24. (1/2)
昨日も今日も明日もずっと
君の吐息を忘れない
fiction.24 Let's sing love.
新聞に挟まってた反省文。あれは“ラブレター”そのものやった。
「“さよなら”とか柄ちゃうねんけどなぁ…」
送信メールを見ては失笑して“後悔”の2文字が頭に浮かぶ。
ホンマは別れたくなくて、このまま鎖でも何でも付けて綴じ込めておきたかった。何を言うてみたって人間には“欲”がある。幾つ年を重ね様が俺にも呆れるくらいどうしようもない独占欲があったんや。
せやけど、抑圧出来たんは…
「財前のお陰やで…」
決め手は反省文やったけど、アイツが煙草を吸ったのが反則やった。無茶ばっかりで不器用な男やけど憎めへんのや…教師を始めてこない感動するんは最初で最後ちゃうかなぁって、そう思た。
「、」
そんな中、自宅前にある喫茶に身を潜めてた俺を窓越しに横切ったのは名前。
懸命に前を見て走って行く姿を確認するなりもう一度溢す。
「“サヨナラ。頑張れ。”」
誰も居てへん部屋に戻った俺はアイツが残して行った温もりを名残惜しく感じながら枕に顔を沈めた……
□ □ □
苦かった煙草も無くなってしまえば寂しく感じる。
たかが1箱しか口にしてないのに、もうハマってしまったっちゅう事なんか…それとも、何処かで諦めきれへん心が残っとるって事なんか。
静寂に包まれた部屋の中で物憂げに溜息だけが響いた。
――ピンポーン
溜息に続いて響いたインターホンに、休日は流石に担任が来たりはせんやろうと玄関へ向かう。オサムちゃんやって名前先輩と一緒やしあり得へん。大方宅急便か何かと思って判子片手に玄関を開けた。
「はい」
『っひかる!』
「、――――」
そこに居ったんは宅急便の業者やなくて。
一度乃至、二度目があるわけない。そうは思ったけど、部屋と外の温度差を中和させる様に吹き込んでくる風と一緒に映ったのは名前先輩やった。
「な、んで…居てるんですか…」
オサムちゃんと一緒やったはずやろ?
俺は先輩を突き放したはずやろ?
せやのに何で懲りもせず来たんですか…?
『あ、あのね、アタシ…オサムちゃんが好きなの』
「…………」
そんな事、わざわざ言わんでも分かっとる。まさかソレを言いに来たんですか?
先輩、そない改まって言われると分かってても結構キツイんやで。
「…知ってますから」
『ち、違うの!ちゃんと聞いて光、』
「何です?」
オサムちゃんが好きで、オサムちゃんも名前先輩が好きで、2人で一刻千金。それでええんちゃいますか?
俺ももう無理強いするつもりも無いんやから。先輩は知らんやろうけど、これでも応援する気になってるんですよ?
『オサムちゃんがね、好きなんだけど…』
「…だけど?」
『ひ、光が好きなの…』
「……は?」
『分かんないけど光が好きなの!』
告げられた言葉は突発的で、余りにも理不尽やのに。
“光が好き”
それだけで一気呵成として捕えてしまう。
『アタシだって、今更って思うけど…でも光の反省文見たら、光に会いたいって…』
「…読んだんスか?」
『勝手にごめん…でも、』
「オサムちゃんは?」
『え?』
「オサムちゃんは何て言うてた?」
『えっと…オサムちゃんは居なかったんだけど…“頑張れ”って、』
“サヨナラ”された
それを聞いた俺は名前先輩の腕を引っ張った。
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