物に躰が縛られ、抗うことが出来ないからだ。

「ぇ、あ、あきらくん…」
「どうかしたの桜、どうしたらいい?どうやったら、気持ちいいかな?」
『うそ…』

助けを求めようと名を呼ぶが、矢継ぎ早にそんな事を言われてしまい。絶句するしかない。
本当に…本当に言わなければならないのだ。アキラは優しいのに…その穏やかで柔らかい口調のまま、淫猥な意地悪を言ってのける。

「ぁ、ぁぅ、うぅ…」

唇が奮える。濡れていた瞳が更に潤み、甘えるように流れ落ちた。
それをアキラはキスで拭いながら、頬や額、こめかみにもキスを落とす。

「…ぃ、いわなきゃ…だめ、ですか?」
「うん。気持ち良くしたいんだ。…お願い」

有無を言わさなぬアキラの即答に、桜介の陰茎が反応した。絶対に言わされるという事実に…彼の言いなりにされてしまうという事実に、躰が甘い愉悦を覚えたのだ。

「あの……濡れてないと、痛いので……何か、クリームみたいな…ボディクリームとかで…」
「ボディクリームか……ちょっと今は無いんだよね…」
「え……ぁあん!」

突然、指の動きが変わる。
確信には触れずに、周辺をくるくると触っていたのに、突撃後孔そのものをタップしてきたのだ。
まるでひくつくそこを愉しむように悪戯に触られ、桜介は喘ぎ声を抑えることが出来ない。

「あっ、あっ、だめっ、だめぇ…!」
「桜、早くここに挿入りたいんだ。だから、どうしたらいい?」
「ゅび、ゆびで、ゆびぃれて…!」

何処か切羽詰ったような声で訊かれ、素直に答えることしか出来ない。そんな触られ方をされてしまい、眠っていた快楽に再び火が灯る。

「このまま挿れていいの?きっと、傷つけてしまうよ?」
「あんっ、あっ、じゃ、な、なめて、なめてくださ…!」
「どこを?また、おちんちん?」
「違っ…おしり、おしりのあな、舐めてっ!ぺろぺろして…!」
「っ……!」

唆されるままにいやらしいお願いをした。自分が何を言っているのか分からない。思ったまま、してほしいままを口にするしか出来ないのだ。
欲しい欲しいと訴えている後孔が寂しくて寂しくて仕方がない。だから早くその虚を埋めて欲しい。
すると、アキラの端整な顔が醜く歪んだように見えた。それは、吉祥天様が鬼へと変化したかのような邪悪さと醜さで、ほのかに笑っているように感じた。とても下卑たるものでアキラのものとは思えぬ程の恐ろしさだ。しかし、涙でぼやけた視界では、そんな姿が鮮明に判るわけがなく、疑問は一瞬にして霧散されていく。

「いいよ。いっぱい…いっぱいお尻の穴舐めてあげるね。グチュグチュに舐めて、充分に解してあげる。それで早く挿れて、俺ので桜の中、ぐっちゃぐちゃに犯して種付けしてあげるよ…奥の方に、俺のザーメンそそいであげるから…」
「あんっ、あっ、あっ…」

それからは、本当に何も考えられなくなった−−…