snow fall | ナノ


 


 st.17



随分遠回りをしてしまったけど

変わらない心は君への想い
今でも君と出逢えた奇跡と運命を信じています





st17.step






帰り道、熱くなってしもた瞼を冷やそうと、家を通り過ぎて公園へ行った。

ベンチに腰を掛けた俺は、名前ちゃんに触れた手を眺めて余韻に浸ってた。



「…やっぱり俺は、名前ちゃんが……」



好きやわ……

そう思た時、急に頬に熱い感触。



「、熱っ…!?」

『やるわ』

「…………」

『酷い顔やな白石』



その熱さに驚いて顔を上げると、ホットコーヒーを持った謙也が居った。

おもむろに差し出してきた缶コーヒーを受け取ると、謙也は俺の隣に座ってプルタブを開けた。
それに続いて俺も缶コーヒーを開けて一口飲むと、独特の苦味が口の中に広がった。



「何でブラックやねん…」

『今のお前にはちょうどええやろ?目、覚ましや』

「……………」



目覚ますも何も。
どっちかっちゅうと寝たいくらいやわ……



「……謙也、お前、」

『その顔は会うたんやろ?名前に』

「やっぱお前が仕組んだんか」

『仕組むってなんやねん。俺は何も知らへんでー』

「嘘つくな」



どうせ謙也が敢えて俺にメールしてきて、タイミング良く会わす様にしてたんや。
お節介、ちゅうかコイツらしい、ちゅうか……



『嘘なんかついてへんし。まぁ、財前が名前とどうしても2人になりたい言うから俺は途中で抜けたけど』

「さよか、財前が……」



財前が名前ちゃんを想う気持ちは本物やから。
財前になら、俺も……



『………鬱陶しいわボケッ!!』

「い゛っ!?」



哀愁に漂ってた中、謙也の大声と、何かがスパーンと頭で良い音が鳴った。

うわ、めっちゃ痛い!
このボケ何さらしてんねん!
手に靴持ってるっちゅうことは、



「お前靴で人の頭殴ったんかい!!汚なっ!謙也のくせに腹立つねん!!」

『うっさいわ』

「なっ…!いつからお前そない偉そうなキャラになってんねん!」

『白石がメソメソウジウジ不幸のドン底に居るみたいな顔してるから鬱陶しかったねん』

「普段メソメソしとるお前に言われたないわ!」



名前ちゃんと財前にからかわれて何時もウジウジしとったんは謙也の方や!



『白石』

「今度はなんやねん!次殴ったら――……」



一変にして真面目な顔をする謙也に、俺も黙って耳を傾ける。



『そろそろ、素直になったらどうや』

「………」

『お前がそんなんやったらお前はともかく…財前も名前も、幸せになんかなれへんで』



嘘に嘘を重ねたって、そないな事誰も望んでへんねん

謙也の言葉に、財前が“最低やわ”って俺に言うた事を思い出した。

そうかも、しれへんな…
俺が名前ちゃんにテニスさせたる。そう言うたのに途中で投げ出して、名前ちゃんの言葉も財前の言葉にも逃げるばっかりで……

そんなん、最低に決まってるわ。



「謙也…堪忍…」

『……勘違いしてたらアカンから言うとくわ』

「え?」

『白石、俺はお前の味方ちゃう』

「………」

『やから言うて、財前の味方ともちゃう』



謙也は続けながら荷物を持って立ち上がる。



『せやけどな、前に進もうとせん奴が一番気に入らへん』

「…………」

『分かったら顔洗てしゃんとしいや』



ゴミ箱にカコン、と空き缶を入れて謙也は帰って行った。


あの阿呆、嫌いとか味方ちゃうとか好き勝手な事言うて…
そないな事言いながらしっかり俺の心配してるやん。
なんか、もう……くすぐったいし、



「俺が一番格好悪いやん……」



染々思いながら渇いた笑いを浮かべて、俺は自分で顔を叩いて公園を後にした。






そして次の日、朝学校へ行く支度をしてると不意にチャイムが鳴った。

朝っぱらから誰や…また謙也やったらどついたるわ。



「はい、どちらさんです――か…」

『どーも』

「財前……」



ぶっきらぼうにドアを開けると財前が立ってて、低血圧のはずなアイツが俺を真っ直ぐ見てた。



『部長、俺と試合して下さい』

「……………」



財前の眼は本気そのもので。

一瞬驚いた俺やったけど、口角を上げて笑った。



「奇遇やな、俺もそう思てたとこや」



もう、鬼ごっこは終わりや。
俺もお前と向き合う。白黒つけて前に進むって決めたから。





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