熱の条件 | ナノ







《いいから教えて。今、どうなっているんだい?》
「ひぃ、ぁ、おしりが、きゅうきゅうしてて、ゆびにすごい吸い付いて、ます…」
《…そうなんだ?固くはない?柔らかいかな》
「わかんな、すこし…」
《ちょっとだけ、指挿れてみよう。何指でほぐしているの?》
「ん、右手のなかゆび、れす…」
《じゃあそのかわいい中指を、ゆっくり挿れて?声は我慢しちゃダメだよ》
「はい……あん!あっ、あぁっ!」

オイルでぬるぬるになっているせいか、するんと指が飲み込まれた。第一関節と第二関節の間のところまで挿れて、きつさを確かめる。
そこは思っていたよりも柔らかく、ぷにぷにとしていた。

『うわぁ、ほんとに挿れちゃった。…自分で、自分の中に…こんななんだ…』

アキラも桜介の中に触れた時はこんな感触がしたのか、と思うと、緊張の中に興奮が入り混じる。

《挿入った?》
「はい、りました…はあはあ、あ、やだ、もっときゅうきゅうしてる…なか、むずむずしちゃって…んっ」
《ん、はぁ、痛くはないんだよね?気持ちいい?》
「いたくないです、ちょっと、きついです…ぁん、まだ、よくわかんな…」
《入口の方はそうかもね。中の方はもっと柔らかいし、気持ちいいはずなんだ。ぐっと奥に挿れた方が楽だと思うよ。指を手前側に曲げる感覚で、挿れてみて…》
「ぁ、んっ、んっ…」

自分の指と、中がズズズ、と動く感覚がする。アキラの指よりも細い指が中を進んでいくのを自分で感じ、その温かさと肉の感触に身震いした。
アキラがここに触れていた事を思い出すと、全身が蕩けるように熱くなって汗をかき、呼吸がより乱れてしまう。

『あきらくん、あきらくぅん…』

支持されたとおりに、指を手前の方に曲げて、引っ掻く感覚で内壁に触れる。
丁度性器の裏側だろうか、そこを押すと、うわん、と下半身をこれでもかと痺れさせる刺激が走り抜けて行った。

「ひん!ひっ、あき、くんっ、いやっ、なに…!?」
《見つけたんだね、桜のイイ所だよ。…ん、ビクビクしちゃうくらい、気持ちいいだろ?》
「うそ、だって、ぼくもうっ…!ぁ、やだ、いやっ、とまんない…!」

指で擦るたびに、性器からぴゅっと透明な液が少量吐き出される。
性感のスイッチとなっているそこに一度触れたらもう止められず、桜介は生理的な涙を流しながら中指をぐちゃぐちゃと動かすしかない。

今まで触れていなかった分、その官能は毒のように甘くて…はしたなく腰を突き上げ、目の前にアキラがいると夢想しながら見せ付けるように指を抜き差しした。

《ん、うん、いいんだよ止まらなくて。桜の好きなようにいじっていいから。ただし、お尻だけでイッてね?おちんちんには触っちゃ駄目だから。それは俺のだから、桜でもダメだよ》
「うんっ、あきらくんのっ、ぼくのおちんち、はあきらくんのものだから…!あんっ、あっ、あきらくんも、シてるの?」
《うん、俺もオナニーしてるよ。桜の声だけで、もうイキそうになってる》
「ふ、うそ、そんな…ん、うれしいっ……あっ、やっ、あん、もう…」

アキラもしているのだと知ると、余計に躰が疼き、切なく指を食む。もっともっとと貪欲に吸い付いて中に引き込み、絶頂へと導いていく。

『ああ、もういっちゃう、いっちゃう…』

何とも言えぬ愉悦と、酷い事をされているわけでもないのに切なく流れる涙と、淫らに濡れる下半身…
こんな愛され方もあるのかと実感しながら、桜介は息を乱し、媚態に満ちた喘ぎ声をアキラへ聞かせ、腰をくねらせた。

「あきらくん、ぼくいっちゃ…!」
《ん、かわいい…お尻だけでイッて。小さくてかわいい指をいっぱい動かして気持ちよくして、沢山精液を出すんだよ?》
「ふぁ、やぁ、あきらくんも…」
《うん、俺も桜のエッチでかわいい声でイクから…はあ、好きだよ。愛してる…俺の部屋に閉じ込めたいくらい、桜が好きで堪らない…っ!》
「あぁん、あ!ぼくも、ぼくもあきらくん大好きぃ…ひんっ!ひっ…!」

本当に彼が目の前にいるような気がした。
全身をアキラに包まれ、愛の言葉を耳元で囁かれ、内壁を愛撫されている感覚になり、桜介は泣きながら射精した。

「あん!あぁぁっ…!」

気持ち良さそうに語尾をとろけさせながら、小さなソコから精液を溢れさせる。
「やぁ、いやぁ、んあっ、あっ!あぁぁ、あぁ〜!」
《っ、さくらっ…》

シーツを蹴るようにして足を痙攣させ、ドクドクと脈打つ後孔を感じた。
イクときそこは、こんなに蠕動するのか、と頭の片隅で感心した。

『きもちぃ、きもちいいよぉ…すごい、せぇしびゅーびゅー出てる…』

これでもかと勃起していた陰茎から出たそれが腹を汚してあたたかく広がっていった。二回目の射精だというのに、量は多く、腹の底から出ていった感じがする。
そして、電話の向こうでぐっと息を詰める彼の感じに、一緒にイッてくれたんだ、と嬉しくなり、肩で息を乱しながら口角を上げた。

《はあ、はあ、はあ…俺も、イッたよ…》
「…はい、分かります…ちゃんといっぱい出してくれた気がしました…」
《ははは、勿論、たくさん出たよ。桜は?》
「は、ぼくも…ん、お腹のうえに、いっぱい…」
《ああ、かわいいな…いっぱい出たんだね。かわいい…大好きだよ》
「ぼくもアキラくんが好きです…でんわ、すごい嬉しかったです」

余韻で動けず、ぐったりと横になって囁き合う。
何度も好きと言い合い、名を呼び合い、離れている距離を埋めるように愛を確かめ合った。


《ごめん桜、そろそろ橋本達が来るから…》
「あ、はい、大丈夫です。ありがとうございました。橋本くん達と楽しんで下さい」
《うん、ありがとう。じゃあまた学校で》
「はい、また明日」

通話を終了し、時計を見ると一時間も経っていなかった。せいぜい四十分程度だ。それしか経っていなかったのに、二時間分は濃厚な時間を過ごしたように思う。

『久しぶりにイッたからかな…』

ティッシュに手を伸ばし、汚れた腹を軽く拭いて捨てた。
オイルで濡れたそこも拭こうとしたが、どうせこの後シャワーを浴びるんだと思い出し、面倒になってティッシュを戻した。

疲れて、あまり動く気になれない。
セックス後特有の、幸福に包まれた疲労感に似ていて、今はゆっくりしたい気分なのだ。
時刻は夕方の五時を過ぎた所だし、嗣彦はまだまだ帰宅しない。

『ちょっと休憩しよう』

ルームメイトが帰宅する前にはシャワーを浴びておこう。
そう決めて、桜介はアキラからの「好きだよ」という声を思い出し、久しぶりの幸せに包まれながら、眠りについた。