熱の条件 | ナノ






こんな大声を出したのは初めてでもう息切れをしていて苦しいのに、それでも抑えつけられた末に爆発した感情は止められず、唾を飛ばしながら訴え続ける。

「一昨日みたいに、嫌だって言っても怪我をしてもやめずに犯し続けるんですか!僕のことを好きだっていってるけど、そんなの嘘ですよね、ただ、僕を犯して気持ち良くなりたいだ、けっ…」

−ぱん!

だがその訴えは簡単に終焉を迎えられるのだった。
本当に簡単だ。桜介のような小さな体でひ弱な人間なんて、平手打ち一つで黙らせられるのだから。

肉が打たれる音と同時に、ビリビリした痺れる痛みが走って頭の中が真っ白になる。
溢れていた感情や言葉が一気に吹き飛び何も考えられなくなって、ただ、ぶたれたという事実にショックを受けた。

頬を叩かれた勢いのままソファに倒れこみ、痺れている左頬にそって触れる。
もうしないなんて嘘だった。なんだ、この人は本当に自分のことをただの性欲処理の人間としか思ってないんじゃないか。

「はあはあ、メグ…」
「……」


その後は、部屋に来た菱田に手当をしてもらい車で大和まで送ってもらった。
額には湿布、左頬にはガーゼという痛々しい姿の帰宅に、嗣彦は悲鳴を上げながら桜介を抱き締めてどうしたんだと訊いてきたが、嗣彦だってこちらの味方をしておきながら結局は鷹臣側の人間なのだろうと考えると、何も話す気にはなれなかった。
白河先輩に訊いて下さいとしか言えなかったと思う。熱いシャワーを浴びてあのテディベアを抱きながら眠りにつきたかった。

何も考えたくない。アキラに会いたい。

***

嗣彦には休むかと問われたが、一目でもアキラに会いたかったのでそれは断り、代わりに食堂でサンドイッチをテイクアウトしてもらい、それを部屋で食べてから登校した。
部屋から出た瞬間から、周りの視線を感じたが気にはならなかった。何があったのか好き勝手妄想して噂すればいいさ。どうでもいい。入学した頃から、ここの学生が噂好きなのはよく知っているし。
雨空の下、傘をさして登校する彼らはそのさしている傘をずらして自身の前髪を濡らしてでも桜介の顔を確認している。何だよ、そんなに酷い顔をしているのか。

アキラがどう思うのだろうか…

『アキラくん…』

丁度その時、彼からメールが入った。