story16.
sincere love (2/2)
「名前、」
『うん?』
「早よ、部長のとこ行き」
『……うん…』
「こっち、見やんで」
『光…有難う、アタシを好きになってくれて有難う…』
アタシも、光の事好きだよ
ええねんそんな言葉。
今言う台詞ちゃうねん……
「あー…めっちゃ痛いわ…」
流れ落ちる涙はお前に捧げる。
ホンマは冷たいけど温かい気さえしてるんや。
目を擦りながら、見つめた。
俺の腕から擦り抜けて行った名前の小さな背中が愛しくて、追い掛ける事が出来ひん自分が阿呆みたいで、未練タラタラで情けないけど…
出逢ってくれて有難う
泣くお前も、笑うお前も、怒ってるお前も全部。
好きやったで………
サヨナラ
僕の愛した人
□
「謙也先輩早よしてもらえますー?」
『ま、待てや財前!もう終わるから!』
「謙也先輩待って俺まで遅刻するとか有り得へんねん。後10秒しか待ちませんよ。はい5ー4ー」
『10秒ちゃうやん!』
「3ー2ー」
『おっ、お待たせ…したな、』
「……ほな、行きますか」
家から30分程の道程は短いようで長く感じた。
真っ白なその場所は眩しいくらい綺麗で。
大学卒業して間もない俺は、慣れへんピカピカのスーツを身に纏って、少しでも格好付けれてたらええなぁーなんて思て。
『あ、光ー!!』
「ん、」
笑顔で俺を迎えてくれる名前は、輝きを数段増していた。
「馬子にも衣裳、やんな…」
『ひっ、酷い!こういう時くらいお世辞でも綺麗って褒めてよ』
純白ドレスに秘められた想いは永遠の象徴。
「嘘や、綺麗やで名前」
『光……』
「おおきにな。俺の嫁になってくれて…」
『待てや財前!!誰がお前の嫁やねん!俺の花嫁やおーれーのー』
「…相変わらず冗談の1つも通じへんねんから」
『今日は冗談言うな』
「はいはいスンマセンねー」
『ホンマ腹立つわ…』
『本当、2人は変わんないね。アハハ』
今日は、名前と白石部長の結婚式。
不覚にも、お似合いやと思ってしもた。
あれから4年。時々喧嘩もしてたみたいやけど、年がら年中バカップルで。
部長はこの日の為に大学在住からずっとバイトで金を貯めてた。卒業してからも同じ。就職して1年経った頃、仕事にも大分慣れたからってプロポーズしたらしい。
いつの間にか2人の相談相手に抜擢されてた俺は、交互に惚気られて殴ってやりたくなるくらい腹立つ時もあったけど…
これで良かったんやなって思える。
正直言うたら、まだ名前の事忘れきらん俺が居てるけど、せやけど今は素直に、
「名前、部長。おめでとう」
『……光…』
「おおきに。」
そう言える自分が居てるんや。
『光、有難う…』
「また何泣いてんねや」
『だって…光のお陰だよ、今のアタシが居るのは…』
「……幸せになりや」
『うん…』
「部長、」
『な、なんや』
「結婚しても、いつでも引き受けますから」
『……煩いわ。誰が渡すかっちゅうんじゃ』
「ならええですけど」
痛い想いもしたけど
「並んで。写真撮ったる」
『わーい!蔵早く!』
『ちょお待って名前ちゃん』
「いくでー」
デジカメに納めた君の極上の笑顔が
『光大好き!』
『名前ちゃん!言う相手間違うてるやん!』
「阿呆………」
今の俺には十分すぎる宝物
どうか
君と君の大事な人が
この笑顔を絶やす事がありませんように
(story.16/Sincere love END)
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