affection | ナノ


 


 affair.12



季節が全てを連れ去った


君自身も、君の心も





affair.12 It falls and falls.






『ん…や、やだ離して!』

「…………」



いつまでも触れた唇を離さない僕に痺れを切らしたのか、名前は力一杯僕を押し退けた。



『周助、なんで…』

「…なんで?僕達付き合ってるじゃない」

『そうだけど…』

「好きな以上、キスしたいと思うのは自然な事でしょう?」

『…………』



触れたいし近づきたい。僕だけの彼女にしたい。それは当然なんだ。



『でも、こんな急に…』

「急じゃないよ」

『、』

「僕はこの半年間ずっと名前だけを考えて生きてたんだ。ううん、高校の時からずっと」



どれだけ僕が我慢してきたと思ってるの?
僕には名前しか居ないんだ。分かるでしょう?全て捨てて来た僕の気持ち。



『アタシは、』

「…僕より、白石の方が好き?」

『!』

「そんなわけないよね…?」

『…………』



名前は黒い瞳を左右に揺らしながら一筋零した。



『アタシは、周助が、好きだよ…』

「うん…」

『蔵なんか好きじゃない…』

「うん」



言い切った瞬間、一筋どころかボロボロ溢れる涙は止まりそうになかった。



『でもごめん、今日は帰る…』

「送るよ?」

『いらない、』

「…………」



走って行く背中は苦しそうで震えてて。



「どうして泣くの?」



僕の声は届かない。


僕が好きならどうして泣くの?
白石が好きじゃないなら何で苦しそうな顔するの?



「名前は、僕が好きなんでしょう…?」



伝染でもしたかのように僕の眼からも生温いモノが落ちていく。

彼女が手に入ればそれでいいと思ってたんだ。今僕に気持ちが向いて無かったとしても一緒に居ればあの頃の感情が蘇るはずだからって。

でも一緒に居れば居るほど僕の知らない彼女が沢山居て、僕の知らない誰かと笑ってて、僕の知らない彼女の生活がある事、それが辛かった。
こんなに哀しい事だなんて思いもしなかった。

青学に居た頃は毎日が楽しくて、名前が居て皆が居て、それだけで幸せだったのに。
もうあの頃の僕達には戻れないんだろうか。



「それでも、名前が好きだ…」



初めて彼女に触れた唇は塩辛くて、夢に見るようなロマンチックなものとはかけ離れていた。



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