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 01.



『名前ー!』

「はいはーい?」

『俺んタオル何処に――』

「謙也のタオルならアタシが持ってるよ、はいドーゾ」

『有難う……、』

「うん?何?」

『あーいや、やっぱりお前は痩せたら可愛いんやろなぁと思って』

「もう!謙也ったら!早くコートに戻らなきゃ蔵に怒られるよ!」


こんな会話は謙也相手じゃなくとも日常茶飯で。アタシは自分で自分が可愛いに値する種類だって分かってるばっかりに、素直に褒められない皆に「まだまだ青いな」って思ってた。
ちょっと一言プラスしなきゃアタシを好きだってアピール出来ないなんて…そっちだって可愛いぜって話しだよ本当に!

だけど可愛い可愛いと信じてたアタシに悲劇が舞い降りたのは高校3年に上がる前の春休み。部活の帰り道に偶々フラッと立ち寄った本屋で、偶々手に取った雑誌を、偶々その場の気分で購入してしまった事がきっかけだった。


「は…………?」


ベッドに転がってクッキーを頬張ってれば雑誌に書かれた文字に怪訝を隠せなくて、左手にあった噛りかけのクッキーは枕へ落ちる。


「…何言ってんの?馬鹿じゃないの?」


最近のモデルさんは可愛いしスタイルも良いし、それは重々承知してたから僻み根性もある訳が無い。だけど……これは無くない?

“私は今でも肥満体なのでダイエットは欠かせませんが最高に太ってたときは51キロで、所謂黒歴史ってやつです”

何なのそれ。この人アタシとそんなに身長違わないよね?なのに肥満体?最高は51キロ?黒歴史?


「…アタシ今、体重って、」


あまり気は進まないけど雑誌に触発されて試しに体重計に乗ってみる。ギシッとあの嫌な音を出した体重計が表示した数字は、


「………………62キロ」


モデルさん曰く黒歴史を遥かに上回った2桁だった。
ってことは何?アタシ肥満なの?謙也や皆が言ってた事は照れ隠しの可愛い発言じゃなくてマジだったって事…?

ちょ、ちょっと待ってよ。アタシ顔はお肉が付かないタイプだけどお腹とか別に………そりゃへっこんでますと迄は言わないけどそんな出てる訳じゃないし、足だって腕だってお尻だって………


「…ヤバイ。お姉のワンピース入んない」


体重計の横にあった洗濯物の中からお姉のワンピースを拝借してみたものの、足を通せば太ももで突っ掛かる。
じゃあアタシ……今まで自分は可愛い可愛いって思ってたけどリアルに思い込み!?超可愛いとは言ってないけど勘違い系なの!?

ショックを隠しきれないままフラフラとベッドに戻って、確認を込めて謙也と蔵と光にメールを打ってみる。アタシ、可愛い?って。


「あ…もうメール返ってきた…」


読みたいけど、読みたくない。そんなメールを順に開けば彼等の本音の世界が広がった。

謙也、
痩せたら。

蔵、
せやなぁ…可愛いんは可愛いんやで?良い意味でも悪い意味でも素直やし、全然動かへん時もあるけど部員の事を考えてくれてるのは分かるしな。俺はそういう名前ん事が好きやねんけど、ただ……。暴飲暴食が気になるとこやなぁ。ほんまに可愛いとは思ってんねんけど。

光、
かーわーいーいー(笑)


「…全部ムカつくけど何気に蔵のメールが一番傷付くんですけど」


そのまま携帯を真っ二つにしてやりたい気持ちを押さえて、この日アタシは人生初めてのダイエットを遣り遂げると決意した。
あいつ等…痩せてから付き合ってくれって言ったって知らないんだからね。自分で言った言葉に責任持って後悔するが良い!


(20110401)

またしてもくだらない話しを初めてしまいました。体重も身長によって、筋肉によって、など色々ありますし一概に〇〇キロは肥満だと言えないので身長は伏せています。お話的には彼女はやや肥満という事にして頂き、温い目で見て下されば幸いです。
万一、気分を害した方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。


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