secret love | ナノ


 


 01.



好きだとか嫌いだとか
友達だとか彼氏彼女だとか
人間て何で皆が“同じ”で“普通”じゃあかんのやろうか……


secret love
st.1 変わらない関係


中学を卒業して渡邊学園へ通い初めてもう3年弱。
卒業を目前にして変わっていく環境と変わらない関係に焦燥感が溢れて、切迫された時間に自分の非力さが溜息となって溢れた。


『あげる』

「、名前、」

『考え事?シワ寄っちゃってるよ』


眉間に人差し指を当てて『跡ついちゃうんだから』と笑う名前に釣られて笑って、渡されたホットココアのプルタブを開ける。


「めっちゃ甘い」

『美味しいじゃん?』

「ん、せやな」


名前から貰ったモノやから本来より甘くて、本来より美味しくなるやろかって。


『俺には無いんか?』

『雅治は飲んでくれないもん』

『名前がくれたんなら飲むぜよ?』

『どうだか』

「残念やったな仁王」


例えば、
1人の女の子を愛した男が2人居ったとして
彼女が愛したのはまた別の男やとしたら…


『取り込み中悪いんやけど名前ちゃーん、ちょっとええか?』

『オサムちゃん!!何々、どうしたの?』

『まぁええからおいでおいで』

『はーい!』

「…………」


そして、
彼女の愛するその男の左手にはプラチナが輝いていて
それでも彼女と“そういう”関係やとしたなら
残された2人の男はどないするんやろうな?


『結局、美味しいとこは全部持っていかれるんじゃな』

「なんや?珍しく弱気やなぁ?」


仁王がそう言いたくなるのも分かる。俺やってその一言に思わず苦笑してしまうんやから。


『…変わらん現実に愛想尽かした、が正解』

「諦める、っちゅうこと?」

『さぁどうじゃろうな』

「どっちにしろ勝負時かもしれへんなぁ…」


俺が名前を好きになって
仁王も名前を好きになって、
名前はオサムちゃんと2乗の禁忌を犯してる。

それでも俺は彼女が好きで出来るものなら自分だけの彼女にしたい。愛しても愛しても叶わへん想いとか、真っ平御免やし、相手が既婚者であるオサムちゃんなら尚更。
このまま彼女を不幸の道へ進ませる気なんや無い。


『白石は勝負に出るんか?』

「…さぁ、どうやろな?」

『お前さんも十分詐欺師要素あるし怖いのう』

「ハハッ、俺は詐欺師ちゃうねんで」

『食えん男じゃ』

「そらお互い様や」


同じ立場で同じ想いをしてたとしても、生憎仁王を応援する気はないし俺は俺で頑張らなあかん。
名前と笑う日がこれからも続く様に、隣に居る意味が今とは変わる様に、

俺は確実に一歩足跡を付けた。


(2009)


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