too near | ナノ


 


 01.



好き、愛してる、
違いと言えば何だろうか。


too near
heart.1
It is a gentle desire that want to tell.


『くーらっ、ご飯食べに行こ?』

「うん、一緒に行こか」


昼休み、俺の机に顔を乗せて学食へと促してくる名前の頭を一撫ですると『アタシもアタシも、』って俺の頭にまで腕を伸ばしてくる。

やっぱり男としては女の子を甘やかして甘えられたいもんやし、頭を撫でるにしても撫でてあげたい側やねんけど…名前が満足そうにはにかむんなら、それでええって思える。
言う迄も無く、それだけ彼女の事が好きやった。


「うーん…!おいしー…」

『今日の日替わり美味しそうやもんな』

「美味しそうじゃなくて美味しいんだよ」

『そかそか、良かったな』

「学校はお昼食べる為だけにあるって言っても過言じゃないよね」

『うーん、名前ちゃんはもうちょっと勉強頑張って欲しいねんけど』

「ダメダメ、こんな幸せな時間にそういう話タブーだから!」

『ハハッ、ごめんごめん』


学食に来たら来たで日替わりランチなる生姜焼きを口ん中に詰め込んで、左手をプラプラさせながら拗ねた顔するくせにそれでも食べることは止められへん、何処か幸せオーラを纏う彼女を見ると俺の口も空へ向けて弧を描いた。


「あ、」

『え?』

「ご飯粒」


自分の口元を指してこの辺りって伝えたら、取ってーなんて顎を上に上げて。

なぁ名前ちゃん?
それって俺ん事試しとるん?
どうせ俺の気持ち知ってるくせにそういうん、何されても文句言えへんのとちゃう?


「…………」

『早く早くー』

「…取ったで」


とか、そんな事思ってみても結局は人差し指と親指で掴んで。
勿論熱い熱いスキンシップとしては口で取ったるのも魅力的やけど、重度のスキンシップは名前が困るやろうから…。


『ありがとっ』

「あーん」

『うん?』

「ご飯粒ひとつも食べ物の神様が宿ってんで?」

『あー、そっか』

「はい宜しい」


せやけどコレならええかなって俺の人差し指に付いたご飯粒を敢えて食べさせて。
微かに当たる名前の舌としっかり触れた口唇のせいで自分の指さえ愛しくなる。指先が性感帯や言う話は間違いやなかったらしい。少なくとも俺はめっちゃ感じたし。


『お2人さん、今日も仲ええなぁ?』

『あ、オサムちゃん!』

『オサムちゃんも混ぜてくれな寂しくて死んでまうでー』

「いっつも大袈裟やなオサムちゃんは」

『ちゃうで白石、大袈裟やなくてホンマやもんな、名前?』

『オサムちゃんアタシが大好きだもんねー!』

『おーメチャクチャ愛してんでぇ』


いつも通り、俺と名前が2人で居ると必ずと言って良い程現れるオサムちゃん。
俺と違て素直に思った事を伝えるオサムちゃんは純粋に羨ましい。
“好き”の言葉に対して嬉々に笑う名前を見ると毎度ながら羨む気持ちが生まれるのに、反して憂いもが生まれる俺は軽々しく“愛しとる”とは言えへんかった。


『アタシもオサムちゃん大好きー!ね、蔵は?』

「うん、好きやで?」

『んふふっ、ありがとっ!』

『オサムちゃん1人じゃ満足出来ひんのか?贅沢なやっちゃなぁ』

『だって蔵も好きだもーん、ちょっと待ってメール来た』

「…誰、って聞かんでも決まってんな」

『うん!“陽平ちゃん”』

「そか…」


例え友達としての好きは紡げても、彼女には俺やオサムちゃん以上の特別な存在があるから。

どんなに愛を交わしても俺とオサムちゃんじゃあ、名前の言う彼氏にはなれへんねん。



(20090726)


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