熱の条件 | ナノ






《ははは、分かってるって。今日もメグを思ってオナってたわ》
「……」
《あれ。あれの時。おもちゃハメた写メ。あれサイコーのオカズな。あの時のメグすげー可愛かったよなぁ。イキっぱなし泣きっぱなし》
「………やめてください」
《イキやすいからやり甲斐あんだよ。あの時は俺も張り切り過ぎてたよな。その写メ送ろうか?》
「要りません。先輩、そういうのはやめて下さい」
《メグはオナったりしてんのか?嗣彦いるから出来ないだろ。ちょっとテレフォンセックスとかしてみるか。嗣彦居たら追い出しとけよ》
「いやです、しませんっ…出来ません」
《ハメ撮り写メ送ってやるからそれネタにシコってもいいし。自分の写メオカズにさー》
「いやです…ぼく、本当にいやだったのに…ひっく、ふ…」
《………》
「ひっ、く、ん、ぅっ、うっ…」
《あー…悪かった。ごめん》
「ふっ、うっ、うぅ…」
《ごめん。ごめんって。メグ、愛してるよ。好きだ》
「う、うっ、ひっく」
《ふざけ過ぎた。俺が悪かった。そんな写メもねーし、全部嘘だから。だから泣くなよ。ちょっとからかいたくなっただけなんだよ。メグが好きだから。俺はメグだけだからさ。俺をこんなに夢中にさせンのはメグだけなんだよ》
「も、もう……そういうのは言わないで下さい」
《言わないって。電話で泣かれんのは嫌なんだ》
「先輩は、いつまで僕を好きなんですか…」
《一生だよ》
「僕は…好きにはならないのに…」
《……俺以外を好きになるようにはさせないからな》
「酷い…」
《それくらいお前が好きなんだよ。知ってるだろ》
「でも…」
《夏休み入ったらそっち行くから》
「…僕は実家に帰ります」
《じゃあそれ以外では俺と過ごせ。俺ん家にいろよ》
「……嫌です」
《メグ》
「やだ…」
《頼むから》
「………」
《………》
「もう寝ます…」
《………分かったよ。おやすみ》
「おやすみなさい」


***


アキラside

キュキュ、キュー…キュー、キュイーン
…ザザザッ、ザッ、ザァァァ……
ザ…ザ…ジジ……ジッ…

アキラはヘッドホンから聞こえるそのノイズに顔をしかめながら、チューイングを合わせる。
ダイヤルを慎重に回しながら、ノイズを軽くしていき、焦点を絞った。
時折くる、桜介からのメールへの返信を打ちながら、片手でダイヤルを左右に捻り続ける。

ジジ、ジッ…………
ヴーン…ヴーン

『ん?』

すると、聞きなれた振動音がヘッドホンを通して聞こえた。アキラもよく耳にするその振動音……携帯のバイブレーションだ。暫くすると、アキラのスマートフォンが光り、桜介からのメール着信を伝える。それに返信すると、またヘッドホンからバイブレーションの音が伝わってきた。そして、ボスン、という何かが鈍くぶつかった音…

『ビンゴ』

確信した瞬間、小さくガッツポーズをし、音量を上げる。

アキラくん…
そんな愛らしい声が聞こえた。ザラザラと何か布を擦っているような音までしている。もしかしたら、そこはベッドがあるのかもしれない。

『はあ…桜…』

ピンポーン
そして、呼び鈴の音まで、鮮明にアキラの耳へと届けた。
その後に続く「はい」という愛らしい声まで、きれいに。
あまりにクリアなその音声に、アキラはオルガズムに達したように顔を歪ませて微笑むのであった。