darling | ナノ


 


 00.



今日描く“明日”より
明日を迎えた“今日”は


想像より遥に幸せだった






darling
pulsation.0 プロローグ






「ハァ……」



憂鬱?哀切?悲観?

全部の情感を織り交ぜた俺は何時もに何割かプラスして“どうでもいい”顔をしてるに違いない。
出るモノと言えば声にならない虚無な吐息だけで、それは二酸化炭素として空に流れていく。

それでも変わらない雲の流れにまたひとつ溜息が零れた。



『一殺多生』

「、」

『春は青いね』

「……………」



音もなく現れた声に振り返ると見慣れた顔で面白そうに笑う。



「喩え悪すぎや」

『えー、ピッタリだと思ったのにー』

「何処がやねん…」



一殺多生、確かにひとつの恋に終止符を打った事で報われた想いが2つあった。
せやけど命を懸けるほど大層なもんやないし、あっさり引く事が出来る、そんなもんやったんや。



『光はさ、口悪いし冷たいし、適当に何でもこなしてる風に見えても不器用だし仕方ないと思うよ』

「…冷やかしなら帰って下さい」



容赦なく並べられる論証を前に出されると続く言葉も浮かばへん。悲壮感に鞭打って奈落までも落ちとけとか言いたいん?ホンマ嫌な女。



『でもさ、』

「(何や無視か)」

『光は頑張ったじゃん』

「――…」



嫌な女、ホンマそう思う。
俺が年下やからってガキ扱いして、包まれて頭撫でられたって嬉しくも無いわ。



『光が頑張ったこと、アタシは知ってるもん』



嬉しくないのに…“暖かい”と思う理由が分からへん。



「ゆき、ウザイ」

『ひっどーい!それに“ゆき先輩”でしょー!』

「偶々同じ学校に通ってるだけで世話にも何もなってへんし」

『今お世話してるじゃん』

「お節介言うんやで」



そのお節介に腕を回す俺もどうかしとるけど、より暖まる身体からすれば自然的な情念で。



『じゃあお節介がてら、』

「今度はなん―――……」



『……アタシが、光の気持ち継いであげる』

「…………」



口唇に伝ったのは“合縁奇縁”
ゆきからの愛慕やった。

瞬間的に離れたソレが欲しくて、我慢なんや出来ひん。もう1回、否、何遍も欲しい。



『アタシも本当は――……んっ、』

「もう黙っときや」

『ひ、ひか……んん…』



続く言葉は“光が好き”

全部が全部、言葉にせな伝わらん訳ちゃう。触れるだけで判る事もあるし気付かされる事やってある。

せやから今は黙って
俺を感じて俺を求めとけばええ








今迄の過去は嬉しくも哀しく

せやけどこの時の為やと思ったら俺には相応しい事やった


(もう僕の心は君一色)





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