sequel.1
a memorial day (1/3)
願いを空に投げると
横にはほら優しい君の笑顔
Sincere love
sequel.1 a memorial day
絶対フラれる思てた俺は、今もこうして名前ちゃんの隣に居る。
「名前ちゃん、何してるんー?」
『うーん?えっとね…』
テーブルの上でガサガサしてる名前ちゃんを後ろからひょいっと覗く。
集中して何かしてる姿やって寄り目になってて可愛いけど俺も構ってほしいねん。
「ああ、ソレこの間の『出来たー!』ぶっ!」
『え?』
俺が覗いてんのも気付いてへんかったみたいで急に顔を起こすもんやから名前ちゃんの頭は俺の顎に直撃。
痛い…名前ちゃん実は石頭なんか……
『ご、ごめん…』
「えーよ気にしやんで。それよりその写真、」
『うん。蔵の実家行った時のやつ』
名前ちゃんは俺の実家に来た時に撮った写真を広げてて、そん中でもツーショットで写ってるやつを何やら作業してた。
俺の親とか財前とか、皆で撮った写真は丁寧に写真立てに飾られてて。それこそツーショット飾ってほしかってんけどな。
「なんやハサミで切ってたみたいやけど何してたん?」
『これに貼ってたんだ』
差し出されたのは小さめのノート。
ペラペラ捲るとプリクラがいっぱい貼られてて、それはプリクラ帳やった。
ソレに、ハート型に切られた俺と名前ちゃんの写真が貼られてて。横には日付と、“大好きな蔵と”って書かれてあった。
だ、大好きな……!
もうなんやねん!ホンマ可愛え事するなぁ。
「どうしても貼りたくて…」
『名前ちゃん…』
「切っちゃってごめんね」
ええねん。名前ちゃんの愛が詰まってるんやったら何でもええ。
そんな名前ちゃんが愛しくて後ろからぎゅっと抱き締めた。
『くくく蔵!?』
「めっちゃ触りたなってん」
『さ、ささ触……!?』
「んー。やっぱ名前ちゃんええなぁ」
『…………』
相変わらず照れる名前ちゃんは黙り込んでしもて。
アカンわー。何でそない可愛えんやろ。
せやけどそういえば。
「名前ちゃんとプリクラ撮った事ないねんな」
『そうだね』
撮りたい。
めちゃめちゃ仲良いショット欲しい。
「今度街行ったら撮らへん?」
『え、いいの?』
「いいに決まってるやん」
『蔵ってそういうの嫌いかと思ってたから…嬉しい、楽しみだな…』
視線を下にして微笑む姿は可愛いっちゅうより綺麗で。
なんかもう見惚れてまう。色々あった(寧ろありすぎや)けど、横で笑ってくれててホンマに良かった。
「あんな、もう1個ええ?」
『うん?』
「友達と撮ってるやつ、頂戴?」
『え?プリクラ?』
「うん。アカン?」
『い、いいけど…恥ずかしい気もする…』
「大丈夫やって!こない可愛く写ってるやん。横の子気の毒なくらい名前ちゃん可愛い」
『ま、またそうやってからかうん、だから…』
「やってホンマやもん」
『もう…』
さっきより真っ赤になって照れる名前ちゃんが俺の1番。
他の女やなんて、目入らへんねん。俺に撮って可愛いと思うのは名前ちゃんしか居てへんよ。
それから、適当に取って、と渡された大量のプリクラから3枚ほど拝借した。
その内の1枚を財布に入れて、もう1枚を学生証のケースの中、最後の1枚をラケットに貼った。
『ちょ、蔵!ラケットは駄目じゃない!』
「何で?」
『そんな大事な物に貼らなくたって、』
「……名前ちゃん?」
『、』
「大事な物やから貼りたいねん。それに名前ちゃんより大事なモノなんか俺には無いで?」
『蔵……』
珍しく向こうから寄り添ってくる事が貴重で俺の服を掴むその手を包んだ。
「なぁ名前ちゃん」
『、なに?』
「大事すぎて、それ以上の言葉が見つからへん時ってどないしたらええんかな」
『…もう、十分すぎるほど伝わってるから…』
「ん…それならええ…」
キスをする時の、緊張しながら目を閉じてる名前ちゃんが好き。
こんな顔、誰にも見せたない。
俺だけの名前ちゃん。
「あ、」
『え?』
時計に目をやると午前12時を過ぎてて日付は変わってた。
ちょっと待ってな、と俺は自分の鞄から綺麗に包装された紙袋を取り出した。
「問題です。今日は何の日でしょう?」
『え?今日?えっと…』
「分からへんかなぁ」
『……もしかして、付き合い始めて1ヶ月…?』
「正解」
覚えててくれたんやな。
付き合い始めて1ヶ月、えらい長く感じたようで短かったこの時間。
俺は自分でも訳分からんなるほど名前ちゃんに惚れてしまって、全身全霊彼女に全てを捧げてきたんや。
こんな気持ちをくれた事にお礼が言いたくて、こんな俺の隣に居てくれる事にお礼が言いたくて、俺はその紙袋を渡した。
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