too near | ナノ


 


 15.



変わらない、変わらない
変わらないのは今も昔もこれからも君が好きなこと


too near
heart.15
Let's tie the hand
in two people and minds.


今までふざけ合って『ばか』とか『もう知らない』とか、拗ねた顔で言われたことは何回かあった。
せやけどキライっちゅう3文字だけは一度もいわれたことなくて、彼女からはスキの2文字しか貰ったことが無かった。

それが深い意味を込めて無くても俺には幸せでしかなくてほんまに誇りの様に感銘やと思えてたのに……名前にソレを言わせたのが自分やっちゅうことが悔しくて、歯痒い。もし時間が戻るならやり直しは利く、せやけど戻ったとしても彼氏のあの姿を見たなら俺は…遅かれ早かれ同じ道を辿ってる気がした。

素直な気持ちは言えへんかったけど、名前を大事にしてくれる別の人と幸せになって欲しいから。せやからそれが自分やなくとも、あの男だけは嫌やねん。


「……とは言え、名前が好きなんはそうやしな…」


恋愛の好きとか嫌いとかはコントロール出来るほど簡単ちゃうねん。好きになるのは安易かもしれへんけど…好きになった後は嫌いになりたければもっと深見にハマってしまうもんやし、好きが濃度を高めていくもんや。
現に名前は彼氏しか見えてへんし、第三者にあれやこれや言われるなんや更々ごめんっちゅう感じやからな…俺が何を思ったってしゃーないねん、決めるんは彼女本人やから。


「ハァ…」


そろそろ、1人ウジウジ情けないこと考えてないで外で朝練を続ける部員に片付けと解散を伝えなあかんのに。一向に動かしたくない、動かせへん身体を何とか起こそうとした瞬間ガチャンと部室のドアが開いた。


『あ。もしもし陽平ちゃん?』

「、」

『ちょっとね言いたい事あって』

「……………」


耳に当てた携帯は無情な気さえして、戻って来たまま視線を合わせてくれへん彼女は壁に凭れるなり電話の向こうへ言葉を続けた。

彼氏に弁解して、やり直すっちゅうことやねんな。わざわざ俺の前でそんな事せんでもええのになぁ…。“キライ”のレッテルはそれだけ大きかったんやろう。


『陽平ちゃん、アタシ幸せになりたい』


大丈夫や、もう俺は何も言わへんから…
“ごめん”も“ありがとう”も自分の胸だけにしまっとく。せやから名前は、俺を嫌う気持ちも全部、彼氏への愛情に変えたらええ。


『幸せになりたいから、陽平ちゃんのことは忘れるね』

「―――――」


そう、思たのに。せやのに聞こえてきた言葉は予想に反してて。


『今までありがと。アタシもっと愛してくれる人と一緒になるよ。それだけ言いたかった』

「……………」

『じゃあ…って、勝手に切るとかひっどーい』


パタン、と携帯を2つに畳むと彼女は肩の荷が降りたが如く、スッキリした顔で笑ってた。

何やろ、どういう、事やねん。


『ねぇねぇ蔵、』

「、」

『蔵にも話しあるから、ちょっと来て』


されるがまま、動揺を分かった上で引っ張られた腕は女の子にしては強くて、憂愁は隠せへんのに何を声にすれば良いかも分からんかった。

名前が何をしたいんか、何を伝えたいんか、理解出来ひんままグイグイ引っ張られて、着いた先にはオサムちゃんが帽子を押さえてまた笑ってた。


『お、結局連れて来たんかー?』

『うん!良く考えてみたらオサムちゃんにも話しあったしー?』

『うーん。嬉しい話ししかお断りやでー?』

『アハハッ、自己中じゃんっ』


今さっきまで俺に対して嫌悪感を出してた名前はもう居てへんくて、オサムちゃんと2人楽しそうに笑ういつもの彼女。
大袈裟かもしれへんけど、俺の前でまたそういう顔を見せてくれるんかと思うと…部活とか学校とか、そんなんどうでも良いくらいに感動的やった。


『え、蔵泣いてる?』

「あほ、泣いてへん」

『そうだよね、泣くならこれからだよ?』

「、え?」

『アタシね、蔵とオサムちゃんと生きてくって決めたから!』


両手でピースサインを作った彼女は彼氏について話す時みたいに幸せそうで、可愛くて。


『オサムちゃんから愛してるーって言われたし、蔵には“元彼”に渡さないって言われたし!』

「、せやけど、」

『責任、取ってくれるんでしょ?』

「………………」


それはつまり、俺に名前を幸せにする権利を与えてくれる、そういう事なん…?


『ハッハッ!そういう事なら負けてられへんなぁ!』

『えー?でもオサムちゃんもフラれるんじゃないかって不安で泣いてたんじゃないの?』

『男で泣くんは白石と謙也だけやでー?』

『それも言えてる!』


何や好き勝手言われてるけど突っ込む気になれへんのはきっと名前が好きで、好き過ぎて、嬉しいから。


「名前、」

『蔵さっきはごめんね…』

「あ、いや、それは」

『アタシ本当は嬉しかったから』

「―――――」


ほんまは俺が謝るべきやのに。それすら言わせてくれんと幸せを幾つもくれるとか…あかん子やで?


『だからね、蔵がアタシの為に言ってくれたことずっと保存しとく!』

「、保存?」

『録音されてたよ電話の会話』

「は、それはあかんて!削除してくれへん!」

『えーやだー!』

『こらこらそこ!オサムちゃん置いて楽しくしてたらあかんやろ!』

『オサムちゃん超寂しがり屋じゃんか!』

『せやで、名前ちゃんが恋しいんやからしゃーないわ』

『ふふ、嬉しーい』


どんな会話や。可笑しくて変な事は分かりきってるのに腹が痛くなるくらい楽しい。こっちやってオサムちゃんに譲る気なんや全く無いけど、


『ね、蔵?』

「うん?」

『     』

「……ほんまに?」

『うん!多分ね?』


名前がこっそり、

“いつかはアタシが蔵を追い掛けちゃうかも”

耳打ちしてくれたから今はこのまま三角な関係で我慢しようかと思えた。
せやけどな?


「名前!」

『えー?』

「めっちゃ好きやねんで」

『!』

「せやから、俺の携帯にもクマを付けてくれへんやろか?」


これからはちゃんと彼女に愛を伝えようと思う。もう1人に負けへんくらい。

伝えへんと、一瞬が勿体ないから。近過ぎて見えへん想いとか、そんなん必要無いねん。
近いから伝えたい、すき。



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ごめんなさい意味分からないけど完結です。
簡単に言うと落ちは曖昧にしたくて(ヒロインはずっと彼氏寄りだったのも踏まえて)、その中でも落ちキャラの蔵を優位に立たせたかったっていう訳なんですが…

なんですかね、多分皆様も感じたかと思いますが何故そこで蔵に耳打ちしたのかという点です。言い訳をするならヒロイン視点が無かったから心情が書けなかったとか言いたいのですがやっぱり言い訳ですよね(T×T)結論としては蔵が自分の為に動いてくれた唯一だから、なんですけど本当に訳分からない感じでごめんなさい!!

今回は今まで以上に不完全燃焼というか自分の文章力の無さに泣きたくなりました。だからこうしてぐだぐだ後書きという言い訳を並べてしまってる訳です。
とりあえずお付き合いして下さった皆様には申し訳ない気持ちでいっぱいですが『落ちは白石なんですね』くらいサラッと流して頂けると幸いです…!

次回の連載、その他の連載ではリベンジを兼ねて頑張りたいと思います(><)
アンケートにご協力して下さった皆様、お付き合いして下さった皆様、有難うございました!

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■落ちアンケート結果(01〜14話集計)
・総票数3074
・白石蔵ノ介/1810票
・渡邊オサム/1264票

ご協力・コメント頂き、無事に完結出来た事に感謝いっぱいです。
本当に有難うございました!

(20091121)


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