take.01
俺が毎日通う理由はひとつしか無かってん。
君が居る、ただそれだけ。
明日春が来たら
take.1 僕と君とアイツ
昨日も今日も明日も、俺はあのコンビニに通うんや。
それが俺の春やから。
「あー…どないしよ…」
PM９時。
俺はコンビニの前に立ってた。
時折吹く風がめっちゃ寒くて、マフラーに顔を埋めたり手に息をかけたり。
一瞬暖かくなるけど、やっぱりほんの一瞬だけで寒いには変わり無かった。
せやけど、心臓だけはバクバク言うてる。
あり得へんくらいバクバク煩くて胸の辺りだけが妙に熱い。ホンマどないしよ、どないしよ、ってリピートしてて頭がパンクしそうやった。
「だ、だだ大丈夫や。ただ、好きやって言うだけやねん…！」
ドキドキの理由、それは、今から俺は告白するから。
初めて彼女に会うたんは１ヶ月前。
引退してからも毎日部活に通ってた俺が何気なく寄ったコンビニ。そこでレジしてたのが彼女やった。
初めて彼女を見た時は心臓止まりそうなくらい衝撃的で、サラサラの髪、大きい眼、めちゃくちゃ可愛え声に釘付けになってしもたんや。
あの時、練乳アイスとロイヤルミルクティー買った事に後悔したんや。ブラックコーヒーとかエチケットガムとか、もっと大人な物買えば良かったって。っちゅうかエチケットガムって大人な物か分からへんけど。
まぁそれから彼女に会いたくて毎日毎日通っててんけど、然り気なく目ざとい白石に毎日コンビニ通ってる事バレてしもてん。
せやから告白せぇって乗せられて今に至るんやけど……
でも俺、生まれてこの方告白なんやしたことないし、ホンマどないしてええか分からへんくて。
って、出て来てしもた！！
悩んどる場合ちゃうわ！声掛けるんや謙也！お前なら出来る……！
「……………」
声を掛けるタイミングが掴めへんかった俺に気付く事無く俺の前を通ってった彼女。
アカン…！行ってしもたやん！
何やってんねん俺！
直ぐ様彼女を追い掛けた。
せ、せやけどこれからどないしたらええねん……
余計話掛けにくいねんけど！
とりあえず彼女の後ろを歩きながら考える俺。
暫くすると、彼女は軽く早歩きになった。
な、なんや急いでるん？
待って待って、俺の話聞いて…！！
足早に彼女が交差点を曲がる瞬間、俺は彼女の腕を掴んだ。
「す、すいません！俺の話、」
『何やってんねん変態ストーカーが』
「え？っっ、い゛！？」
俺が腕を掴んで声を掛けたら、突如男の声がして右ストレート。
構える暇すら無かった俺は２メートルくらい飛んでった。
「い、痛…！！な、何すんねん！！」
『そらこっちの台詞や。こそこそ付けて来てストーカーしてんとちゃうど。警察呼んだろか』
「だ、誰がストーカーや失礼な！！」
後を追い掛けたんは確かやけどストーカーなんかしてへん！
俺は無実や！！
……え、ストーカーになる？
『失礼もクソもあるか……って、もしかして謙也先輩？』
殴られた頬っぺたを撫でながらストーカー行為やったんかどうか悩んでると、謙也先輩、とか聞こえてきた。
めっちゃ聞き覚えある声に、男の顔を見ると、
「ざ、財前……？！」
ジャージ姿のままの財前やった。
彼女は財前の後ろに隠れてて、２人が知り合いなんは一目瞭然。
財前の、知り合い……？
『謙也先輩、ストーカーする趣味なんやあったんですか』
「無いわボケ！俺はその子に用事があって、」
『、コイツに？』
『あ！もしかして、いつもコンビニに通ってくれてる…』
「せや！忍足謙也です！」
財前の後ろから顔をひょっこり出す彼女は俺の事覚えててくれたんや……！！
っちゅうかやっぱり可愛え…！
ニヤニヤしてる俺やけど、そんな俺に財前は、
『俺の女に何か用あるんです？』
そう言うた。
お、俺の女って……！まさか財前の彼女…！？
う、嘘やん嘘やん嘘やん……
俺告白する前に失恋なん？そんなん嫌や……！！
そう葛藤してると、
『いつからアタシが光の女になったのよ。ただの幼なじみでしょー！』
『うっさいわ。黙っとけばええのに』
「、幼なじみ…？」
『うん！光の幼なじみで名前って言います』
「名前、ちゃん…」
彼女ちゃうって否定してくれる名前ちゃんが天使みたいに見えた。
ああ、良かった……！
神様は居てんねんな！そう思てたのに、何や妙に突き刺さる視線を感じてそっちを見ると、
「…………」
めっちゃ目を細めてごっつ睨んでくる財前。
も、もしかして、財前って名前ちゃんが好きなん……？
『謙也先輩、殴ってしもて堪忍な』
「…あ、いや、ええで……」
笑顔の財前なはずやのに、眼が笑てなくて怖かった。
俺に財前に名前ちゃん。ああ、これからめっちゃ嫌な予感するんやけど………！！！
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