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 16. (1/3)



あの人と君、君と僕、僕とあの人、


頬笑みで繋がった心ならば流麗でしょうか





impression.16 with your smile





頭が痛い

腕が痛い

背中が痛い

足も腹も顔も全身ズキズキ疼く



嫌や、こんな痛み感じるくらいなら早く川渡ってあっちの世界に行きたい



“けんや”

“謙也、謙也、”



せやけど煩く何度も呼ぶ声のせいで足は前向いて進まへん

煩い、煩いねん



“謙也……”



余計に頭が痛くなってしまいそうな煩いその声は、俺の知ってる声やった

せやけど、段々消えてしまうみたいに弱々しい声は一度も聞いた事が無い。











「……、」

『!!』

「しら、いし…うるさいで…」



何時間眠ってたんやろうか、痛みとは別の気だるさも身体中を襲ってきて、右から白石、名前、財前、俺を囲む皆の顔は揃いも揃って間抜け面やったからこんな時でも笑ってしまいそうやった。



『阿呆っ!第一声に何言うてんねん…』

「…………」



あの白石が眼真っ赤にして鼻声とか…
しかも、顔や腕にはガーゼやらテープやらが貼られてる。なんやねん、ついに左手の包帯だけや足りひんなったんか?


……ああ、そっか。

あの時白石と名前が厭な話してて、納得出来ひんくて…俺が割り込んだら白石が軽トラックに撥ねられそうになってん。せっかく過去に戻ったのに名前の次は白石かって、そんなん嫌やって、夢中で飛び込んだんやったなぁ。

ピーピーとけたたましく鳴る機械音と見慣れた様で見慣れへん天井は病院っちゅう事?傷だらけやけど、無事やったんなら良かったわ、白石?



『心配させんな、謙也の阿呆っ…』

「ははは、かんにん、」

『謙也…痛い、よね…?』

「…ん、めっちゃ、いたい、」



俺に比べたら格段小さい手で包まれた右手から名前の体温とか、流さんでええ涙まで伝ってきて俺ってまだ生きてるんやなぁって思った。



「しらいし…?」

『なんや、』

「名前んこと、すきやんな…?」

『、今そんな話してる場合ちゃうねん!』

「ちゃう、いま、ひつようなはなしや」

『謙、也…』

『……………』



寧ろ今しか、話す時無いやろうから。
言いたい事は言わせて貰うで?



「名前とわかれたら、ゆるさへん」

『せやけど謙也は、』

「おれはええねん…」

『何格好付けてんねん!名前やって謙也の事が好きやねんで!』

「名前にちゃんときいたん?」

『、』

「名前は、しらいしがすきやろ?」

『……………』



静かに首を上下に揺らす名前を見て最高に幸せを感じたのは何でやろうか。

事故に遭う前、白石が『名前は俺ん事が好きやった』て聞かされて一瞬の間に戸惑いながらも歓喜が溢れたのに、やっぱり納得出来ひんくて。
俺が知っとる名前は白石の隣で笑う女やったから、そうやないとあかんねんな…?



「しらいしも、すきなくせにえんりょしたらあかんで…」

『けん、や、』

「きもちだけでじゅうぶん、やから…名前も、ありがとう」



俺、ちゃんと笑えてる?

なんや顔が痛くて引きつってしまう感覚すんねんけど、ホンマに感謝してるんやで?



『謙也、アタシ、謙也の事好きだったよ…だけどね今は蔵が好きで、謙也の事も好きだけど友達として一番大好き、』

「うん、ありがとう…」



いつ、どれだけ短い間やったんか分からへんけど。
こんな情けない俺の事想ってくれてた時間があったこと、俺の誇りやねん。でも、友達として一番好きやって言うてくれた事の方が泣きたくなるくらい嬉しいねん。
結局過去に戻っても、悩んでた事とかあったんかもしれへんのに何もしてやれへんで…それでも一番やって言うてくれてめっちゃ幸せや。


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