熱の条件 | ナノ






犯されてぐちゃぐちゃになっていた白鳥は、清潔に整えられ、きっちりと学ランを着ている。
鐐平も男前モードから、いつものボサボサモードに戻り、白鳥を膝に乗せて抱きしめたまま、部長用のデスクに座り、アキラに「もういいよ」と伝えた。

「どうも」

白鳥へ笑顔で会釈をする。
だが、勿論無視をされた。

『そりゃそーだ』

笑顔を崩さず、あくまでポーカーフェイスで、白鳥の近くへ座り直した。

『可哀想だから、あんま質問するのはやめてやろうかな。顔を確認出来ればいいわけだし』

鐐平の膝に座り、恥ずかしそうに視線をそらす白鳥をじっくりと眺め、もうそれだけで充分過ぎる情報だと確信する。

『白鳥は、桜に似ている』

見た目の雰囲気が、桜介と通じる物があった。
色の白さ、大きな瞳、小さい小鼻、ハーフっぽい彫り…そっくりというわけではないが、桜介と似た部類の美を持っている。

「初めまして、三島アキラです。この前転校してきたんだ。よろしくね」
「はい、三島先輩のことは知ってます…有名ですから」
「そうかい?でも、中野島くんより有名ではないけどなあ」
「………」
『おっと』

軽く睨まれてしまった。
どうやらその話は、鐐平の前ではしたくないらしい。今は鐐平が本命の恋人…というか、自分の御主人様には聞かれたくないのだろう。
だから鐐平に許可をもらい、白鳥と二人きりにしてもらった。

「白鳥くんと、官僚との関係は秘密なのかな?」
「三島先輩、感じ悪いですね。噂で聞くのとは全然違うんですけどッ」

いきなりの牽制。だが、アキラには通じない。

「うん、ごめんね。
で、俺の質問に答えてね」

すんなりと無視し、有無を言わさないと目顔で伝えると、白鳥は唇を尖らせた。

「…はい、秘密ですよ。鐐平さまは騒がれるのが嫌いだし、公表したら僕のファンが煩いんで…」
「じゃあ、君と官僚の関係を内緒にする代わりに、俺がこれからする話も、内密に頼むね」
「そうきたか。分かりました。誰にも言いません…」

白鳥の表情は強ばって硬い。というか、仏頂面で早く出て行ってほしい、とでも言いたげだ。
逆にその方が都合がいい。

「ありがとう。では早速…中野島くんと関係を持ったのはいつ頃かな?」

居住まいを正し、紳士的な態度は崩さずに質問を開始した。

「それ誰から聞いたんですか?秘密だったんですけど」
「白鳥くんの知らない先輩からだよ。今は付き合ってないんだろ?当時のことを少し教えてくれないかな?」

彼の質問に対して、ほぼ答える気はないと言うように適当に流し、どうぞ喋って下さい、と掌を見せる。
拒否権はないと態度で示した。

「…えー、去年の十月後半頃?じゃないですか。試しにラインID訊いたら教えてくれて、それでー」
「その時の様子はどんな感じだったのか、覚えているかい?」
「えー?……えっと、ぼんやりと僕を見てから「別にいいよ」って言ってそんな感じ」
「場所は?」
「中野島先輩の部屋の前です。そっちの方に行く用事あったんで、何となく」
「中野島くんの前に、ストレートな人と付き合っていたときいたよ」
「ああ。そんな人も居ましたねー」

おそらくきっかけは、ノンケが落とせたのだから、直人もいけるんじゃないか?と単純に試しただけなのだろう。

「それからは、中野島くんとはやり取りをしていたのかい?ラインだけでなく、直接会ったりとか、電話をしたりとか」
「暫くはずっとラインだけです。バカみたいにいきなり口説いたりはしません。普通のやり取りしてましたっ」
「普通、というのは?」

白鳥の顔に苛立ちが浮かぶ。
桜介のように大人しい部類なのかと思ったが、結構勝気で女王様気質なようだ。

「無意味にスタンプ送ったりするじゃないですか。絵文字だけとか記号だけとか。授業だるいー、お腹すいたー、先輩は何してるの?とか。そういうのですよ。主に僕からでしたけど、たまに先輩からも送ってくれたりとか」
「そうなんだ。では、付き合い始めたのはいつかな?」
「十一月始まってちょっと経ってからです。その頃は落としに入ってたんで、ラインの内容も違ってきました。僕から好き好き言いまくったり、僕の写メとか要求されたり」
「え!中野島くんが白鳥くんの画像を?」

これには驚いた。淡白そうなのに、普通の恋人同士がするようなことを要求してきたというのか。
あの中野島直人が…