夏の空に君が咲く | ナノ


 


 01.



太陽が眩しい夏の日、俺は君に出逢った。
それは多分、偶然と必然が交わった運命なんやと思う。


夏の空に君が咲く
bloom.1 キラキラひかる


「ん?」


医学部に入って6回目の夏を迎えた今日はいつもより心地良い涼風が髪を揺らしてた。河川敷を歩いてたせいなんかな、なんて分厚い本が幾つも入った鞄を肩に掛けて呑気に歩いてると不意に眼に入ったのは向こうから歩いて来る女の子。
女の子なんやそこら中に居てる訳やしわざわざ気に留める必要も何も無いけど、


「……、どない、したん?」

『、』


思わず声を掛けてしもたんは彼女が、歩きながら涙を落としてたから。勿体ないくらい綺麗に光るソレが、髪の毛やなくて俺の心にある何かを揺らしたんや。


『………………』

「………………」


……とは言うても。
この沈黙は何や…!気になって声掛けて、一応泣き止んだのは良えけど見ず知らずの他人が土手に並んで座って沈黙って!気まずい事この上無いねんけど!
それにあれや、まさかこれってナンパとかそういう風に思われへんか?別にそういうんちゃうのに冷静に考えたら変なナンパと変わらへんやん?
ああああかんやろ不味いやろ…!どないすんねん俺!


『あの、』

「ははい!」

『え?』

「あ、堪忍、ちょうビックリしてん…」


今の今まで沈黙やったからって目下の女の子(パッと見)相手に「はい」は無いやろ…ほんま今日の俺はどうかしとる。何処からともなく『せやからヘタレなんですわー』とか懐かしい声(今でも連絡取るしそうでもないけどやな)聞こえてきそうやわ。


『ご、ごめんなさい』

「ええよ…で、どないしたって?」

『えっと…人を、探してて…』

「人?」

『大事な、人、なんですけど、見付からなくて、だから…』

「、まま待って待って!泣くな泣かんといて!俺そういうんあかんねん!どどない接して良えか分からへん…!」

『ごめんなさ、…』

「せやからもう泣かんといて!」


泣いてるのを見て気になったんは俺やけどこの状況で泣かれると俺が苛めてるみたいやんか!そんなつもり毛頭無いのに女の子って狡いと思う…苦手、やねん、涙って。上手く良え言葉が見付からへん自分に腹立つから。


「た、タオル…」

『ありがとう、ございます』

「う、うん」


太陽の光りを反射して光る川と同じ様に彼女から溢れ落ちるモノもやっぱりキラキラしてて、戸惑いはあっても眼を逸らしたくないって。そう思った途端、厭にドキドキバクバクと煩い心臓に静まれって殴りたくなった。


「兎に角、や。自分はある人を探してて、見付からへんから凹んでたんや、っちゅう事やな?」

『要約するとそうなります…』

「そら残念やけど今日はもう帰り」

『、』

「もう陽が暮れるし女の子が夜ウロウロすんのは危ないんやからあかんで!」

『だけど…』

「……分かった。明日から俺も協力したるから!あ、自分名前は?俺は謙也や」

『名前、です』

「名前、今日は帰るんやで」

『……………』


どうにも歯切れの悪い様子に俺もこれ以上何て言うたら分からへん。強く言い過ぎてまた泣いてしもても適わへんし…
俺やって手伝う言うてるんやから素直に頷いてくれても良えやん――


『アタシ…帰る場所が無い…』


――か………?

今、何て言うた?帰る場所無いって?
なんや、家が無いっちゅうこと?それともあれか夏休みをええ事に家出?家出少女?
ううう嘘やろ…!


『あの、アタシの事は気にしないで下さい、人目付かない様に橋の下で寝るので』


嘘ちゃうん……。
橋の下で寝るって!何を阿呆な事!男なら適当に流せても女の子がそんな台詞言うて良えもんちゃうやろ…!


「ぜっっったいあかんで!!意地張ってないで家に帰りや!!」

『だから家そのものが無くて…』

「ああもう!分かった今日1日だけやからな!俺ん家来たら良えからそんな事言うたらあかん!」

『え、』

「付いてきいや!」

『は、はいっ』


何て事言うてしもたんや俺は。
女の子を拾って帰るとかただのナンパよりタチ悪いっちゅう話しやわ。
せやけどあんな風に言われたら誰やって……。
とりあえず、独り暮らしで良かった。(って、良くないんちゃうん!!)


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謙也くん連載始まりです。
アンケートご協力下さった皆様有難うございました!結果は謙也くんでしたがコメントを残して下さった中からサブキャラを侑士にしたいと思います。

大体のストーリーは既に頭の中で出来上がっていたので、それに関してのご要望はまた次回参考にさせて頂けたらと思いますが、今後シリアス傾向でファンタスティックな展開を目指す予定なので苦手な方はご注意下さいませ。

(20100811)


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