01.
あほ
汚い字で書かれた文字にはほんま怠いと思うけど、あの日からずっと鞄の内ポケットにはアイツが投げた紙ヒコーキが入ってた。
今日君と冬を迎える
season.1 10センチ。
明日も一緒に学校行こうね、その言葉通り##NAME1##は俺を迎えに来た。
昨日謙也先輩にちゃんと言って上手くいった、そうメールで告げられてから何やかんや言うてこれからは謙也先輩との2人の時間が増えて行くんやろうって思てたのに。
「……………」
『……………』
「近い」
『起きた?』
「せやから近い」
『おはよ、光っ』
相変わらずなアイツは俺のベッドに顎と手を乗せて、顔と顔が僅か10センチ程の距離しか無いのも気にしやんとヘラッと笑った。
今までこういうが無かったかと言われたならそういう訳ちゃうけど、もう少しでキス出来るのに。そんな考えを巡らせてしまう辺り、ほんまは昨日の一件が自分なりに堪えとる証拠なんかもしれへん。
「謙也先輩は?」
『光ん家で待ち合わせしたからもう少ししたら来るんじゃない?』
「来んでええけど」
『またまたぁ!光だって嬉しいくせに』
何で俺が謙也先輩を見て喜ばなあかんねん。寧ろ一生顔合わしたくない、のが正解やわあほ。
『ね、光、早く支度してよ』
「っちゅうかまだ早いやろ…もう少し寝る」
『駄目だよ!今日は朝マックするんだもん』
「は?」
『だから早く起きて支度してー!!』
「、寝起き早々、揺らすな」
朝からマクドとかほんま面倒臭い。早起きして重いメニューを食べたいっちゅうその神経が理解出来ひん。それならギリギリまで寝る方がどんだけ有意義や思ってんねん。
今度は俺に跨って胸ぐらを掴むなりグラグラ揺らしてくる##NAME1##に、どんだけ嫌がらせしてくんねんて頭に来たけど、
『――――――』
「、」
『あ、謙也おはよ』
ガチャンとドアを開けて(勝手に)入って来た謙也先輩が肩に掛けた鞄を大きな音を立てながら落としたもんやから、瞬時に思考回路は組み直された。
腹なんや立ててへん、ようやったわ##NAME1##?
『ざ、財前お前……!』
「##NAME1##、そない俺とイキたいん?」
『うん!行きたい!』
「さっさとシて欲しい?」
『(支度)して欲しい!』
口を開けて顎が外れてしまいそうなってる謙也先輩には爆笑したくなったけどそれは堪えて、俺の腹の上に乗ったままの##NAME1##の腕を引っ張って背中に手を回すと、
「お願い、が聞こえへん」
『光!!おねが『そそそそんなんあっっかーーーんん!!!』』
真っ赤で涙目な謙也先輩に白い眼を向けてやった。
##NAME1##にまで『は?』て言われたその時こそ笑ってやればええ。
謙也先輩、そう簡単に俺が引くと思ったら大間違いですよって。
(20091213)
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