Sincere love | ナノ


 

 story8.
  Flower and you who blooms in night sky (1/2)




偶然触れた手
それは熱く熱く愛しい

貴方も覚えてるなら
なんて空に願った





story8.
Flower and you who blooms in night sky





ついさっきまで元気だったはずの蔵が、玄関で肩を落とした。

何か、あったのかな…
携帯を見るなり青い顔しちゃって、悪い知らせでもメールで入ってきたんだろうか。



「蔵……」

『あ、堪忍。名前ちゃん家、初めて入ったから緊張しててん』



……本当にそうなのかな。
蔵は笑顔だったけど、その笑顔は何処か寂しげな感じで。



「そう、なんだ。まぁとりあえず中に入ろう?」

『うん…』



スリッパを出してあげて部屋へと誘導すると、後ろからふんわり蔵の薫りが漂った。

アタシの首筋に顔を埋めるようにして抱き締められてるせいで、蔵の髪がアタシの頬に当たってくすぐったい。



『名前ちゃん。お願い、っちゅうか…我儘1コ言うてもかまへんかな』

「、お願い?」

『あんな、俺しか見やんで』

「蔵、」

『俺以外の男なんか好きにならんでほしいねん…』



こんなの、最高の口説き文句じゃない……

少し弱々しい様子の蔵のお願いは、アタシにとって半端じゃなく嬉しい言葉で。
思わず口元が緩んで笑顔を溢してしまった。



「アタシはこれからもずっと、蔵しか見えないよ」

『…うん』

「頼まれたって離れてなんかあげないから」

『離れるわけないやろ、名前ちゃんの阿呆…』



愛されるということはこんなにも人を幸せ一色に染めてしまうものなのか。

蔵から愛される喜びを教えてもらったアタシは、もう彼無しじゃ生きていけないと本当に思った。




  □




『なぁ、名前ちゃん名前ちゃん。今日これから出掛けるん嫌?』



すっかり普段通りの余裕ある蔵に戻ると、何やらデートのお誘い。

そんな了解取らなくたって、アタシは蔵と一緒なら何処でも行きますよ!
それに外って、蔵はアタシのだって主張してる気分になるから凄く優越感感じてたり。(だって5人に1人は振り向いてるくらい格好良いんだもん)
逆にアタシが釣り合ってないかなぁなんて心配もあるんだけれど。



「何処か行きたい所でもあるの?」

『あれ、知らへんの?今日は――…』




  □




「たーまやー!」

『ハハ、はしゃぎすぎやろ』



ドーンドーン、と低い音と共に夜空に打ち上がる花火。
今日は近所で夏恒例の花火大会があったらしい。

“1人やったらそない興味ないねんけど、名前ちゃんとやったら花火も楽しいやろなぁ思て”

そんな言い方されたら張り切っちゃうってば!
蔵と花火、なんて美しいものばかりなの……!



『名前ちゃん、楽しい?』

「勿論!蔵も、楽しい?」

『当たり前やろ?好きな子と一緒以外にそれ以上楽しい事なんてあらへんよ』



またそういう事サラッと言っちゃうんだから…
絶対また顔赤くなってる。熱いもん。慣れようにもこんなの慣れない。



「本当、綺麗だね」

『連れて来た甲斐、あったわ』

「うん有難う」

『どーいたしまして。あ、せや、』

「?」



潰れてへんかなー、そう言いながらガザガサと麻パンのポケットを探る。

いつもはジーパンだけど、緩めの麻パンもこれまた格好良い。きっと蔵だったらアロハシャツでも短パンでも何でも格好良く見えるんだろうな、なんて思うのは贔屓目になっちゃうのかな。
でも逆に見てみたい。アロハシャツに短パン。あ、やっぱりちょっと面白いかも。



『大丈夫そやな!名前ちゃん、コレやろ?』

「あ、線香花火!」

『花火の締めはやっぱりコレやんな』



差し出された2本の線香花火。
願い事せなアカンで、って渡された。

確か最後まで火を落とさず終えたら願いが叶うんだっけ。
蔵も意外と乙女なのね!いやだ可愛い!



『ほな火付けるで』

「オッケー」



ジジ、と先端が燃えて次第にパチパチと綺麗な火花を散らす線香花火。

アタシは、蔵とこれからも一緒に居られますように。そう願いを込めて線香花火を見つめる。

落ちないでよ、最後まで頑張って……!

そんな祈りも虚しく、つい勢い余って手に力が入った。



「……あ、」

『落ちてしもたなー』

「ショックすぎる……」



なんて縁起の悪い。
ハァァ、と溜息を漏らすと、蔵の手がポンポンとアタシの頭に触れる。



『俺のが残ってるから大丈夫や』

「でもお願い事違うんじゃない?」

『大丈夫やって。ほら終わったで』

「すごーい!」



パチパチと咲いていた火花は徐々に小さくなってフッと暗闇に消えていった。

本当蔵は何でも簡単にこなしちゃうんだ…!



「ねぇ、蔵のお願いって…」

『“名前ちゃんがずっと幸せでありますように”』

「――――、っ…」



流れてしまいそうな涙を飲み込んだ。

アタシの願いに比べて、蔵の願いは立派すぎる。
自分の善いようにしか考えられないアタシと違って、蔵はアタシだけを考えてくれたんだ。

幸せ、っていうか蔵に馬鹿だよって言いたかった。
普通願い事なんて相手の為のモノなんかじゃないじゃない……



『何泣きそうな顔してんねん』

「蔵が、馬鹿だから…」

『名前ちゃん酷いなぁ』

「だってアタシなんかの事、」



あー…限界。
蔵の顔見てたら涙なんて止まんない。



『あ、泣いてしもた』

「泣いて、ない」

『……ええやん。泣いて』

「泣いてないってば」

『俺の為に泣いてほしいって言うたやろ?』

「……本当、馬鹿だよ」

『名前ちゃんの為なら馬鹿でも阿呆でも何でもなったるって』



蔵の手で拭われる涙は全然しょっぱくなくって。
だけど視界が分からなくなるくらい溢れてくる。

嬉し涙は大歓迎。
そう言って蔵の唇はアタシの唇と重なった。
数えるほどしか知らない蔵の唇に、アタシは中毒になればいい。



『………名前ちゃーん』

「う、うん?」

『泣き顔にキスって、やらしい』

「え!?」

『アハハッ!なんてなー』

「くっ、蔵!!」



ビックリした……
やらしいとか言われるなんて思わないじゃない、普通!
誘ってるって思われてたらどうしよう……って、泊まる?って聞いた時点で誘ってんの?アタシ!

ど、どどどうしよう!
ただ離れたくなくて言っちゃったけど、今から帰ってどんな顔したらいいの!?

いや別に拒否したいわけじゃないんだけど蔵とって考えただけで……ってもー!何言ってんのアタシ!変態と変わらない!

止めた止めた、妄想ストップ。
楽しく過ごすことしか考えないでいいのよ!





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