violet shaking | ナノ


 


 mission.06 (1/2)



君の背中に縋りたくて仕方ない僕だけど

体が鉛の様に動かないのは僕の知らない君だったから





mission.6 真相





後、4日。
今日を入れて後4日しか期間はあらへん。

せやのに俺は……



『蔵、おはよう』

「ん……」

『何、超暗いんだけど』

「……………」



名前から声掛けてくれたいうのにそっち向く事すら出来ひん。
受け答えかて上手く出来ん。



『もしかして昨日一緒に帰らなかったから怒ってんの?』

「…怒ってへん……」

『絶対怒ってるじゃん!ハッキリ言えばいいのに』

「せやから違う言うてるやん」



怒ってるやなんてそんな事やない。

ただ、言いたい事も言えへん自分が情けないだけや。



『じゃあこっち見て言いなさいよ、面倒臭いなー!』



いつも言われてる言葉やのに今日はカチンときた。

面倒臭い?
は、そない俺の事大儀なんか。



「面倒臭いんやったら放っとけばええやろ!」

『っ、…………』

「あ、」

『勝手にすれば!!』



ついカッとなってしもた俺。

俺の気持ちも知らんと好き放題言いよって。その気持ちが爆発した。

ホンマの事聞くんが怖いだけやのに、アイツに当たってどうすんねん…
謙也が好きや言われるんが嫌なだけやのに……


俺、なにしてんやろ。






「先生、」

『あら白石君、どうしたの?』

「頭痛いんで休ませて欲しいんですけど」

『大丈夫?ベッド開いてるから少し休みなさい』

「スンマセン」



優等生を背負っていた俺は初めて授業をサボった。場所は保健室。
どうせなら屋上とかでサボってみたかったけど、生憎鍵が閉まってて立ち入り禁止やし。

普段こないな所利用せえへん俺は仮病すんなりベッドを占領する事が出来た。先生堪忍な。

わざわざサボる事なんかない思たけど、名前に謝る事が出来ん自分に腹が立って、名前と同じ空間に居てる事が耐えれへんかってん。



ベッドへ潜ると、保健室の独特な匂いが鼻を刺激するけど寝心地はそない悪くなかった。
たまにはこんなんもええなーなんて思える自分に少しビックリした。

目を閉じて全て忘れようなんて思った矢先、ズボンのポケットで携帯の振動。



(なんやろ、)



携帯を開けると、そこにはさっき怒らせてしもたはずの名前からのメール。

“何処に居るの?”

なんでや。
俺なんか面倒臭いんとちゃうん?

なんか、無性に切なくなった。
これが気紛れなんか優しさなんかどっちかは分からへんけど、直ぐに返信したくて。



(もう返事きたわ…)



保健室、と単語を打ち込むと1分もせえへん内に返事がきて。

“今自習だよ。戻ってこないの?”

自習、か。
授業が先に進まへんでラッキーやったな。
俺もまた、“頭痛いから戻らへん”と打ち返した。



納得したんか、それから名前は俺にメールを入れてくれへんかった。

めっちゃ気まずいはずやのにメールが来ん事が寂しくて、俺は枕に顔を埋めて意識を手放した……





  □





「…、結構寝てたな………」



気が付いた時は4限目がもう終わりそうな時間で、仮病やいうのによぉ寝てたわ。

さすがに午後からは授業出なアカンかなー…
その前に昼休み。
(仮に)付き合い始めてからは名前と一緒に飯食べてたけど今日は無理やんな。せやったら5限始まるギリギリまで此処に居てたらええか。



(もう一辺寝よ)



4限終了のチャイムが鳴って、右から左に寝返ったその時。



『ちょっと失礼!』

「!」



俺が寝てるカーテンがカシャーと勢い良く開いたんや。



『アンタいつまで寝てんの!!』

「な、名前……?」



そっちを見ると名前が仁王立ちで俺を見てて。

な、何で此処に、そんな事を思う間も無くアイツは言葉を続ける。



『間抜けな顔してないで!さっさと行くよ!』

「……え?行くって、何処に、」

『部室でしょうが!!こっちはお腹空いてのよ!』

「――――……」



何時もの如く偉そうやけど。

名前が手に持った自分の弁当と俺のコンビニの袋を見ると、泣きたい気分になってしもた。



『早くしてってば!』

「せやな……」

『はい、自分のは自分で持って!!』

「、うん」



バタバタ足音を立てる名前の後ろをついて行く俺やけど、名前の背中は昨日とは違って直ぐ近くにあった。

ホンマ何て言うか……

俺はやっぱりお前が好きや。



「名前、」

『なによ』

「……堪忍な」

『…………』



やっと言えた言葉。
朝から今までちょっと時間喰ってしもたけど、メールやなくて直接言えて良かった。



『っ、何謝ってんの?気持ち悪ーい』

「、ホンマお前は…クッ、ハハハ!」

『笑うようなとこじゃないでしょ!?』

「やって面白いもん、ククッ」

『煩い煩ーい!』



名前が吐いた言葉は、
“気にするな”
そう裏を返して言うてたみたいで。

このあまりの不器用っぷりに笑てしもた。
分かりにくいけど、そこがお前のええとこやねんな。




保健室を出て部室に着くと、弁当を食いながら名前が言うた。



『ねぇ、聞かないの?』

「何を?」

『昨日の事』



遂に出た話題。

聞きたい。せやけど聞きたない。
俺の頭の中で葛藤するけど結局は遅かれ早かれ真実を聞かなアカン。俺は意を決して頷いた。



「聞いてええんなら、」

『……………』



箸を置いてハァ、と溜息。
すると名前は遠い目をしながらポツリポツリ始めた。



『謙也の彼女知ってる?』

「居てる事は知ってるけど」

『その子、アタシの親友』

「え……?」



謙也の彼女が、名前の親友……
まさかお前はそれで謙也を諦めてるとか言うんか…?



『アタシの凄い大事な友達なんだけど…』

「…………」

『アタシとその子が一緒に居る時に偶然謙也と会ってお互い一目惚れした、みたいな感じだったんだけど…アイツ、浮気したの』

「浮気?」

『うん。まぁ謙也が一方的に悪いんじゃないけど』



その話の続きはこうやった。

謙也は彼女と同じ学校の女の子に呼び出されて告白された。
せやけど断るなり不意打ちでキスされた、と。
お決まりのパターンでそれを彼女本人に見られたらしく彼女は名前に相談してたらしい。



『それでも、隙があったアイツが許せなくて』

「うん……」

『あの子、泣いてた。仕方ないけど嫌で嫌で堪らなくてあの光景が何度も過るんだって』



事故やとしても、好きな奴が他の奴とキスしてたなんて考えただけでもキツい。

名前が他の男と…想像するだけでむしゃくしゃする。
謙也の彼女の気持ちはよぉ分かる。



『けどやっぱり謙也が好きだからって落ち着いたんだけど、アイツ……』

「まだ何やあったん?」

『今日あの子の誕生日なんだけど、会えないって言ったらしくって。昨日“やっぱりアタシじゃ駄目なのかもしれない”ってアタシにメールが来た』



昨日?
名前が謙也と帰る前のメールがそれっちゅうこと?

そういう事やってんか……



『だから昨日謙也に一言文句言ってやりたかったの。文句どころか一発殴ってやったけど』

「な、殴……」



可哀想やけどしゃーないな。
コイツ怒らせたら怖い事くらい目に見えてんのに。



「それで謙也は?」

『……本当は部活終わった後会いに行って驚かすつもりだったんだってさ』

「あー…」

『そんな事しないでハッキリ言えばいいのに。ムカついたからあの子が欲しがってたxxのネックレス買わせた』

「……………」



俺は名前を怒らすまい、そう誓った。

まぁ誕生日やねんからそのくらいええかもしれへんけどxxとか高級ブランドやん…
たかがネックレスが5万とか7万とかすんねんで?
部活やってる俺等高校生にはめっちゃキツいやろ……
謙也やからええけど。


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