∴ 2 友人と書いて丸で囲む。 「でもこの友人組は少ない。俺を友達として心から慕ってくる奴は、正直五名程しかいないからだ。あとは俺がイケメンだから取り入ろうとするような奴ばっか」 「五人は少なくないか?もう少し居そうだがな」 「俺もそう思うけど念のため、ね。 そんで、俺と桜の妄想してるカップリング派の奴も入れる。この人数は…どれくらいか今は分からないな」 カップリング派と書いて丸で囲む。 「カップリング派でも、信用出来そうな奴を主に入れるけどな。そこはテストでもして誰を入れるか選ぶか。 んで、この二つのグループには、俺と桜が交際している事を伝える」 「ほう、随分と思い切るね」 「まあ、慎重にいくけど。主力となるのが、この二グループな。だから、俺に惚れてる泉とかああいう奴らは外すんだよ」 「確かに外した方が得策だ」 その二グループをぐるぐると丸で囲った。 「あと、白河派ではない、桜単体のファンも加える。出来るだけアンチ白河であり、桜のことだけが好きな奴らだ。そうなると一気に人数増えて三島親衛隊としての箔が付くからな。でもこいつらには俺と桜が付き合っている事は伝えない。俺の親衛隊というのはカモフラージュで、桜親衛隊、もしくは桜ファンクラブだと伝える。 今まで桜のファンクラブを作りたかっただろうけど、白河のせいで作れなかった。その鬱憤を俺が晴らさせてやるんだよ」 「どうやるんだ?」 「テキトーな同好会でも作って、そこを桜親衛隊にしてやるよ」 「バレたらどうする?バレない事はないだろう?それが怖くて、皆、そういうのを作らなかったんだ」 「バレたら俺が責任取るよ。代表は俺なんだし、俺に脅されて入ったってことにすればいい」 「それでいいのか?」 「その代わり、俺がピンチの時は助けてもらうけどね〜」 キョトンとする鐐平に、アキラはがしがしと後頭部を掻きながら、で、と続ける。 「この、桜を単体で好きな奴らは下っ端な。実際にはちゃんと機能はしない形だけの兵士って考えで。活動方針やどう桜を白河から離すかとか四天王を潰すか、とか、そんな会議は一部の人間だけでする。さっきの二グループだ。場所は俺の部屋で」 「なるほどね。では、中野島を潰すってやつも親衛隊と会議して決めるのか?」 「それなんだよね〜!」 鐐平に指摘され、アキラはテーブルに項垂れた。 実は、そちらの方は上手くいってなかったりする。 桜介のようなハーフ顔で大人しい人間というのは中々いない。 そういう人を用意して、直人に会うようセッティングさせたらどうにかなると考えていたのだが、そんな甘くないようだ。 「なんだ、上手くいってないのか」 「上手くいってない上にさー、桜が可愛くて可愛くて…なーんかもー幸せ過ぎて桜にばっか時間作っちゃってー」 「うわ、それは惚気か」 「ノロケよノロケ。マージちんこもたないわ。多分その内、俺のちんこぶっ壊れっかも。あ、この前、カメラ一緒に選んでくれてありがとね。バッチリ撮影出来てました」 「……ミッキー、精液出し過ぎると、将来ハゲるらしいぞ」 「はぁぁぁ!?マジかよやめてくれよ!!唯でさえ俺の髪、細くて柔らかいのに!」 そこまで言うと、鐐平は呆れたようにごろんと横になった。 クッションを腹の下に敷き、溜め息を一つついて、スマートフォンを操作する。 彼の犬達とラインでもしてるのだろう。 「君が恵くんとの交際をカミングアウトする時は、その下衆な所は隠した方がいいな」 「勿論。清いお付き合いをしている事にするつもり」 「はあ…恵くん、ミッキーの本性知ったら悲しむぞ?」 「桜の為なら徹底的に隠す。つーか、桜の前だと自然とあのキャラになるから大丈夫なんだわ。なんかそのモードでしか居られないって感じで」 「ふうん」 この友人は全く興味がなさそうだ。半分くらいしか話を聞いていないのだろう。 ラインばかりしているなら、自分も筋トレしていいですか?なんて思いながら、勝手にダンベルを持って上腕二等筋を鍛え始める。 すると、鐐平は近くに転がっていたメンズスタイルに手を伸ばし、パラパラとページを捲り出した。 「中野島ねえ…」なんて言いながら、しげしげと眺めている。 『あれ?』 その姿には……見覚えがあった。 うつ伏せになって、メンズスタイルを読む姿… そう、確か、マサトのファンなの。なんて言っていた気がする…でもアキラは興味なくて、コンビニに行くと言って… 「あああああ!!」 「え?」 思い出した。 やっと思い出した。購入してから抱いていた違和感。 メンズスタイルという字図らに感じていた既視感。 買った時に感じていた何かのビジョンはこれだった。 『そうだ、そうだそうだ!確かにファンだって言ってたぞ!』 −完璧に思い出した。 「大声出して、どうしたんだ」 「官僚、中野島直人、どうにかなるかも」 「はい?」 そうだ、あれは四日間だけの関係だった… 四日間……アキラは人を買っていた。 |