pink++/brother | ナノ


 


 01.



どこにでもあるような普通の家庭の平々凡々なただの女子高生、そんなアタシに転機が訪れるだなんて想像もしてなかった。

ある日突然パパから告白された再婚の2文字。父子家庭でキョーダイも居なかったアタシはずっとパパと2人きりで生きてきて甘えてきた。だからこそ初めは戸惑いも勿論あったけど、パパに好きな人が出来たのならそろそろ自分の幸せも考えて欲しい、その思いが一番で。ママはアタシが2歳の時に亡くなってるから尚更だ。
まだまだアタシは大人とは言えないけど、それなりに自分の事は自分で考えて行動出来る歳にはなってる。再婚相手の朝日奈美和さんだって驚くくらいの秀麗さに加え優しくて、初めて会った時からアタシの事を凄く暖かい眼で見てくれる人だから。
その顔を見て安堵したアタシが反対する理由なんて微塵も無かったんだ。


「うわー、でっかいマンション…」


パパと美和さんの再婚。それは今だって依存は無い。
ただ、美和さんが会社を経営していて裕福な事と、美和さんにも連れ子が居る事と、その二点がちょっっっと未知の世界に感じるだけだ。


「ココが丸々自宅になるんだね…」


聳え立つマンションは外観も立地条件も申し分無い。にも関わらず所有しているのは美和さんで、美和さんのお子さん専用の家だと言う。キョーダイだけが住むのにそんな贅沢な話しがある訳無いと冗談混じりに聞いていたけど美和さんもパパも嘘を言ってる顔じゃなくて。
挙げ句にはキョーダイ11人で住んでると言うから目んたまポロリだ。しかも男の子オンリーだなんて。万国ビックリショーにも程がある。


「仲良く、なれると良いな」


それでも、部屋が余ってるからと勧められるがままに頷いてしまったのは新しい家族に興味があったから。
パパ以外誰も居なかった家族が増える。お兄ちゃんと弟が出来る。
無口って事ではないけど、静かだった我が家がきっと賑やかになる。
それがアタシの心を揺らしたんだ。


「いざ、インターホンを…!」


まだ面識の無い朝日奈家キョーダイの皆がアタシをすんなり受け入れてくれるとは限らないけど…美和さんの血を引いた人達なら大丈夫、そう信じてドキドキバクバク煩い心臓を抱えて人差し指を伸ばした。
その時、


『あっれー?もしかして俺の妹?』

「、」

『“名前”じゃね?』


背中に居たのは人懐っこい笑顔で銀髪を揺らす男の人だった。
アタシを妹だって言ってるって事は…


「お兄ちゃん…?」

『―――、やべ』

「え?」

『最っっ高ーに可愛い!!』

「っ、ぎゃあぁ!!?」

『やっぱ時代は妹だよなー!萌えだよなー!かーいー最高ーマジ大好き!』

「ちょ、え、な、」


一体なに!何事!?
変質者の如くがばりと飛び付かれて頭がついていかない。そんなのお構い無しに頬擦りしてくる彼は最高という言葉通り恍惚な声色で強く強く抱き締める。


『名前、もっ回お兄ちゃんて言って?』


ニコニコニコニコ。
期待に満ちた眼差しとは裏腹に、アタシはとんでもない場所に足を踏み入れようとしているんじゃないかと急に不安になるんだった。
本当に、大丈夫なの?



(20120606)





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