1秒でも、 | ナノ


 


 01.



好きだよ、君が。
軽々しいと思われたとしてもそれは冗談やなくて、ほんまのほんまに好きってコト。


1秒でも、
timeless.1 好きとスキとすき


『なぁ謙也、名前ちゃん可愛いしマネージャーなって貰ても良えんちゃう?』

『お、俺に振るん?!』

『謙也やってさっきまで可愛い言うてやん何やねん今更』

『そ、そやけどそんなん本人目の前にして言うたらあかんやろ…!』

『うわ、照れてるん?謙也も立派に男の子やねんなぁ?』

『うううっさいで白石!!その言い方も引っ掛かるわ!ま、まぁ、とにかく…宜しく、な…?』


2年前、運動が苦手なアタシでも出来るかななんて希望したテニス部マネージャー。新しい季節、新しく始まる高校という世界で校庭に並ぶ桜が風に揺らされて遊ぶ中、彼は頬っぺたを桜色に染めて精一杯の笑顔をプレゼントしてくれた。
それだけで、その一瞬だけで、アタシは彼を好きだと思った。

それは今だって、進行形で継続中。


『今日も今日とて恋焦がれる』

「、」

『っちゅう感じ?』


歯を見せて悪戯に笑う顔はこっちまで感染りそうになるくらい明るくて煌びやかで。だからってその通り笑っちゃうのは癪だって思うのはアタシも変に意地があると思う。そんなのくだらないのに。


「オサムちゃんこそ、毎日からかうのは止めてくんない?」

『せやけどオサムちゃん寂しいんやん』

「もう!何処まで本気なんだか…」

『いっつも本気や言うてるやろ?オサムちゃんは本気で名前ちゃんが好きやねんから、謙也ばっか見て恋煩いな顔されたら本気で寂しいねんて』


それが例え嘘でも冗談だとしてもスキって言われたなら口は必然的に緩む。キラキラ光りをくれる太陽はオサムちゃんそのものなんじゃないのって、眼を細めて煙草を喰わえる笑顔を見上げた。


『それそれオサムちゃんの好きな顔や』

「好きな顔って、アタシ笑ったら可愛い?」

『せやなぁ、笑ってても笑ってなくても可愛いんとちゃうか?』

「疑問系なの」

『他人はともかくオサムちゃんはそう思っとるでぇ?』

「嬉しーい」


素直に声を出せばクシャクシャと髪を遊ぶ様に撫でてくれる。好きな人以外にどう思われたって関係ないって言うけど女の子だもん、やっぱり嬉しいものは嬉しい。こうも可愛がられると癖になって今日も明日もいつも、悪乗りして言わせたくなる。
そんなアタシはオサムちゃんから見れば子供なの?だけどそうだとしてもオサムちゃんは絶対笑ってくれるから、だから甘えちゃうんだよ。オサムちゃんのせいなんだから。


『名前!』

「、」

『白石がスコア付けろって言うて――、またオサムちゃんに捕まってんのか』


オサムちゃんとはまた違う、ふわふわとした光りを背負って来るのは謙也で、名前を呼ばれだけでもアタシは身体が宙に浮く感覚になるのにオサムちゃんと戯れてるのを見ては一丁前に溜息だとか。


「別に捕まってる訳じゃないけど」

『せやでー謙也?男の嫉妬はみっともないなぁ!』

『し、嫉妬なんかしてへんわ!普通やで普通!』

『の割にしっかり眉間にシワ出来てんねんけど?』

『これは別に…!!も、もう良えからさっさとスコア付けや!白石にドヤされんで!』

「はーい」


呆れた顔を見せて、次はオサムちゃんにからかわれて最後は耳まで真っ赤にして背中を向ける、そんなのも日常茶飯だけど。でもね、謙也が赤くなる度に期待するんだ、アタシが好きなんじゃないかって。


「オサムちゃん」

『うーん?』

「謙也も、アタシと同じ気持ちで居てくれてるのかな…」

『さあなぁ…名前ちゃんの眼に映ったコトが真実やろ?』

「………………」


オサムちゃんはアタシに甘いのに、アタシに意地悪だと思う。
適当に振る舞ってる様な顔してるくせに全てを見渡せる人じゃん、なのに肝心な事は教えてくれない。

本当なら謙也の反応に自惚れだけを感じたいのに今まで2年間躊躇って来たのは、それだけアタシが臆病で、それだけ本気だってこと。


(20100515)


…prev…next



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -