take.14
君の傍に居る事が
僕の使命だと思ってた
だけど君の気持ちは何処にあるんだろうか
take.14 紙ヒコーキの着地点
教室に入るなり机に肘を付いて瞼を下げる。
授業なんか真面目に聞く気にもなれへん。せやからって屋上でサボるとか、このクソ寒い時に変態じゃあるまいし。
部室でも良いけど今更暖かい教室から出る気にもなれへんかった俺は単位も取れるし、くらいの気持ちで授業を寝ながら受けた。
せやけど、夢の中へ入ったって5分くらいで目が覚める。教師の無駄にでかい声のせいやったりするんやけど更に苛々は募って。
それもこれも名前のせいや、アイツが謙也先輩ばっかり向いてるせいや。
お前の隣は俺、そうやったはずやのに。あの時やって……
“た、助けてくれたの…?”
“ちゃうわ、アイツ等がムカついただけや”
“でも、有難う”
“…しゃーないな”
“え?”
“名前が泣かされた時は俺がやり返したる。俺がお前の味方になったるから”
“…本当?”
“お前が泣き虫やから仕方なく、や!”
“有難う!アタシずっと光の傍に居る!”
「…………」
俺もあないな事よぉ言うたわって思うけど。ガキながらもアイツの事守ったらなアカンねやって変な正義心あって…あの頃から好きやってんなぁ…
うわ、何浸ってんねん、俺キショいわ。
…とか、そうこうしてる間にチャイムが鳴って、教師が教室から出て行くと『財前居る?』って俺を呼ぶ隣のクラスの奴が視界に入った。
アイツ…名前何やっけ。まぁええわ、言われるがまま教室の入り口に行った。
「なん?眠いんやけど」
『相変わらずマイペースやんな財前』
「(お前に言われる筋合いないわ)」
『これ校舎の下落ちてたで。体育の帰り拾ってんけど、お前のやろ?』
「はぁ?」
渡されたのは紙ヒコーキ。
何でこんなもんが俺のやったりすんねん…阿呆かコイツ。俺が紙ヒコーキ作って遊ぶ様に見えるんか?あり得へん。
『よぉ見てみ、名前書いてるやん』
「名前?……、」
“アホ光”
羽根に書かれたソレ。こないな事するんはアイツしか居てへん。
俺はソレを握り締めて屋上へ駆け上がった。
「…………」
屋上に着くと案の定名前は呆けた顔してフェンスから外見てて。散らばった大量の紙ヒコーキに溜息吐きながら声を掛けた。
「阿呆、何やってんねん」
『、ひかるっ!』
紙ヒコーキひとつひとつに“光のバカ”とか“冷たい光”とか悪口ばっかりしっかり書かれてる事に最早お手上げ的な。
『光何やってんの!?』
「それはこっちの台詞や。こんなもん飛ばして超迷惑なんですけど」
『ひ、光に関係ないじゃん…』
「俺の名前書いといてそないな事よぉ言えたなぁ?」
『い、いっひゃい!いひゃよ!ひはふ!』
餅みたいに伸びる頬っぺたをびよんびよん引っ張ると涙目で抵抗するアイツが『ごめんなさい』と言葉にならん声で言うから離してやった。
「で、授業サボって何の真似やコレは」
『教えなーい』
「……………」
『わ、わわ分かった!言うから!もうつねらないで!』
「早よ言え」
つんけんする名前に両手を向けるとやっと観念したらしく。初めから素直に言うときゃええねん。
『…だって光が冷たいんだもん』
「は?」
『光がー、朝アタシの事置いてっちゃうんだもん』
確かに無視して先に学校行った。
せやけどな、
「それだけの理由でこんなもん投げたんか?怒られるんは俺やねんで」
『怒られればいいじゃん』
「なんやと?」
『嘘です何でもありません』
「ハァ、アイツが拾ってくれて良かったわ」
『何言ってんの?飛ばしたの1個じゃないよ30個くらい』
「…………」
『いひゃいっへいっへるほひ!』
頭が悪いとしか思えへんコイツに軽く苛々しつつも、こういう奴やって笑いそうにもなる。
『アタシにとっては“それだけ”じゃないもん!光が怒ってるの嫌なんだもん…』
そして、こういうとこは嫌いやない。
「…せやけど謙也先輩が居ったやろ?」
『やだ、光も居ないと嫌』
「俺離れ出来んでどないすんねん」
『離れる気なんかないし謙也も怒ってるんだもん』
「…………」
『だからね「名前」、』
「そろそろ、ハッキリさせよか…」
『ひか、る?』
俺と謙也先輩、
お前はどっちを選ぶんや…?
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