ベタvs | ナノ


 


 10.



言ったもん勝ち。
恋愛だってそうでしょ?


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lb.10 薔薇色最終章


いざ授業が始まると2年生、3年生とペアを組んだらポケットコンピューターにプログラムを入力してそれに伴い走るラジコンを作ろうという授業内容が先生から説明された。
ぶっちゃけラジコンなんぞに興味は無いし、直ぐ隣で口角を上げる財前君を見れば授業なんかクソ食らえって気分なんですけど。
だって、やっぱ格好良いんだもん…!白石君の事が好きって自覚してても目移りしちゃいそうなこの心、アタシどうすれば…!


『………い』

「え?」

『名前先輩、呼ばれてますけど』

「、え!?」


さっきまでニヤニヤと口角を上げた財前君はもう居なくて、怠そうな顔で向けた人差し指の先にはちょっと不機嫌そうな教科担任。
理由は聞かずとも分かるけど、アタシにとっては授業より何より大事な悩みなんだってば!先生の話し聞こえないのも無理無いじゃん?


「えっと…何ですか先生、」

『ハァ…お前達は資料室から車の材料を取って来なさい!』

「は、はい!」


そんな呆れなくても良いのに。
どうせこの後なんか自習の勢いで作業させるんだからさ、材料だって先生が取って来てくれたら済む話しだよね。
乙女は忙しいって言うのによりによって何でアタシ達かなぁなんて資料室へ入るとそこには思った以上の量の段ボールが並べられていた。


「うそ…財前君、これ全部かな…?」

『そうなんちゃいます?』

「うう…ヤル気失せた…」


大きい段ボール4箱って。流石に財前君でも1回で2箱は持てそうに無いし、アタシなんか脂肪はあっても力なんか全然無いし絶対無理。2往復決定して、しかもめちゃくちゃ重いとか信じらんない。
何かもう、段ボール見てるだけで疲労感も溢れて財前君を意識してる事も忘れそうだった、のに、


『ほな、2人で此処でフケます?』

「へ―――」

『俺も面倒な事嫌いやし名前先輩が一緒なら喜んでサボりますけど?』


振り替えれば鼻と鼻が触れちゃいそうなくらいに近い距離で笑ってる財前君が居て。お腹の前では両手とも握られて頭が真っ白になったのも束の間、『実は鍵閉めてたんですって言うたらどないする?』この一言で熱は急上昇するし心臓は痛いぐらい大きく鼓動を繰り返す。

鍵閉めたって、嘘だよね…?
サボるとか、嘘だよね…?
よくよく考えてみれば皆は授業に集中してて誰も居ない、アタシと財前君2人きりの密室で…やややややだやだそんなの男と女がする事なんてひとつしか無くない…!


「ざ、財前く、」

『部長とばっかり仲良くするんも見てて面白ないんですわ』

「そそそんなこと、」

『そんな事無い、っちゅうなら尚更やん。俺と“仲良く”しません?』

「、」


だ、だめだめだめ!ダメったら駄目!
そんな色気もフェロモンもムンムンな眼されたら思わず頷いちゃいたくなる…!まさかアタシがイケメンに弱いって知ってるの?知ってて面白がってるの?
そりゃ財前君だって白石君に劣らない美形だよ、十分に分かってるし分かってるからこうして揺らいじゃいそうになるんだし、だけどアタシ…!


『財前、鍵は開いてたみたいやけど?』

「、え…?」

『……………』

『お前にしては爪が甘かったんやろか?』


ああもうアタシは財前君とにゃんにゃんな関係になっちゃうのね、少しの抵抗はあれど逃げ場の無い状況に白旗を翳しそうになった途端、聞こえて来たのは財前君じゃない別の声。
まさか、そんな…?


『…アンタは警戒心強過ぎ。っちゅうか授業中に何嗅ぎ付けて来てるんです?』

『名前ちゃんの事考えてると何や嫌な予感してん。授業受けてる場合ちゃうかなって』

『阿呆くさ』

『当たりやったから阿呆ちゃうやろ?』


白石君がこんなところに居る訳が無い。だって授業中だもん。アタシが資料室に居るなんて知らない筈だもん。
なのに、何で……。


『名前ちゃん、財前に苛められて怖かったやんな?』

『苛めてないんやけど』

『男は皆狼やから無闇に近付いたらあかんのやで?』

『どっちか言うたら1番は部長や思いますけど』

『分かったなら、俺以外の男と2人きりなんてシチュエーションはもう無しやで?』

「……………」


別に財前君が怖かったんじゃない。寧ろこんな美味しい展開、って喜んでたかもしれない。
でも、白石君が今目の前に居てくれるっていうだけで泣きたくなるのは何でかな。普通なら自分の行動を知り尽くされてるみたいで引いちゃう筈なのに、白石君が言う様にアタシが感じた何かを気付いてくれてたなら幸せだって思っちゃう。
白石君が来てくれて、心の底から喜んでる。


『、名前ちゃん?』

「アタ、シ…白石君、が、好き…です…」

『……うん』

「凄い、好き、です…!」

『うん』

「だから、」

『続きは俺に残しといてくれへんかな』

「、」


哀しくて涙が出る訳じゃなくて、幸せ過ぎて涙が出るなんて初めてだった。
ずっとこの気持ちで居たい、そう素直に思った。けど、


『名前ちゃん、俺と結婚して下さい』

「ぶっ!!」


アタシの口唇に人差し指を当てた白石君は落ちまで素敵過ぎて、生唾を吹き出さずには居られなかった。

同時に後ろで段ボールを担いだ財前君が『阿呆くさ』ってもう1度ぼやいてたのを聞き逃さなかったアタシ。
(白石君!高校生なくせに告白すっ飛ばしてプロポーズとかロマンチストなところも好きです!)


(20100812)
やっぱり無理矢理感は否めませんがとりあえず完結です。
毎度ベタな選択には遠い様なアンケートお付き合い頂いた皆様有難うございました!!拙文ではありますがお話しが書けたのはご協力頂けたからだと感謝いっぱいです(><)
微妙な最終話になってしまいましたが少しでも暇潰しに思って頂けたら幸いです!


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