Sincere love | ナノ


 

 story16.
  sincere love (1/2)




瞳に映る月の輝きを

僕の願いと共に
君の幸せをリンクさせよう

愛してる
それ以上の言葉が見つからないから

最高の詩を君に





story16.
sincere love





“俺やったら泣かさへん。せやから俺を選んで…好きや……
辛い事しかないなら部長なんか忘れたらええねん……”



奪ってやりたいって思ったんや。
泣かせっぱなしの部長から、名前を救ってやりたいやなんて正義感翳して。



初めは絶対俺が名前を貰うって思てた。
光って呼んでもらえるのが嬉しくて、泣きながら幸せそうに笑う彼女が最高に綺麗で、俺がそういう顔をさせてやりたかった。

せやけど、時間が経って気付いた事が1つ。
俺の前で笑う名前は部長の前で笑う名前と違うっちゅーこと。あない柔らかな表情をさせる事が俺には出来ひんかった。
悔しい、無茶苦茶悔しいけど、名前が笑てんのならそれでもええかって半ば自分の気持ちを諦めてたんや。

それにも関わらず、アイツへの想いは冷める事なく日毎に積もっていく。
心底惚れてしもてた。
そんな中、一本の電話。
“会いたい”
そう言われて俺の中の理性が切れた気がした。名前が俺に会いたいと思てくれてる。それなら部長の代わりになる。何だってしたるから俺を求めてほしい、欲が湧いた。



結局その日は会われへんかったけど、俺の誕生日に一緒に過ごす事が出来た。
イベント事やなんて興味無い思てたのに、“おめでとう”の一言で今までに無い歓喜に満ち溢れてしもた。

名前の首にある赤い跡が、嫌でも部長の存在の大きさを知らされて、腹立つと同時に切なかった。
俺や駄目なん……?
俺が部長の上に立つことが出来ひんなら、いっそ同等になれればいい。
仄かに薫る香水の上に俺はキスをした。俺のモノやなくとも、そんな錯覚に陥るくらい効果的で加えて痛くもあったんや。




  □




『ひかる……』

「……」



抱き締めたこの腕を二度と離したないって思た。



『アタシ、光の事、』

「今は部長のしか見えてなくてええ…これから俺を好きになってくれたらええねん…」



せやからお願い
名前の未来、欲しいねん。

俺を選んでくれたなら、命懸けて愛したる。襲ってくる哀しみもろとも打ち壊したる。
ホンマに、好きやねん……



『光、光と付き合ったら…アタシは幸せなのかな…』

「無論や…俺が幸せにしたるんやから…」

『……嬉しいな』

「名前…?」

『そこまで光がアタシを想ってくれて嬉しい。それだけで幸せ者だよね』



真っ暗な場所から、一筋の光が見えた気がした。



0に等しい僅かな可能性に、期待してしまう。



『だけど……アタシは蔵が善いよ…』



ああ、やっぱり、やな…

見事期待は外れ、思った通りの展開になってしもた。

名前が部長を想う気持ちは痛いほど分かってた。逆に部長も。
せやけど、相思相愛の2人に少し溝が出来た。そこにつけこんだったらええ思たけど、そんな簡単なもんやなくて…



『今、凄く泣いちゃうくらい辛くて現実が本当は何なのか聞くの怖いけど……でも蔵との楽しかった思い出しか頭に浮かばないんだよ…』

「…………」

『もし蔵にとって雪子ちゃんが1番でアタシが2番だとしても、アタシは蔵と一緒に居られるならそれで―――――……光?』



淡い期待と共に緩めてしもた腕を再び強くした。

俺の事フってるくせに、なんちゅう台詞言うてんねや。



「大丈夫や…部長は名前しか見えてへん」

『ひか、』

「せやから2番でいいなんか言うな…」

『………』

「お前は俺の分まで幸せになる義務があんねん」

『、っ……ひ、ひ、かっ…ひかるぅ………』

「泣くな。俺が泣かせてしもたみたいやん」



この腕を離したら、きっと二度ともうコイツを抱き締める事はないだろう。

俺は全力でぶつかって全力でフラれた。後悔はしてへん。

でも、もう少し。
もう少しだけこのままで居させて……





…1/2 page
prevnext



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -