君を知った、今日 | ナノ


 


 01.



「………………」

『、どないしたん?眉間にシワ寄せてしもて』


春を迎えてひとつ学年が上がってもテニス三昧な日々は今日だって変わらない。愛しい蔵を眺めながらマネージャー業をして、色気の無い謙也を除いて紅一点で扱ってくれる皆にはにかんで。
今日もそんな賑やかに過ごす中、喰わえ煙草で顔を見せたオサムちゃんを蔵が叱ってて、それを見て笑う謙也と、関わりたくないって表情しながらもその輪から外れない光。
それだって日常茶飯な光景だけど今日は何となく口にしてみたくなったんだ。


「…なんか、仲良過ぎる気がする」

『は?』


コート内では煙草なんか吸うな、一通りお説教が終わったらしい蔵がアタシの顔を覗けば途端眼を真ん丸くさせて。それに続くみたく光も謙也もオサムちゃんも瞠若して振り返った。


『名前ちゃん。仲良過ぎるって、誰の話しなん?』

「誰って皆に決まってんじゃん」

『それまさか俺まで含まれてます?』

「当然!蔵と光と謙也とオサムちゃんの話しだもん、4人でラブラブって感じ?」


そう言うと揃って怪訝を浮かべて同じ顔。ほら、やっぱり仲良いからこそなんじゃん?


『な、仲良えっちゅうか同じ部活なんやから普通やろ!変な事言うなや阿呆!』

『ほんますわー俺がこの人等とラブラブって…さっき食べたぜんざい今すぐここで戻せっちゅう事です?』

『はっはっ!名前ちゃんはほんま面白いなぁ!せやけどオサムちゃんがラブラブしたいんは名前ちゃんだけやでぇ?』

『っちゅうかな、名前。俺はオサムちゃんに怒ってて、謙也は面白可笑しく笑いながら財前と傍観してただけやろ?今のやり取りで何処にそんな要素があったんか分からへんで?』

「今っていうか…前から思ってたんだよね、仲良くて良いなって」

『……俺の可愛い可愛い名前ちゃんが男相手でも嫉妬してくれたんなら嬉しいで?彼氏冥利に尽きるっちゅうやつやな。せやけど俺は名前が一番やし、ほんまに仲良えのも名前なんやから羨む必要は無いんちゃう?』

「ううん。蔵の事ちゃんと愛してるよ、だけど勘違いですね!そういうのじゃ無いし」

『ぶっ!勘違いや言われてますわ』

『財前。居残りしたいんやろかその笑いは』


ずっと一緒に居ればこんな関係だって必然と出来上がるものなのかもしれないけど…何て言うのかな。ただの部活の先輩後輩と監督、それだけじゃなくて、思ってる以上に何か……深く繋がってる気がするんだよね。
それが男の友情だって言われたらそれまでだけど。でも男同士の友情って憧れる。


『と、兎に角や。そういう変な話しは終わりにして、名前は俺だけ見ときなさい』

「えー?変ってアタシに失礼なんですけど白石さん!」

『話しは後で聞いたるから。今は練習練習、スコア頼むで?』

「アタシ、アイス食べたい」

『分かった。帰りに買うたるから、約束な?』

「うん!」


小指と小指を絡めて頷くと後ろから『早よ部長なんか飽きたらええのに』なんて光の声が聞こえて、アタシも4人の輪に入れてるのかなって。そう思えば口元が緩んで仕方なかったんだ。

それでも…。
真っ直ぐ前を向いて皆を引っ張って蔵、そんな蔵に冗談言いながらも頭が上がらない様なオサムちゃん、ボケ担当かツッコミ担当なのか分からなくなるけど場を盛り上げてくれる謙也、皆を冷めた眼で見て生意気言うくせに実は義理堅い光。
4人がそういう位置に定着したのはいつ頃だったんだっけ。何となくで巡らせた思考のその答えが、これから待ち受けてるなんて想像出来る筈もなくスコアを開くんだった。


(20110502)


prevnext



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -