affection | ナノ


 


 affair.19 (1/2)



もし、あの時擦れ違っていても


君を愛することは変わらない運命だったんだと…





affair.19 destiny






突然現れた僕に、白石は曇った顔をして瞬きをもしなかった。



「やぁ」

『な、んで、不二が此処に?』



僕とは無関係の四天宝寺のテニスコートに居る事が不思議で堪らない、みたいで。

僕だって“四天宝寺”はあんまり善い思い出があるわけじゃない。出来ることならば自ら来るなんて避けたかった。

だけど、
“同じ相手に二度負けない”
その言葉を真実に変える為ならそんな戯れ言を浮かべてるわけにはいかないから。



「白石、勝負しようか?」

『勝負…?』

「僕は一度君に負けたけど…もう、譲る気はないから」

『試合、するっちゅう事?』

「そうだよ、答えを待つだけだけどね」

『え……?』

「名前、」

『…………』



気まずそうに僕の背中から顔を出せば、白石はまた百面相を繰り広げる。

本当は会わせたくない。
本当は知らないフリを突き通したかった。

だけど、



『久しぶりじゃないのに、蔵に会うの久しぶりな気がする』

『うん…』



名前が寒明けが来たみたいに笑うから。白石の前で、今度こそハッキリさせたかったんだ。







“僕と付き合って下さい”

あの後、名前は困った様に軽く笑って言葉を濁らせた。



「名前、迷ってる?」

『え、や、その…』

「初めて聞いた話もあるし、白石の事…気になってるんでしょう?」

『…………』



ただ申し訳無さそうに顔を歪めるもんだから、僕まで感化されて。
ごめんね、と彼女を抱き寄せた。



「誤解させて傷付けてしまったけど、僕は本当に名前が好きなんだ」

『…うん』

「これが僕の心情だから…名前も自分の気持ち、嘘吐かなくていいんだよ?」

『ち、違、アタシはちゃんと周助が、「名前、」』

『、』

「続きは場所を変えてからにしようか?」

『周助…』



この時、名前から伝わってきた“ドクドク”と尋常で無く速い心音に、僕の心音をも重ねた。


今、
此処に居る君も
此処に居る僕も

“運命”なんだと信じてしまうくらい

僕は愛という病に侵されてるんだ



これから決める君と僕の未来だって

間違いなく神様が決めた運命なんだと思う



だからどうか、
君との未来が有りますように

願いを掌に託して強く強く抱き締めた。






  □  □  □





久しぶり

その言葉の意味を理解するのは容易かった。


それほど、俺は名前といつも一緒やったっちゅう事やから。

最後に名前と話したのは昨日やけど数時間しか経ってへんのに。それだけでも長い長い月日を経た様なそんな感覚。

最後に名前を見たのは1時間程前やのに、笑う彼女を愛しいと思ったのは久しぶりな気がした。



不二と一緒に現れたのに、嫉妬以上の感情が沸き上がる。

“恋しい”

やっぱり俺…
どうしようも無いくらい、お前が好きやで。



「今日は、よぉ避けてくれたなぁ?」

『違うもん、避けたんじゃないもん!』

「フーン?俺が嫌でしゃーなかったくせに」

『やっだ!被害妄想強すぎー!』



不二が言うた『勝負』の事を忘れて、ショックやった気持ちも忘れたフリして名前の頭を弄ると、名前は不二に会う前の顔やった。

それがめっちゃ嬉しくて、幸せで、感動的とも言える様な。



「被害妄想ちゃうわ」

『もうもう怒んないでよー!格好良い蔵が台無しよー?』

「可愛い名前ちゃんは今日は可愛く見えへんなぁ?」

『何でそんな事言うの!』



冗談言うて、名前が俺に拗ねたみたいに飛び付いてきて。
そうやこの感覚…この時間が大好きやってん。

なぁ、俺が“友達”を貫いたなら、ずっとこうしてられる?


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