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 15.



離れてもきっと


君は僕の特別





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「別れよ」

『、え?』

「別れて欲しい、て言うたんや」



大降りやった雨も嘘みたいに晴れ渡った今日、朝日を浴びた名前は眉を寄せながら眼を丸くして俺を見てた。
そんな顔されても俺は苦笑しか出来ひんくて、彼女の頭に掌を乗せた。


昨日、不自然過ぎる俺の態度をやっぱり気付いたらしく『何かあった?』と返事が来た。
まだ意向が定まりきってなかった俺は“妹が倒れたって電話あって焦ってたんや、堪忍”適当な言い訳を並べて。

ビックリしちゃったけど大丈夫?
俺の話を信じてる名前の一文に切なくなった。何で、嘘吐かなあかんの?何で、名前を騙すん?
せやけどそんな事今更思てみたって俺の嘘はずっと前から始まってんねん。名前に見せてきた自分は半分が偽りや。


結局、嘘を十重二十重して偽りの自分を好きになって貰たって…

消えへんのは不安と罪悪感だけやっちゅうこと。



『く、蔵、何言ってんの…?』

「聞こえへんかったとは言わんやろ?」

『冗談、だよね?』

「本気やで?」



雨の名残を背負った葉が日射しに反射してキラキラ光るのに、こんな綺麗な世界の中では俺の心はどす黒い汚いモノやと主張されてる気分やった。


名前、好きや。


ホンマに、大好きやった。


ううん、今もめっちゃ愛してる。


せやけどな?
もう、終わりにしたるよ。
名前が謙也ん事忘れきらんのは俺が役不足でもあったんや。

譲りたくない、離したくない、離れたくない。
出来る事ならずっと、これからもずっと一緒に笑ってたかった。それが俺のホンマの気持ち。



『や、やだよ、嘘だって言ってよ…』

「ごめんな、それは言えへん」

『く、ら、』

「ほな俺、先に行『ちょお待てや白石っ!!』」

「……謙也?」



汚れてしもた手じゃ涙を拭ってやることも抱き締めてやることも出来ひん。
振り返って抱き締めて、もう絶対離さへんて、言いたい言葉を飲み込んだら主役の登場や。
後は謙也に任せたらええねんな?



『白石!分かる様に説明しいや!』

「俺には謙也の言うてる意味が分からへんのやけど?」

『そんな屁理屈要らへんねん!お前が名前ん事泣かせてどないすんねん!!』



謙也も、ホンマに阿呆やと思う。
俺はお前の事裏切った男やねんで?何でそない必死になってんねん…ここまで来ると笑えるわ…



「謙也、昨日楽しかった?」

『、は?』

『蔵…?』

「謙也は名前が好きやねんからなぁ、2人きりで過ごせて楽しかったやろ?」

『え……?謙也が、アタシを…?』

『な、な、何言うてんねん!!こんな時に冗談言うとる場合ちゃうやろ!』



なぁ謙也?
今の今まで負けん気強かった俺が身を引く言うてるんや。意地張ってどないするん?



「名前も謙也が好きやったしな、2人が付き合うたらええんちゃう?」

『……………』

『…どういう事や……何、言うてんのか、分からへんのやけど…』

「ハハッ、“遊び”は終わりっちゅうこと」

『―――――、っ…』



ごめんな、名前

ごめんな、謙也



始めからこうするべきやったんや
現実認めたくなくて遠回りばっかりしてしもたけど
やっと分かったから

悔しいねん、悔しいねんけど
これが本来在るべき場所やった



『し、白石っっ!!!』

「…もう話す事なんや――――」





『白石ぃぃぃぃいい!!!』






謙也の声に軽く振り返ると、急に世界はスローモーションに変わって。コマ送りでゆっくり時間が流れてた。

それでも俺は身動きが取れへんくて耳障りなブレーキ音を聞きながら、何かをハッキリと視界に映した。

薄れていく意識の中で見たものは名前でも無く謙也でもなく、どういうタイミングなんか、包帯が解けて久しぶりに解放された謙也の腕。


それは、聞いてた話とは思えへんくらい綺麗な肌色やった。


(20090407)



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