Sincere love | ナノ


 

 story9.
  Sad cry face (1/2)




誰よりも愛しき人へ

君と見上げたあの空に誓うんだ
愛した喜びを忘れはしまいと





story9.
Sad cry face





『こんばんはーやなぁ白石』



午後11時過ぎ。
突然現れた忍足。

隣に引っ越してきた、っちゅー言葉の意味を理解するんには少し時間が掛かってしもた。



「と、隣やて?」

『どうもそうらしいで?ホンマ偶然っちゅーのは凄いなぁ』



ぬけぬけと言い放つ忍足にカチンときた。



「お前っ…どういうつもりやねん!」

『ちょ、ちょっと蔵?!』

『……なんやそない血走って』



正気、なんてもんはハナから無くて俺は忍足の胸ぐらを掴んだ。

偶然なんてあるか。
絶対コイツの計算や。



「忍足…何かあった時はタダじゃ済まさへんからな」

『なんのこと言うてんのか分からへんわ』

「……………」

『あ、名前ちゃんコレ引っ越し蕎麦』

『、有難う』

『ほな、また』



なんでやねん……
何でまた隣になんか引っ越してきたんや。アイツ、これからどないするつもりなんや……



『……蔵?どしたの?』

「…………」

『蔵………』



何も言わん俺に、名前ちゃんがどれだけ不安を抱えてたなんか知る由もなく俺は名前ちゃんを強く強く抱き締めた。




  □




「……………」

『……蔵、もう寝た?』

「ん、起きてるで?」



あの後、何もする事なく名前ちゃんのセミダブルのベッドで横になって1時間が過ぎたやろうか。
そんな時に名前ちゃんは俺に声を掛けた。

もうとっくに寝てる思てたんやけど…



『あのね、手握ってもいい?』

「、名前ちゃん?」

『手、繋いだまま寝たいなぁって…あ、邪魔だったら別にいいんだけど!』



俺、何苛々してるんやろ。
名前ちゃんが居てるのに。
こんなに、可愛くて仕方ないのに。



「邪魔なわけあらへんやん」

『うん…え、蔵!?』

「俺がこうしたいねん」



左手で手を繋いで、右手は名前ちゃんに腕枕。

あー、落ち着く。

俺の肩らへんに名前ちゃんの顔があって、名前ちゃんの存在を改めて確認する。



「明日は朝から学校やろ?もう寝なアカンよ」

『うん。おやすみ蔵』

「おやすみ」



チュ、と軽い音を立てて額にキス。
俺のもんや、そう言うように。

腕の中にあるこの温もりを俺は絶対離さへん。そう誓って俺は眠りについた。





『蔵、アタシ………なの』

「、なんて言うたん?聞こえへん」

『アタシ、侑士君が好きなの』

「は?ちょ、待って、名前ちゃん何言うて……」

『だからアタシ侑士君と付き合うね。さよなら蔵』

「名前ちゃん!?」



そんなん嫌や!俺は別れるなんて認めへん!

名前ちゃん待って、行かんで!名前ちゃん!





「名前ちゃん!!!」



起き上がって辺りを見回すと知らん風景。

何処やここ……
あ、せや。俺、昨日名前ちゃん家泊まって……

さっきのは夢、か。
めっちゃ胸くそ悪い夢やったわ。お陰で汗びっしょり。
……そないな事より名前ちゃんは?隣に寝てたはずや!



「名前ちゃん?」



リビングの方に行って探すものの見当たらへん。
まさか忍足に……!



「、なんやこれ」



テーブルの上には料理とメモ切れ。

“すっかり熟睡してたから起こさず学校行くね。良かったら朝ごはん食べて下さい”

サンドイッチにパスタサラダ。
それを見て俺はじーんときた。



「有難く、いただきます」



手を合わせた後、サンドイッチを口に放り込んで名前ちゃんにメールした。
“有難う、ご馳走さま”と。

授業中にも関わらずすぐ返ってきたメールに思わず笑いが出てしもた。



「“蔵に会いたい”って。俺の方が思てるわ」



「俺もそろそろ行かなあかんな」



サンドイッチとパスタサラダを食べた後、のんびり身支度をして、向かうは学校。

どうせなら名前ちゃんと同じ授業受けたいねんなー、なんてどれだけ一緒におりたいんやろ。
せやけどホンマにずっと一緒がええ。何もしやんと、ずっとずっと一緒に……



「工学部なんか選ぶんやなかった」



俺は工学部。名前ちゃんは薬学部。
授業どころか校舎も違う。
学校で会うには待ち合わせせな無理に等しい。

ハァー、と溜息ついてドアを開けると。



『あ、白石』

「………」



出よった。苛々の元凶が。
今日1番に見たんがコイツやっていうだけで今日はブルーや最悪や。



『今から大学行くん?良かったら一緒に行かへん?』

「忍足。思ってもない事口にすな」

『ハハッ、どうやろな』



このいちいち挑発してるような喋り方が気に食わん。
丸眼鏡かち割ったろか!

忍足を無視をして学校へ向かうと、まだ後ろから何か言うてきよる。



『白石ぃー。名前ちゃんと仲ええねんな』

「…どういう意味や」

『羨ましいなぁ思ただけや』

「……………」



ほなさいなら。
そう言ってその場を後にする忍足の背中を睨むことしか出来んかった。





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