空に重なる君の涙を、
守りたいと思った
R17
desire.13 17歳、愛を伝う
カフェを出ると空は茜色に染まってて、アタシの眼の赤さも隠してくれるかなって眼を細めた。
昼間みたく真っ白で強い日射しじゃなくてもアタシには眩しくて、何処に居ても見える太陽が、羨ましくなった。
「………………」
光ももしかしたら同じ夕陽を見てるかもしれない。アタシが夕陽になれたら、いつでも光を見れるのに。身体が離れた今は何も分かんない。
「ひかる…」
『何です?』
「え、」
『道端で人の名前口にするとか、あんま良え趣味やとは思わへんけど』
「……………」
何で居るの?無意識に出た声に、返事なんかある訳ないって…。
偶然なの?追い掛けて来てくれたの?期待は綺麗に割れた筈なのに、また新しい風船が膨らんでく。
『1人?』
「あ、うん…」
『へぇ、無事元に収まって浮かれ足で帰ってる、っちゅうとこか』
やっぱり、ただの偶然。期待なんかするもんじゃない。
光は遠いままなんだ。
『部長から聞いた。良かったやん』
「……………」
『俺の役目も今日で終わり、また不細工な顔して悩まん様に今度は捕まえときや?』
光は遠い人で、期待はしちゃ駄目。
だったらわざわざ否定なんてしないで笑う声をそのまま聞き入れようと思った、のに……
『あ、俺との事は忘れて良えから』
「……何で、光が泣くの…?」
『、』
笑ってるのに、何で眼に涙溜めてるの…。
アタシの事、受け入れられないくせに何で?
『眼可笑しいんちゃう?俺が泣く訳「泣いてるよ」』
『、』
「アタシが離れて、泣いてるじゃん…」
光の体温を離したくない、光の手を握ると一粒、冷たい雫石が落ちて来た。
『……ムカつく、』
「うん」
『名前先輩のくせに、めっちゃ腹立つ』
「うん」
『早よ、どっか行けや、阿呆』
「光が好きだから行かない」
『ほんま阿呆な女、』
「知ってるもん…」
繋いだ手を引っ張られると公衆面前なんてお構い無しに包まれて、やっと欲しかった体温が感じられた。
ね、アタシを抱かなかったのはアタシが彼氏を好きだと思ったからでしょ?
光が、アタシの事本当に好きだったからでしょ?抱かないんじゃなくて、抱けなかったんでしょ…?
蔵より彼氏より誰より、アタシを想っててくれたのは光だったんだよね…?
光が泣くのは初めて見たけど、アタシみたいに汚なく泣き喚くんじゃなくて、綺麗な顔で、綺麗な雫石を少しだけ零すだけだった。
愛しいとは思うけど、もう見なくて済む様にアタシは愛を伝えるから。
「光、好き」
□
『うわ、何やめっちゃ眩しいねんけど…!』
『せやな謙也…2人揃ってツルンツルンやな…』
あの後、たっぷり愛を確かめ合った(括弧笑い、括弧閉じる)アタシと光は翌日も勿論上機嫌で。
やっっと本当に好きな人と、本当の愛を手に入れた気がするなぁなんて調子乗った事思ってみたり。
「蔵と謙也にも分けてあげたいなぁこの幸せーっ」
『要らんわ!』
「えー?蔵はそんな事言わないよね?」
『うーん。貰えるなら貰っとこか?』
「じゃああげ『ちょっと。勝手に触らんで下さい』」
『、』
『俺の、なんで』
「―――――」
鬱陶しい、そんな謙也に反して頭を撫でてくれた蔵は『良かったな』って言ってくれてるだけなのに光はそれも気に入らないらしくって。誰もアタシなんか盗る気無いのに、蔵から引き剥がしては番犬みたく威嚇する様な顔。
「光、独占欲強過ぎ」
『名前先輩、うざ過ぎ』
「ちょ、ちょっとそこは“好きやから”くらい言うとこじゃんか!」
『はー、耳が腐って聞こえへん』
「ひどい…!蔵ー、光が意地悪なんだけど!」
『はいはい、よしよし』
『せやから触るな言うてんねん』
『極端な男やな財前は!そんなんやと嫌われんで』
『余計なお世話すわ』
「大丈夫だよ光、アタシ光の事ずっと愛してるから!」
『………俺もやって』
「え?」
『何でもない、不細工な顔せんといて下さい』
「酷いってば!」
彼氏が居て光を好きになった、それが結論として良かったとしても独占欲の元凶になってるんだろうなぁなんて思うと笑いが溢れた。
もう他の男なんて要らないのに。
END.
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完結です。
今日はR17を書こうと書き始めるとちゃっちゃか親指が進んで完結まで書いてしまいました。次はこうなって最後はこれ、とスラスラ浮かぶと自分が楽しくて止まりませんでした。
だからと言って文章はやっぱりやっぱりやっぱり毎度のことながら拙いものでしかありませんが、光っぽいとか共感出来る部分が少しでもあれば嬉しいと思います(><)
R17というタイトルも裏というお話ではなくて、17歳設定の光に置いて、不安定な恋愛を不器用に頑張る、そんな意味合いで受け取って貰えたら良いなぁと…。
ここまでお付き合いして下さりありがとうございました!
(20100423)
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