06.
何でも無いことを逐一気にしたってキリが無いし、無意味だとさえ思ってた。
それでも理性より勝るオモイは、後の事なんて考えずに突き動かされる。
06.少しだけ変わる思いと想い (月島)
『つっきー!!つっきー!!』
「何?昼休みくらいゆっくりさせてよ」
『俺、見ちゃったんだよ!!』
返事を求めるんであれば主語述語を完結に述べて欲しい。お腹は満たされ、せっかくの陽気な昼下がりに野郎達の煩い声なんて気分は最低だ。
瞠目する山口はいつもの事だとしてもさ、何で影山と日向まで居る訳?何の集まりなんだよ。
『見ちゃったんだって俺達!』
「だから何を?」
『西谷さんと、花子先輩!!』
「ーーーーー……て、そんなのいつもの事じゃないの」
何を今更。バレー部内で特にあのヒトに甘いのは西谷さんで、そんな西谷さんに我儘放題なあのヒトも今更な話でしょ。
大体、西谷さんだけじゃなくて澤村さんとか菅原さんとか、誰にだって人懐こく寄ってく犬と同じ話し。
『いや今日はなんか、違うんだよ!なあ影山?』
『まあ、特別感はあった気がするな』
『うんうんっ!もうアベックー!!て感じだった!!』
『日向お前アベックとか言うな』
『なんでだよ』
『死語だろ』
『別にいいじゃーん使いたい言葉使って何が悪いんだよ!!』
『だからお前は頭悪ぃんだよバーカ』
『なんだと影や『もう!!!日向と影山の喧嘩は要らないから!!』』
「本当、小学生じゃないんだからボリューム抑えてくれる?」
『あれ、つっきー気にしてないの?』
「だから何を気にする必要があるの?寧ろ騒いでる理由を聞きたいくらいなんだけど」
『な、何て言うんだろ……花子先輩のいつものヤンチャさが無くて、西谷さんも幸せそうな顔で、2人とも見つめ合ってたんだよ!部室で!!』
『俺と日向も部室に行ったのに入っちゃいけねぇ気がして帰ったきたからな』
『マジだから!ボール取りに行くはずだったのにー』
「フーン」
見つめ合うだとか馬鹿らしい。あの人の隣に居れば、一直線にこっちを映すんだから眼を見てモノを言うのは当たり前。逆に、眼を反らしてる時のが何か隠してるか嘘吐いてるかのどっちかでしょ。
それなのに特別感だとか、ヤンチャさが無いとか。あのヒトの存在がそもそも異種で特別だってもんじゃないの?
『つっきー信じてないだろ、本当にーーー、あ』
わちゃわちゃ喚く向こう、窓から見える廊下の景色には騒ぎの元凶である2人組。
教室の中なんて気に止めもしない2人だけの空気は、この距離でも分かるくらいに透き通っていた。
山口の言いたい事が、なんとなく分かった。
「………………」
『つ、つっきー?』
「………………はぁ、」
『あ、ちょ、つっきー!』
なんとなく、面白く無くて。
なんとなく、席を立った。
何で席を立ったのかも、何で2人を追いかけるのかも自分でさえ分からない。
「花子先輩」
『あ!つっきー!』
『おう月島!飯食ったか?』
だけど今思うことはひとつだけ。
「ムカつくんですけど」
『え?』
『お?』
「あれだけギャーギャー騒いでるくせに素通りとか、ムカつく」
僕の事、何処に居ても見つけるって言ったのはそっちでしょ。本当、勝手な事ばっか言って頭に来る。
『あ、そっか!此処つっきーのクラスだよね!』
『月島、不躾にそんな怒んなよ』
「ああ、西谷さん居たんですか、(小さ過ぎて身長差あり過ぎて)見えて無くてすみません」
『んだとコラ月島ー!!』
『えーっと』
「何ですか」
『まさかつっきー、拗ねてるの??』
「は、」
『アタシが無視したと思って、拗ねてるんじゃないの??』
「な、」
『そうなのか月島?何だよお前可愛いとこあんじゃねえか!そうかそうか!月島もやっぱ普通だよなぁ!分かる分かる!』
「カッとなって人を刺してしまう気持ちが分かるくらいマジでうざいですもういいですそれじゃあ」
『は、早まるなよ月島!話なら聞くから、なっ?なっ?』
「とりあえず黙って下さい着いて来ないで下さい早くあっち行って下さい話し掛けないで下さい」
何で僕はこんな無駄な事を言いに来てしまったのか。
後悔と苛立ちだけが頭を駆け巡って気分が悪い。
もうどうでもいいから視界から消えて欲しい、そう思う俺なんてお構い無しに、
『つっきー可愛過ぎ愛してるーっ!!』
なんて叫んでくるから、マジで真底苛ついた。
(つっきー……格好良いな……)
(え、なんで?山口どういう事?なぁ影山どういう意味だよ)
(知るか)
(ほんっとお前等ってバレー以外馬鹿だよな)
((んだと!?))
(今日、部活行きたくない)
(20180202)
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