頭脳明晰、
それは賢いだけやなくて裏を詠める奴に使う言葉
charm.6-1 天才
『うーんんん…』
「どないしたんです?」
部長が職員室行くなりファッション雑誌を片手に唸り出したのは名前先輩。
気持ち、手が震えてる気がするのは気のせいではないと思う。
『…ねぇ、やっぱり浮気って許せないの?』
まさか名前先輩の口からその2文字が出てくるとは思わへんくて、部室で適当に携帯を弄ってた俺と漫画(くれよんしんちゃん)を読んでた謙也先輩は同時に手を止めて名前先輩に視線を変えた。
「えーと、ファッション誌読んでたんちゃうん?」
『うんそうなんだけど…今月は男の本音を聞いちゃった特集なんだよね…』
『何やそれ』
何を読んでそんな動揺を見せるんか、ぶっちゃけ気になって先輩の後ろから本を覗き込むと、
“浮気されたらどうする?”
“別れる93人”“別れない7人”
と書かれてあった。どうやら100人にアンケートを取った集計らしい。
「まぁそんなもんやろな」
『せやなぁ…浮気はちょっと厳しいな』
『厳しいってどういうこと!?何が浮気で何が浮気じゃないの!?』
俺と謙也先輩の胸ぐらを掴む先輩は眼が血走ってて、こんな様子を見ると今までしてきた自分の行動に少しは自覚があるんかって思わされる。
「何、言うても身体の関係持ったらちゃいます?」
『阿呆!心の浮気も許せへんやろ!』
「どっちが阿呆スか謙也先輩…心は浮気やなくて本気やろ」
『あ、せ、せやな…』
『もう!そんなんじゃダメダメ!もっと具体的に言ってよー!!』
何で急にそんな焦りだしたんか、頭を抱えて『違う違う違う違う』てお経みたくぶつぶつ唱える名前先輩がよう分からんけど適当な具体例を挙げてみた。
「ヤったら終わりスねー」
『ヤらなかったら良いの…?』
『き、きき、キス、もあかんやろ…!!』
『じゃあチューしなかったら良いの?』
「人によっては他の男と喋ったり連絡取ったりするんもあかんて言う奴居るし。それにも書いてますやん」
『やっぱそうなの…それも浮気になっちゃうの…!』
「っちゅうか何なんスか急に」
『…………』
浮かんだ問をまんま口にすると、名前先輩は恨めしそうに口をへの字にして俺等2人を睨み付けた。
たまにはニヤニヤしとんやなくてそういう顔もええかもしれへん、そう思ったけど口に出すのは止めといた。(俺は謙也先輩と違て空気読める男やし)
『…あのね、今日ってアタシと蔵が付き合い始めて1年の記念日なんだよね』
「え、」
『はぁ?!あの名前が記念日とか覚えとんか!?うわ、あり得へん!奇跡や、明日は霰が降るで!』
『謙也まじムカつくし』
『す、すまん、言い過ぎた…』
いつもなら遊び心半分、冗談半分で殴り掛かるか違う男(大概俺)に縋ってくるのに、冷めた顔で一言を発した辺り本気で謙也先輩にキレたんやろう。(やっぱりあの人KYや)直ぐに謝るっちゅうことは謙也先輩もさすがに察したらしい。
あんだけ自分に甘い顔してくれとるんやし、それくらい覚えとっても普通やん。ただ部長が朝練の時も何も言うてへんかったら意外ではあったけど。
「それで?記念日と浮気、何の関係があるん?」
『……アタシもちょっと、反省しようかなって、』
「反省?」
『せっかく記念日迎えられた訳だし、普段蔵の事怒らせてばっかだから、嫌がることは止めようかなって…』
『家出とか浮気止めるっちゅうん?』
『う、浮気じゃない!…と思うけど…』
「……………」
名前先輩も少し大人になったんか。ただの思い付きやったとしても部長にとっては最高のプレゼントやと思う。
「せやったら皆の前で決意表明したらええんちゃいます?」
『、決意表明って?』
「先輩が好きー言うてきた男集めて部長だけやって言うたったらどうやっちゅうこと」
『光、ソレ良い…!』
『財前ナイスやな!!』
「任して下さい」
得意気に言うた俺やけど、人の性格なんや徐々に変えれても直ぐに変わる事なんか無い。
他校の変な人等とは絶縁させといて、浮気とか家出したなったら俺んとこ来れば良い、そんな俺の作戦やった。(頭脳勝負ってやつや)
(何ニヤニヤしとんや財前)(は、してないわヘタレ先輩)(へ、ヘタレ言うなって言うてんねん!)(あ、早速皆に電話し始めましたわ)(あー…今日も部活にならへん気すんな)
(20090826)
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