Sincere love | ナノ


 

 story8.
  Flower and you who blooms in night sky (2/2)




『名前ちゃん置いてくでー』

「あ、待って!」



気が付けば、蔵は10メートルくらい先に居た。

妄想してたばっかりに置いてかれた……!



『“お願い”したら待ったるで』



ニィと笑ってこの一言。
優しい優しい蔵も善いけど、こんな少し意地悪っぽい顔する蔵もたまんない。(もしかしてアタシM?)

だけど置いてきぼりなんて絶対嫌、気合い入れて全力で走って蔵の腕をがっちり鷲掴み。(アタシ大胆!)



「捕まえたー!」

『―――……』

「蔵?」

『な、何でもあらへん…(捕まえた、とか可愛いすぎやっちゅーねん!)』



打って変わって、みるみる真っ赤になる蔵。ソレを隠すようにアタシが掴んだ腕と逆の左手で顔を隠して視線を反らす。


か、か、か、可愛い……!!!
格好良いはずの蔵が超可愛い!
あんな余裕綽々の蔵でも赤くなることなんてあるんだ!
わわ、嬉しい!可愛い!ヤバイ!大好き!



「フフッ、帰ろー?蔵ー!」

『、なんで笑てるん』

「別にー?」

『お、俺は別に照れてるわけちゃうねんで!』

「照れてるの?」

『ちっ、ちゃうねんっ……!』

「帰ったらアイス食べようね」

『(完全にガキ扱いされてるやん…)』



なんだか、形勢逆転した気分で鼻歌混じりに帰ったアタシ。
だけどそれはホンの一瞬に過ぎなかった。



『名前ちゃん!ここにあるタオル使ってええんー?』

「うん、ソレ新しいやつだからどうぞ使っ――――」



キャーーーーー!!!
無理無理無理!早く引っ込んで蔵!


お風呂先にどうぞ、なんて家に着くなりアタシは言った。
別に欲情してるんじゃなくて、やっぱりアイスはお風呂上がりが1番っていうか……!

それでまぁ蔵はお風呂に入ってたわけだけど、タオル使っていいのかって浴室から上半身を出してこっち見てる!

髪の毛はびっしょり濡れてるし、ポタポタ滴が垂れちゃってるし、何より素っ裸………駄目、駄目、格好良いから!細いのに筋肉が付いたその素敵な体見せないで!(ガリマッチョとかモロツボ)
アタシ、アタシ……頭おかしくなっちゃう!



『おおきに。って、どないしたん?』

「べべべ別に!早く拭かないと風邪ひいちゃうよ!」

『なんや顔赤……あー。ハッハーン。そういう事やねんか』

「え゛!?」



蔵が一旦浴室に戻ると、ワシャワシャとタオルの擦れる音が聞こえてきて、直ぐ様また浴室が出てきた。
下半身にタオルを巻き付けて。

ふ、服着て服!!



『名前ちゃーん?』

「は、はは、はい?」

『俺の体、見てたん?』

「そんな、事は、まま全く……!」



じりじり詰め寄って蔵に後退りするアタシ。

ニヤニヤ笑う蔵がこんな時でも格好良いと思ってしまうアタシを誰か止めて。



『もう、逃げられへんよ』



ああっ!後ろはもうベッドという名の壁がっ………!

アタシ、遂に蔵のものに……!
嬉しいけど、寧ろカモーン!だけど!

やっぱり無理!まだ恥ずかしい!!



「く、蔵?落ち着いて…?」

『俺は落ち着いてるって』

「そんな、落ち着いてなんかっ、」

『名前、好きや』

「!!」



体を持っていかれて、ギシリ、と軋むベッド。

もう覚悟するしかないの?



『俺のもんになって…?』



覚悟するしかない。
思わずギュッと目を瞑った。



『名前……』

「〜〜〜〜〜っ!」



《ピンポーン》



「……………」

『……………』



お約束と言っていい不意のチャイム。

ここは、無視するべきなのかしら…?

《ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!》



「ご、ごめ…」

『ええよ……』



果てしなく鳴り響くチャイムに蔵はアタシの上から退いてしまった。
あー、助かった……
とか思いながらちょっとガッカリしてるよアタシ。

っていうか誰?
光、は知らないよねアタシの家。
でもそうじゃなかったらこんな時間に誰が……
そんな事を考えながら玄関を開ける。



「はーい、どちらさまですか?」

『隣に引っ越してきた忍足です』

「ああ、どうも……って侑士君!?」

『え、お隣さんて名前ちゃんやったん?』

「嘘…すごい偶然…」



目の前に現れた侑士君にビックリしてると、後ろから蔵がアタシを呼んだ。



『名前ちゃんどないしたん?誰?』

「え、えっと、隣に、引っ越してきたらしい、」

『忍足君でーす。こんばんはーやなぁ白石』

『……は?忍足…?』



偶然って凄い。世の中狭いなーなんてアタシは、ただただ呑気に思うのでした。



(story.2 END)



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